男性の着物の描き方講座
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[1]この講座について
[2]男性の着物の着付け
[3]比率で男性着物を描く
[4]女性と男性の違い
[5]刀と着物について
[1]この講座について
イラストレーターの宗像久嗣さんによる「男性の着物の描き方講座」です。この講座で着物を「なんとなく描く」から「理解して描ける」ように学んでいきましょう。 以前宗像さんが解説した『女性の浴衣の描き方講座』も合わせて読むと理解が深まりますので、そちらもぜひチェックしてくださいね! 最初に、この記事の内容を動画でまとめたPalmieの動画講座をチェックしてみましょう。
[2]男性の着物の着付け
■現代の定番の着方について
着物がどのような構造になっているのか、下に何を着ているのかを理解しておくことでより魅力的な絵が描けます。
解説ではこちらの絵のような、8等身の男性をモデルに解説します。
上には肌着、下にはステテコなどが昔からの定番ですが、現代であればこの絵のように何を着せても問題はないでしょう。
上半身にはU字やV字ネックなど、長着を着たときに下から見えないようなものがオススメです。
■襦袢(じゅばん)について
先ほどの状態の上から襦袢(じゅばん)を着ます。足のすね近くまである、丈が長い物は「長襦袢(ながじゅばん)」、
腰下まである物は半襦袢(はんじゅばん)といい、季節に応じて着分けます。
これを腰ひもで軽く留めます。襟元(えりもと)の部分は半襟(はんえり)といい、襦袢(じゅばん)にくっついているものです。
■長着(ながぎ)について
さらにその上から長着(ながぎ)を着ます。長着を着ると下の襦袢(じゅばん)は見えず、半衿(はんえり)だけが
見えている状態です。
ここで腰ひもを使う場合もありますが、上から帯を巻きます。男性着物の帯は、固めの生地の角帯(かくおび)、柔らかい生地の兵児帯(へこおび)があり、多くは角帯を用います。
■袴(はかま)について
男性の正装といえば、袴ですが、主に行灯(あんどん)と馬乗りの2種類があります。行灯(あんどん)はスカートタイプ、馬乗りはズボンタイプになっています。傍目からは違いが分かりにくいので、描く時や資料を探す際にはご注意ください。
女性着付けに比べると、着付けに必要なものが少なくなっています。
[3]比率で男性着物を描く
■男性の着物を比率を使って解説
実際に描く前に、まずは着物の比率を把握していきましょう。
長着(ながぎ)の丈は実際に着る丈になります。このことを「対丈(ついたけ)」と言います。女性とは違い、着る時におはしょりはしません。袖の丈ですが、長着全体の約3分の1くらいが目安です。実際にはそれよりも少し長めになります。
また、袖の幅は袖口から長着の中心の約半分くらいです。実際は少し大きめですが、袖口の丈は袖全体の約半分が目安になります。
男性には身八つ口(みやつくち)はなく、代わりに人形と言われる縫われた切れ目部分があります。おおよそ袖の丈の5分の1程度で良いと思います。
実際の寸法とは誤差がありますが、全体的に正方形の比率でわかりやすく、目安としては十分でしょう。
それでは実際に着物姿、長着を描いていきましょう。
肩のライン、足の甲あたりに水平線を引き、それの半分のところにも線を引いています。
その中央の線を底辺とした三角形を作ってみましょう。喉のくぼみの少し下あたりを目安に頂点を取ります。
頂点を下にずらすと長着の襟元が大胆に開いた姿になります。これらを目安に襟を描いていきます。
この時、CLIP STUDIO PAINTの対称定規という、ミラーリング機能を使うとスムーズに描くことができます。
正面なので直線に近いですが、筋肉や体型なども意識しましょう。
顎近くまで線を伸ばしたら、この半分の位置を目安に斜めに線をひきます。これが衿の幅になります。ちなみに、男性と女性とでは男性の方が幅は短めです。
これで襟が完成です。一度特殊定規をオフにして襟先を整えておきましょう。
そのまま真っ直ぐ下に線をおろすと襟下という部分になります。
あとは身体のラインに沿って全体を描いていきましょう。
肩の外側のラインは男性らしさが出やすいので、肩の筋肉を意識するとよいと思います。袖は手首が出るくらいがちょうど良いでしょう。
次は下半身です。イラストでは足を肩幅まで広げていますが、あまり裾が広がり過ぎない方が見栄えがよいかと思います。裾の位置は絵では分かりやすいようにわざと直線にしてますが、だいたい足の甲あたりです。
足首が見えてしまっても問題ないでしょう。
■帯の位置について
説明のために長着を非表示にして解説します。
角帯(かくおび)の幅は10センチ前後です。一般的な成人男性の手の大きさが19センチ程度とのことですので、おおよそ半分くらいが目安になります。
位置は身長のちょうど真ん中あたりと考えてよいでしょう。角帯は横から見ると「前下がり後ろ上がりに」といわれますが、ほっそりとしたキャラであれば水平に近い巻き方が良いでしょうし、やや貫録(かんろく)のある体系だと斜めの方がよいでしょう。
どちらにしても、上すぎないようにというのがポイントです。
■着物の縫い目
脇の袖付けの位置は、袖口から背中の真ん中の、ちょうど中央あたりにあります。
おくみ線は人によって異なりますが、だいたい真ん中あたりでよいでしょう。斜めに下っていき、中心から下はまっすぐに。襟にある縫い目も大体半分くらいのようです。
最後に半衿を描き、いらない線を消して長着の完成です。
[4]女性と男性の違い
男性と女性の着物姿の違いがいくつかでてきましたので、見比べてみましょう。
男性は長着や帯など、装いに必要なものが女性に比べて少ないという特徴があります。また、女性にはおはしょり・八つ口がありますが、男性にはないことも説明しました。
男性も女性も草履や下駄などを履きますが、同じ草履と言っても形が全く異なっているので、描くときは注意をしましょう。
着方の大きな違いとしては衣紋(えもん)を抜くか抜かないかがあります。下の図をみて頂くと、
男性の襟が、洋服のように首の後ろ側に沿っていることが分かるかと思います。また、肩線が真上にあるとより男性らしさが表現しやすいです。
女性も衣紋を必ず抜かなくてはならない、ということではないですが、その方が肩線(かたせん)がやや後ろに下がり、女性らしく描けます。
着物姿において大事な共通点があります。それは右前で着るということです。
まれに「男性は左前」という話を聞きますが、そういう違いはありません。
[5]刀と着物について
イラストでは刀を持つシチュエーションもありますので、本講座らしく着物で刀を身に着けた場合を解説していきます。ここでは現代の着方で、小さい刀である「脇差(わきざし)」と、大きい刀である「うちがたな」を帯びたもので説明します。
この図は袴姿(はかますがた)で帯刀した場合の横側を描いたものです。
色分けをしてどのように重なっているのかをみてみましょう。
下から順番に重なりを見ていきます。
一番下には長着(ながぎ)です。その上に脇差が入ります。次に帯が巻かれていますが、この後も複数回できてきますが、まずは一巻目(ひとまきめ)です。
次に二巻目です。
この一巻目と二巻目の間に脇差を差し込む場合もあるようです。
続いて、刀が二巻目と三巻目の間に入ります。帯の三巻目で刀が固定されています。
袴についてですが、袴は前と後ろにわかれています。まずは紐で後ろ側で交差し、さらに身体の前で交差、さらに後ろで結びます。
この時、刀は袴紐(はかまひも)の下側ではなく、上になるようにします。次に袴の後ろ側ですが、前側で結び、余った部分を緑色の紐に巻き付けるなどします。この後、刀についている紐・下げ緒はいろんな処理の仕方がありますが、刀に巻き付けたりします。
この例はかんぬき差しと言われるものですが、刀はより水平な方が良いという説があったりと、流派によって重なり方や差し方、角度などなど細かく違ってくるようです。
何が正しい・正しくないというものではなく、色んな仕方があり、場面によっても違うということを知っておけばよいと思います。細かな部分もこだわりが出せれば、非常に良い作品になると思います。
以上で男性の着物描き方講座は終了です。
男性の着物の着方・帯剣について解説しました。ぜひ男性の着物姿にチャレンジしてみてくださいね!
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