第9回:パターンブラシを使いこなす
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9-1トーン削り
トーンの生い立ち
みなさんこんにちは、森野熊太郎です。
漫画雑誌と言えば、たくさんの部数を印刷するためと、値段を安く抑えるためにあまり質の良くない紙が使われてきました。そのため、繊細な表現ができずに、基本的に「黒」か「白(つまり、黒でないところ)」の表現しかできないそうです。微妙なグレーの表現などは苦手とされています。
そのために、マンガの表現は「黒」1色だけで様々な表現力を獲得していったそうです。
例えばこんなカワイ子ちゃんを描いても、微妙なグレーの表現はむずかしいので、トーンを使って、印刷に対応できるようにしたんです。でも、トーンは一様な模様が印刷されているだけなので、こんなイラストの表現はできません。
カッターで切ってトーンを貼るだけでは、トーンを貼った箇所とそうでないところがクッキリ分かれてしまいます。これはこれでいいんですけど、でも微妙なグレーの表現とはちょっと違いますよね。
トーンは透明のシートの上に柄が印刷されているもので、トーンで表面をこすって柄をはがし落とすことができます。そこで、トーンのフチのあたりをカッターで細かく削り取って、柄をぼかしていく方法が考え出されました。
赤い部分が「ぼかし削り」をした部分です。空に浮かぶ雲や、柔らかな影などでよく使われていますよね。この表現はカッターで丹念に時間をかけて削りを入れる、ちょっと大変な作業だったんです。
さあ本題のぼかし削り
ということで、このぼかし削りをコミスタでやってみましょう。アナログでは大変なぼかし削りも、[パターンブラシ]ツールを使うと、とってもお手軽にできるんです。
まずはトーンを貼ります。前回紹介したトーンの貼り方で自由に貼ってみてください。トーンを貼り終わったら、[パターンブラシ]ツールを選びます。
そして、[ツールオプション]パレットで、[トーン削り用]を選びます。[サイズ]を少し大きめにしておくと使いやすいでしょう。この例では10.00mmに設定しました。
インク色は[透明]を選びます。
くるくると円弧を描くようにタブレットのペンを操作してみましょう。[パターンブラシ]ツールを選択した状態の[ツールオプション]パレットで[サイズ]と[間隔]を調整して、自分にあった削り具合が出せるようにしておくのがコツです。
全体的にぼかし削りを入れることができました。カッターでひとつひとつ削っていたことを考えると、本当に手軽な作業でイメージ通りのぼかしを入れることができるので、覚えておきたい機能ですよ。
9-2トーンを越えたトーン
パターンを配置
[パターンブラシ]ツールを使えば、トーンにぼかしを入れたりするだけでなく、トーンより自由に効果を出すこともできます。それはどんな使い方なのかを紹介していきます。
まず、[パターンブラシ]を使うときは、必ずグレー表示に対応した[ラスターレイヤー]を新しく準備するようにしておきましょう。
カテゴリを表示しているバーから[ラスターレイヤー(詳細)]-[グレー(8bit)-減色しない]を選びます。
グレー対応のレイヤーができたら、パターンブラシを使っていきます。
[ツールオプション]パレットの一番上にあるボックスをクリックすると、様々なパターンが呼び出されます。ここから好きなパターンをまず選びます。今回は[花びら]を選んでみました。
タブレットのペンで赤いラインのように描いてみましょう。どうですか?花吹雪になったでしょ?
今度は、ペンをそのまま走らせるのではなく、「ちょんちょん」っと細かくペンをはねさせていきます。さっきとは違う効果が現れました。これ が[パターンブラシ]ツールの面白いところです。他にもいろんなパターンが登録されていますが、試してみると本当に面白いパターンがでてくるようになって います。
今度は[音符A]を使ってみました。自分の思い通りの場所にいろんなパターン(柄)を作れるのが[パターンブラシ]ツールのいいところです。あらかじめ柄の配置が決まっているトーンでは難しい場面でも、さまざまな効果を得ることができるんですよ。
さて、[パターンブラシ]ツールでパターンを描いたら今度はこのパターンをトーンと同じように「トーン化」してしまいましょう。今描いてい るグレーに対応したレイヤーはそのままではマンガ雑誌などの原稿として印刷できない可能性がありますが、「トーン化」すれば大丈夫なんです。
まず[レイヤー]パレットで先ほど作ったグレー対応レイヤーの赤い四角で囲まれているアイコンをダブルクリックして、[プロパティ]パレッ トを呼び出します。そして[プロパティ]パレットの下の方にある[減色手法]に注目してください。もしこの[減色手法]が表示されない!という場合は[プ ロパティ]パレット一番下に[詳細表示]と書かれたボタンがあるはずなのでクリックしてみましょう。
[減色手法]は[減色しない]と表示されているはずですが、このボタンをクリックすると、[減色しない][閾値][疑似階調][トーン化]と4つのメニューが現れます。この[トーン化]を選択してください。
音符のパターンが「網点化」されました。これで、プロが商業誌で使ったり、新人賞投稿用の原稿として使うことができるようになります。
トーン化してからトーンを調整
もちろん、この網点の大きさは調整することができます。
[プロパティ]パレットで表現手法を[トーン化]にした後で、もう一度[レイヤー]パレットで赤い四角で囲まれたアイコンをダブルクリックします。
すると[レイヤー]タブが開かれた状態で[プロパティ]パレットが開きます。ここでトーンの線数を変更すれば、網点の細かさが変化します。
最初はトーンの線数が[60.0]に設定されています。この線数を調整すると…
網点の大きさが変化しているのがわかるでしょうか。一度コミスタで試してみれば効果は一目瞭然です。
[プロパティ]パレット[トーン]タブの[種類]を操作すると、トーンの柄を変更することもできます。
この画像では[種類]を[クロス]に変更してみました。同じパターンの[パターンブラシ]ツールでも、[レイヤー]の[プロパティ]を使えば、線数や柄を変更できるので、様々な効果をもたらすことができそうですね。
9-3グラデーショントーン
グラデーショントーンとは
これまで紹介したものとはまた違う表現もトーンでよく使用されます。それがグラデーショントーンです。アナログのトーンではグラデーション の状態によって無数のトーンが用意され、必要なトーンを捜すだけでも大変な状況でした。コミスタでグラデーショントーンを作るときは、自分の必要なグラ デーションを自由に作り出すことができます。
グラデーショントーンの貼り付け方
では、グラデーショントーンの貼り付け方を説明します。
まずはグラデーションを作りたい範囲を選択範囲ツールで選択しておきます。次に、[ツール]パレットから[グラデーション]ツールを選択し たい…のですが、[グラデーション]ツールはモードが選択できるようになっています。その中から[直線モード60L]を選べば、60線のグラデーション トーンを作ることができるようになります。
ひとつだけ、[グラデーションツールオプション]パレットにある[編集中のレイヤーに描画する]のチェックを外しておくことを忘れないようにしましょう。こうすると、グラデーショントーンを作るたびに新しいトーンレイヤーが作成されます。
グラデーションを作りたい位置をドラッグして、グラデーションを作成します。
[レイヤー]パレットには、ちゃんとトーンレイヤーができてますね。これでグラデーショントーンの作成は終わりです。
あとは削ったり、貼り足したりが普通のトーンレイヤーと同じように行えます。アナログ作業でグラデーショントーンを貼り足すなんて困難を極めるワザでしたが、コミスタなら簡単にできちゃいますよ!
「森の熊太郎」の2ページマンガ原稿では、夕方の背景にこのグラデーショントーンを使っています。もうグラデーショントーンをたくさん使っても、高いトーン代に泣くこともないので、いろいろ試行錯誤して、使い方に慣れてくださいね。
さあ、原稿の仕上げもほとんど終わりました。次回はフキダシとセリフ(ネーム)を入力していきます。漫画原稿の完成まで間近ですよ!それではまた来週!
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