書き出しを使いこなす 基本編
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※使用したバージョン:ComicStudioVer.4.5.6
[1][保存]と[書き出し]の違い
[2]書き出し設定の内容について
作品が仕上がったらコミスタから家庭用プリンタで印刷することも、もちろん可能ですが、同人誌印刷所や編集部に「納品」する場合もあるでしょう。マンガ原稿を画像ファイルとして保存するときにどのような設定内容があるのか解説します。
今回は「基本編」ということで、出力設定内容を中心に解説しますが、書き出しの設定項目は本当に詳細にたくさん用意されています。次回の「実践編」では実際にどこに気をつければいいか、など注意するべき部分を中心に解説しますので、両編あわせて参考にしてください。
[1][保存]と[書き出し]の違い
ComicStudioで作業をしたら、必ず保存を行います。[ファイル]メニューから[保存]を選んで、ファイル名を入力するとComicStudioの作業内容が保存できます。
ComicStudioの保存データは少し特殊です。フォルダの中にページ毎の情報が納められています。
フォルダにある「cst」ファイル、もしくはページごとのフォルダ内にある「cpg」ファイルをダブルクリックするとComicStudioに保存されたデータが読み込まれます。
一緒に納められているフォルダは各ページのデータです。このフォルダの中にはJPEGの画像ファイルが納められています。
このJPEG画像ファイルは作品一覧のときにサムネイルとして利用するためのもの。実は解像度は実際の原稿データよりもずっと荒く記録されているので、このJPEGファイルを使って印刷やWeb用に掲載…という利用方法には向いていません。
一方、[書き出し]ではComicStudioで作ったデータをJPEGやTIFF、PDFと言った他の画像用アプリで利用できるようにするものです。解像度は原稿を作成したものと同じ高解像度の状態で出力できます。もちろん、web掲載用に解像度を下げることも可能です。
書き出した画像ファイルをComicStudioでページとして読み込むことはできません。
PsdやTIFF形式のファイルを直接読み込む場合は、あらかじめ読み込みたいページを開き、[ファイル]メニューから[読み込み]→[画像ファイル]を選びます。画像ファイルはレイヤーとして読み込まれます。
つまり、「ComicStudioのオリジナルファイルの保存」と汎用画像ファイルへの出力は別物と考える必要があるということです。
書き出した画像ファイルはPsd(Photoshop)形式を除いて[レイヤー情報]を記録することはできません。Psdでレイヤーを保持したまま書き出したとしても、ベクターやテキスト。トーンレイヤーといったComicStudioオリジナルの機能を利用したレイヤーはラスタライズされてしまいます。書き出しで作成したファイルを使って描き直しや描き足しをしたい、という場合は注意が必要です!
画像の出力方法
[ファイル]メニューから[書き出し]→[画像ファイル(ピクセル指定)]または[画像ファイル(寸法指定)]を選択。
[画像ファイル(ピクセル指定)]と[画像ファイル(寸法指定)]の違いは、初期状態で選ばれている[元データのサイズ]の単位が[px]か[cm]の違いだけです。どちらのメニューを選んでもあとからピクセル指定も寸法(cm/mm/inch)指定も設定できるようになっています。
[2]書き出し設定の内容について
書き出しを行う際には[画像のエクスポート]ダイアログで設定を行います。設定内容の詳細を紹介します。
A[出力サイズ]
書き出しするときに、サイズを指定します。
[等倍で出力]:作品やページを作成した時に設定した大きさそのままで出力。例えば解像度600dpiでB4原稿用紙を作成した場合、幅6071ピクセル×高さ8598ピクセルの画像ファイルができあがります。
[元データからの拡大率]:原寸からのパーセンテージで大きさを調整します。原稿の寸法(mm/cm/inch)とピクセル(px)共に変化します。解像度に変化はありません。一般的に同人誌印刷所などに納品する場合など、拡大率を変更することはありません。
[出力サイズ指定]:[幅]/[高さ]を変更するか[解像度]を変更するかで、出力サイズに違いがでます。[幅]/[高さ]を変更すると、印刷時のサイズそのものが拡大/縮小します。寸法(mm/cm/inch)かピクセル(px)の単位を選んで変更します。[解像度]を変更すると、印刷時のサイズは変わりません。解像度を下げた場合は印刷結果が粗くなります。一般的に同人誌印刷所などに納品する場合など、出力サイズを変更することはありません。
ベクターレイヤーに描画したもの、また網点トーンなどを貼ったトーンレイヤーは、出力サイズを拡大/解像度をアップするとそれに応じて更に精細に出力できます。
ラスターレイヤーに描かれたもの、トーンの中でも画像をパターンとして読み込んだようなものは拡大/解像度をアップしてもそれ以上精細にはなりません。
B:[出力範囲]
ファイルに出力する原稿の範囲を決めます。
[ページ全体][トンボの裁ち落としまで][トンボの内側まで]のそれぞれの出力範囲です。
原稿上に選択範囲が指定されている場合のみ[選択範囲の外接矩形]も選択できます。選択範囲内の画像が出力されます。楕円など選択範囲でも四角形(外接矩形)で出力されるので注意しましょう。
C:[色深度]
白黒2値で出力するか、カラー/グレースケールで出力するかを選びます。網点トーンなどを使っている場合はカラー/グレースケールで出力する場合留意点があります。詳細は[仕上げ情報]の[トーン設定]で説明します。
[色深度]で[カラー]を選んだ時は[色の詳細設定]ボタンがクリックでき、[カラー設定]ダイアログが呼び出せます。カラー表示の設定をしたレイヤーや、トンボや基本枠などのカラーを指定します。
D:[下描き情報]
「下描き]設定にしているレイヤーや下絵レイヤーの画像を出力するかどうかを選択します。下書き用のレイヤーにネームなどを描いて居る場合に、確認用に画像出力したい場合にはこのチェックをONにして出力します。完成原稿を出力するときは基本的にOFFにしておきます。
E:[仕上げ情報]
出力する画像を選択します。トーンを出力せずにカラー原稿の線画として出力したり、商用入稿の場合はテキストをOFFにして納品など設定が可能です。
[ラスター設定]をクリックすると[ラスター詳細設定]ダイアログが表示されます。
グレー(8bit)対応レイヤーに描画した減色手法の設定を選べます。
各レイヤーの設定を無視してここで設定した減色手法を一括で設定する場合は[下記の設定で減色する]をONにして設定します。
[トーン設定]をクリックし、[トーン詳細設定]ダイアログから[モノクロ出力時レイヤーの不透明度をトーンの濃度に反映する]:トーンレイヤーの不透明度設定を出力時に反映させるかどうかを選択します。
トーンレイヤーの[不透明度]を設定して本来よりも薄く表示している場合。
設定がONだと、網点トーンの濃度が薄くなって出力されます。
設定がOFFだと、網点トーンの本来の濃度で出力されます。
不用意にトーン濃度が変化してしまわないように、トーン濃度の設定は明確な意図がない限り、OFFにして利用しておきましょう。
[トーン設定]をクリックすると[トーン詳細設定]ダイアログが表示されます。
[濃度設定]:トーンの濃度を調整します。インクジェットプリンタなどで印刷するためのファイルを出力するときに、インクのにじみでトーンが濃くなってしまう場合に一括で濃度を薄くするなどの調整も可能です。
[出力設定]:トーンのパターンを選びます。網点トーンなどはグレーで出力するとドットにアンチエイリアスがかかって、印刷時のモアレの原因になることもあるので、トーンの網点だけはすべてモノクロで出力したい、という場合ここで設定します。[色深度]でグレー出力を選んだ時は、この設定を確認しておきましょう。
[線数設定]:[出力サイズ]で原稿のサイズを拡大/縮小したときに、網点トーンなどの「線数」を拡縮後の大きさに合わせるかどうかを指定できます。[レイヤー設定に従う]だと、拡大しても縮小してもトーンの線数が変わらないので、トーンの濃度が変わって見える恐れがあります。
F:[ページ情報]
出力する画像に描き込む情報を選択します。同人誌印刷所に納品するときは[トンボ]と[ノンブル]が必要…など、利用シーンによって出力する情報を選択します。
G:[ファイルの設定]
[ファイル名]でファイル名を指定します。複数のファイルを書き出す場合はページ毎に[ファイル名0001,ファイル名0002,ファイル名0003…]のように連番が振られます。
[出力先]:フォルダを指定します。
[出力範囲]:作品の中で何ページ分出力するかを指定します。
[見開きを分けて出力]:見開きページを作っている場合に、見開き2ページ分をまとめて1つのファイルにするかどうかを指定します。印刷所に送る本文用のデータの場合は見開きをまとめて納品できないこともあるので注意しましょう。
[簡易プレビュー]をONにすると、ダイアログで設定した内容を表示に反映します。必要な情報が書き出されるか確認することができます。チェックをON/OFFしてみると、設定忘れがないか確認しやすいですよ。
[種類]で画像のファイル形式を選びます。形式によっては[設定]ボタンをクリックして、設定を行う必要があるものもあります。設定内容は以下の通りです。
JPEG形式は[品質]でファイル容量を圧縮できます。画像が多少粗くなってもよければ数値を下げるとファイル容量が軽くなります。
Photoshop形式ではレイヤー構造を維持するか、統合した状態かを選択して出力することはできます。
ただしComicStudio独自の機能を含む(ベクターレイヤー、トーンレイヤー、テキストレイヤーなど)についてはラスタライズされた状態でレイヤーに出力されます。
同人誌印刷所などに印刷を依頼する場合は、[テキスト情報をレイヤーに変換して出力する]は必ずOFFにしておきます。
TIFF形式では、CMYKでの出力を指定できます。白黒のマンガ原稿では関係はありませんのでOFFにしておきます。
PDF形式ではすべての原稿を1つのファイルにまとめて保存できます。品質の数値を低く調整してファイルを圧縮できますが画像が荒れてしまいます。
このように[書き出し設定]はたくさんの項目があって大変なところもあります。次回は実際に印刷所納品時に気をつけることや、トラブルの起きやすいポイントを中心に解説します。
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