ベクターレイヤーの便利な機能を使いこなす・実践編
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※ 使用したバージョン : ComicStudio Ver.4.5.2
[ベクターレイヤー]はアイデア次第でどんどん便利に使いこなすことができます。皆さんもぜひチャレンジしてみてください。
[1] 線つまみツールを使った効率の良い作業例
一回の描線で形を取るのが難しいパーツも、[線つまみ]ツールを使えば、描いた線の形が気に入らなくても後から修正できます。
■形を取るのが難しい線を描く-その1-
私は頭や顔の輪郭を描くのが苦手なので、だいたいの線を引いてから、[線つまみ]ツールを駆使して修正します。
(1) 頭の輪郭線を線質重視で勢いよく引いてしまいます。あとから修正できるので、多少ゆがんでいても気にしません。
(2) [ツール]パレットから[線つまみ]ツールを選択して、[ツールオプション]パレットの[つまみ加減]の設定値を大きくしておきます。
※少し[つまみ加減]を大きくするのがコツです。
(3) ドラッグして理想のラインになるよう修正します。
個人差はありますが、[取り消し](Ctrlキー+Z)で何度も線を引き直すより早いかもしれません。
■形を取るのが難しい線を描く-その2-
髪やコード類、刀剣など、流線型の物を描くときにはベクターレイヤーでの作業をオススメします。
(1) ベクターレイヤーに、元になる線を1本引きます。
(2) 線を引いたレイヤーを複製し、[レイヤー移動]ツールで少し移動します。
(3) [線つまみ]ツールの[端つまみ]で先端の位置をあわせます。
(4) [線つまみ]ツールの設定を[両端固定]に変更して形を整えます。
[2] ベクターレイヤーで線が複雑に重なり合ったイラストを描く
■ベクターレイヤーで縦ロールを描こう
下図の気が遠くなるような「縦ロール」も、ベクターレイヤーをうまく使えば、簡単に描けます。
■手順
(1) まず、髪の毛の塊をひとつひとつ下描きします。「タイヤ」や「チョココロネ」をイメージしてみてください。
(2)[ベクターレイヤー]にペン入れします。線が重なっても良いので(むしろ重なるように)、必要な線をすべて清書していきます。
(3) (2)ではみ出した余分な線を[消しゴム]ツールの[交点までを消去]で消します。
(4) [ペン]ツールでほつれた毛を書き足します。交わった部分は[交点までを消去]で整えます。
(5) 大体縦ロール描けたので、[レイヤー]パレットから、「縦ロール」レイヤーを掴んで[素材]パレットの[マテリアル]→[ユーザー]へドラッグ&ドロップします。これで、このレイヤーは素材パレットにバックアップされました。
(6) [レイヤー]パレットで体の描いてあるレイヤーを表示し、[消しゴム]ツールオプションの[交点まで消去]、[すべてのレイヤーを参照]をオンにして、体と重なっている部分の縦ロールの線を消していきます。[すべてのレイヤーを参照]をオンにすると、他のレイヤーに描かれたベクター線(この場合は「体」)と交わる部分までを消去できます。
※もちろん、ベクター線で厳密に仕上げなくても、体のレイヤーと「縦ロール」レイヤーの間に白く塗った[ラスターレイヤー]を挟む、などの代替案ですませても良いです。
(7)[素材]パレットから(5)で登録しておいた「縦ロール」レイヤーをドラッグ&ドロップします。
※追加した「縦ロール」がわかりやすいように、下図では線を赤色にしています。
(8) 手前か奥の縦ロールのどちらか見やすい方のレイヤーの[不透明度]を下げ、他のパーツに隠れる部分の縦ロールを消していきます。
(9) 足りないところを描き足して、線画が完成しました。
[3] ベクターレイヤーに関する応用的な設定
[ツールオプション]パレット以外にも、ベクターに関する設定ができる項目があります。
1.拡大縮小と線の太さ
ベクターレイヤーは、拡大・縮小の処理をした際、「線が荒れない」以外にももう一つの特徴があります。
[ファイル]メニュー→[環境設定]→[ページ]→[表示]→[変形時にベクターの太さを変更する]のチェックを外すと、拡大縮小しても線の太さが変わらなくなります。
線の太さを変えずに変形すると、線の印象が濃くなったり薄くなったりするので、個人的にお気に入りです。 必要に応じて、変形後に[線幅修正]ツールで太さを修正すると良いでしょう。
※初期設定では、チェックがオンになっており、変形時に線の太さは変わります。
2.ベクターの選択方法
拡大縮小などの変形処理には選択範囲の作成が不可欠です。
ベクターレイヤーでは、選択範囲に対して、どのようにベクター線を選択するかを設定できます。
こう書くとすこし分かりにくいので、実際に動きを見てみましょう。
■選択範囲で切断
ラスターレイヤーの場合と同じく、選択範囲の破線を境に、編集対象を切り分けます。
見た目通りの選択範囲です。
■少しでもかかる線を選択
少しでも選択範囲内にかかったベクター線はすべて編集対象として選択されます。
下図では、選択範囲に一部が含まれるアゴや肩の線全体が選択対象に含まれます。
■完全に含まれる線を選択
読んで字の如く、選択範囲内に完全に含まれたベクター線のみを編集対象にします。
逆に、少しでも選択範囲からはみ出す部分があるベクター線は編集対象に含まれません。
下図ではアゴや肩の線は全体を囲みきっていないので選択されません。
これらの3つの選択オプションを使いこなすと、ベクターレイヤーでの移動と変形も自由自在です。
例えば、下の画像で「目と鼻だけ拡大したい」という場合は、[投げなわ選択]ツールでザックリ囲むだけで、余分な線は選択されません。
[4] おまけ:一括レイヤー作成法 A・B・C!
[ベクターレイヤー]とは少し離れますが、たくさんのレイヤーを一括で作成する方法を解説します。
例えば、[ベクターレイヤー]を使いたいけど、作成するのが面倒で、つい元からあるラスターレイヤーに描いてしまうという人も、これらの方法を使って、ベクターで作画する環境を一気に作ってしまえば便利ですね。
A:アクションを利用する【EX】
[アクション]機能を使って、よく使うレイヤー構成を自動的に作成することができます。
(1) [アクション]パレットで[アクションの追加]ボタンをクリックします。
(2) アクションを作成すると、アクション名がハイライト表示されているので名前を変更します。
※随時、ほかのアクション名とダブらないわかりやすい名称を付けることをオススメします。
右クリック→[アクション名の変更]からでも名前を変更できます。
(3) [アクションの記録開始]ボタンをクリックして、アクションの登録を開始します。
以降の操作はアクションとして記録されます。
(4) 構成上、下(下層)になるレイヤーから順番に作成していきます。レイヤー名をつけておくと、その名前のレイヤーが作成されます。
※レイヤーフォルダに入れたい場合には最初にレイヤーフォルダを作成します。
(5) [枠線定規レイヤー]を作成しておきます。
(6) 追加したいレイヤーをすべて作成したら、[アクションの記録停止]を押してアクション機能登録を終了します。
作品の次頁の作業時にこのアクションを再生すると、登録したレイヤーがまとめて作成されます。
※このアクションは、「創作活動応援サイト CLIP」でアクション素材として配布しています。「素材を探す」で素材名「レイヤー一括作成アクション」を入力して検索してください。
B:素材パレットを利用する【Pro】【EX】
アクション以外にも、[素材]パレットを利用して、名称の付いたレイヤーを一手順で作成することができます。
(1) 自分で使用する構成のレイヤーを作成し、[レイヤーフォルダ]内に格納します。
[レイヤーフォルダ]には分かりやすい名前を付けておきます。
(2) [レイヤーフォルダ]を[素材]パレットへドラッグ&ドロップします。
(3) 作成したレイヤーフォルダが[レイヤー素材]として登録されます。
次の頁以降、開いている頁へ、[素材]パレットから直接ドラッグ&ドロップすると、レイヤーをまとめて作成できます。
C:ページの複製を利用する
ComicStudio Debutのようにアクション機能も[素材]パレットも使えない場合には、[ページを複製]や[用紙テンプレート]を利用する方法があります
[作品]タブであらかじめ必要なレイヤーをすべて作成したページを選択し、右クリックで表示されるメニューから[ページを複製]を選択します。
または、必要なレイヤーをすべて作成した状態で[ファイル]メニュー→[テンプレートとして登録]をクリックします。
新規ページの作成時に、[新規ページ]ダイアログで[用紙テンプレート]タブ→[ユーザー]を選択すると、登録したレイヤー構成の用紙を作成できます。
闇桁はレイヤー構成上、後から必要になる些細なレイヤーにもレイヤー名を付けるため、2回以上必要になったレイヤー(名)は作成用のアクションを作っています。
「レイヤー1」とか「レイヤー2」だと、ソレが何のレイヤーかの確認に数秒取られてしまうのです。
複雑なトーンワークや登場キャラ数が多いときには「キャラ毎の使用トーンレイヤー構成」をアクションで作成したりもします。
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