第6回:背景を描く
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6-1背景の下描き
熊太郎家を描く
みなさんこんにちは、森野熊太郎です。
それではさっそく背景を描いていきましょう。普通マンガの背景といえば、定規を使って線を引いて…というのがなかなか大変な作業だったんです。でも、コミスタなら簡単に直線や円を描画することができるので、背景を描く作業もとてもカンタンになりました。
今回の作例ではすべてフリーハンドで背景を描いています。これは、ペン入れしても修正ができるコミスタならではの描き方です。それでは、実際の作業の流れを見ていきましょう。
まずは下描き
では、この背景を描いていく流れを追っていきましょう。まず下描き用のレイヤーを作ります。できれば人物などの下描きを描いたレイヤーとは別に新しく作った方が良いでしょう。そして、背景のイメージを作ります。パースペクティブとかリアリティとか難しいことはひとまずおいておきます。思った通りのイメージを作りましょう。
背景のイメージがむずかしい
…な~んて、カンタンに「思った通りのイメージを作りましょう」なんて書いてますが、これが一番難しいんですよね。実は背景を描くという作業はプロだって頭を悩ませる部分らしいんです。
背景を描くときに必要なのは、「こんな背景やあんな背景をみたことがあるなあ」というぼんやりとしたイメージです。「プロのマンガ家なら資料もなしに背景とかバンバン描いているんだろう」とおっしゃる方も中にはいらっしゃるらしいのですが、「んなわけねーじゃん」と、とあるプロの方が愚痴を漏らしておりました。もちろん、誰でも目にするようなものであれば想像で描くこともできますが、基本的に資料もなしに「日本の城を描け!」と言われてもそりゃあ無理な話だそうです。
プロの作家さんでも「資料」としていろんな画像を持っていて、それらを基に描き起こしたり組み合わせて新しいデザインを考えたりと、様々な工夫をしているそうです。
取材は必須
そんな中で背景を描くために必要な画像が、必ずしも自分の手元にあるとは限りません。もし身近にある景色が使えるようなら、カンタンにデジカメや携帯電話のカメラで撮ってきて、参考にすることもできるでしょう。今時は結構肌身離さずカメラを手にしている可能性って高いんですよね。
旅行に出かけたり、珍しい建物などを見かけたときに「よっしゃ、ええ資料になりそうや!」と思えるようになったらしめたもの、だそうです。いろいろ資料として画像を用意して、必要になったら、それらを参考にデザインを考えていく。そういった作業を繰り返していくと、背景のイメージが拡がっていくそうです。
6-2背景のクリンナップ
下描きをクリンナップ
イメージが固まったら、さらにきちんとした下絵を描きます。
もう一枚下描き用のレイヤーを作ります。レイヤー名はややこしくならないように[下描き用2]などと、判りやすい名前にしておきましょうね。
[レイヤー]パレットで最初に描いた[下描き用]レイヤーの不透明度を下げておきます。レイヤーの不透明度を下げて、クリンナップをやりやすくします。
[直線]ツールを使って、下描きの線をクリンナップしていきます。まだペン入れじゃないので大まかな線だけで良いんです。今回はペン入れをフリーハンドで行うので、こうやって下描きで直線ツールを使っておくと、清書するときに「線のブレ」が少なくなります。
[楕円]ツール
円を描きたいときは[楕円]ツールを利用します。
[楕円]ツールはツールパレットから選びますが、1つのアイコンに複数の機能が隠れているので、アイコンを長押しして必要なツールを選んでくださいね。詳しくは第3回[3-2]で説明しているので、忘れちゃった人は再度チェックです。
[楕円]ツールを選んだら[ツールオプション]パレットで赤く囲まれた部分を確認してください。[図形を描画]ボタンをクリックして、[中央 から開始する]のチェックと、[幅]と[高さ]を1.0に設定して[縦横比を固定する]のチェックを入れた状態で正円を描くことができます。そうそ う、[大きさ確定後に回転させる]のチェックは外れていることを確認しておいてくださいね。
まず、好きな位置の中心点(1)からドラッグして(2)の位置でマウスボタンを離します。これで円の大きさが決まります。失敗したらやり直せ ばいいので、気楽に行きましょう。さっき、[ツールオプション]で[縦横比を固定する]のチェックを入れましたが、楕円を描きたいときはこのチェックをは ずします。いろいろ試してみて、ツールに慣れておきましょう。
[矩形]ツール
「矩形」とは正方形や長方形のことです。四角形を描きたいときは[矩形]ツールを利用します。
[矩形]ツールもツールパレットから選びますが、1つのアイコンに複数の機能が隠れているので、アイコンを長押しして必要なツールを選んでください。
[ツールオプション]パレットの[図形を描画]ボタンをクリックして、[中央から開始する][縦横比を固定する]などのチェックは外しておきます。
[矩形]ツールの場合は四角形の対角線をドラッグして描画します。好きな点(1)からドラッグして(2)の位置でマウスボタンを離します。これで四角形の 大きさが決まります。[ツールオプション]で[縦横比を固定する]のチェックを外していますが、正方形を描きたいときはこのチェックを入れておけばOK。
ということで、各種ツールを使って、建物の部分はこんな感じで線を入れれば充分でしょう。ドアの部分なんかは鉛筆ツールでクリンナップしています。画像は、参考にできあがった背景を薄く表示しています。
6-3背景のペン入れ
フリーハンドでペン入れ
後は、この直線にフリーハンドで線をなぞっていきます。
少々ずれたって大丈夫。線もわざと太くしたり細くしたり、表情を付けています。
主だった線は入れ終わりました。今度はここにディテールを描き込んでいきます。
細かな木の質感などをこんなイメージで。どんどん描き入れていきます。まっすぐな線は画面を回転させながら引きやすい方向に引いていくのがコツですよ。
材質の表現
今回の背景はわが家なんですけれど(笑)、ウチは木造のお家なので、木の質感をこんな風に表現してみました。
細かな部分の描き込みを工夫すると、俄然画面が締まります。大まかな線を引いて、そこから画面を拡大して細かな描き込みを行う、といった工夫をしていくと作業がしやすいですよ。
パターンブラシ葉っぱを描く
建物や木の幹や枝まで描けたら、今度は[パターンブラシ]を使って、葉っぱを表現してみましょう。[ツール]パレットで[パターンブラシ] ツールを選んだら、[ツールオプション]パレットの一番上の[ツール設定メニュー](画像の赤い四角で囲まれているところ)で「葉っぱ2」を選んでくださ い。
あとは、木々の葉っぱが生い茂っているように描いていくだけです。アナログ時代にこんなペンなんてなかったので、最初は戸惑うかも知れませんが、慣れてくるとカンタンに使えるようになりますよ。
ということで、こんな感じで背景を完成させました。
パターンブラシは第8回で
今回、少しだけパターンブラシを紹介しましたが、本連載の第8回でパターンブラシの作り方を詳しく説明していきます。お楽しみに。
6-4便利なベクターレイヤー
ベクターレイヤーとは
最後に、ベクターレイヤーを紹介しておきましょう。
[ベクター]レイヤーはペン入れや直線などの図形を描く専門のレイヤーです。[ベクター]レイヤーを新規作成すると、レイヤーのマークが赤くなっていて、これがベクターレイヤーであることが判ります。
この[ベクター]レイヤーはベタを塗ることや[鉛筆]ツールを使うことはできません。ペン入れや直線ツールなどは使えるのに、なんで制限があるんでしょう。なんだか不便そうなレイヤーですね。でも、実は背景を描くときにとっても便利な機能があるんですよ。
交点まで削除
[ベクター]レイヤーでこんな風に線をひいてみます。[直線]ツールでも[ペン]ツールを使ってフリーハンドでも構いません、線を交差させた状態をつくってみて欲しいんです。
線が引けたら[消しゴム]ツールを選びます。[ツールオプション]パレットの[ツール設定メニュー]で[ベクター用(交点消去)]を選択してください。
消しゴムは、はみ出している線にふれるように使います。すると、線と線が交差しているところまで線が消えます。
同じく、周囲も消していきましょう。
交差している点まで線を消してくれるので、格子模様を描くと、いろんな消し方ができますね。
さあ、ここまでくれば、どうやって消していったのかはすぐに判りますよね。
[交点消去]は使える!
この[消しゴム]ツールの[交点消去]は本当に使えます。今回はわが家が舞台なのであまり使いませんでしたが、都会のビルや、普通のペン入れではみ出した部分や、いろんなコトに応用ができるはずです。
[ベクター]レイヤー自身に[塗りつぶし]ツールを使うコトはできませんが、新たにベタ塗り用の[ラスター]レイヤーを作っておけば、ベタ塗りも行えますので、人物のペン入れに使ったって大丈夫なんです。
これらの便利な機能を使ってカンタンにクオリティの高い背景を描くことができるので、ぜひ活用してください。
次回は背景の続きです。3DCGなどを下描きにして背景を描く方法を紹介しますね。それではまた次回!
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