トーンを使いこなす_整理術と綺麗な書出し方法
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"トーンの管理方法"と"トーンの綺麗な書き出し方法"を取り上げます。
今回は別名「トーン整理術」と、「印刷のためのトーン書き出し方法」になっています。印刷しないよーって方には半分くらい関係のない話です・・・スミマセン。
※ 使用したバージョン : ComicStudio Ver.4.5.6
[1]トーン管理法・・・素材パレットを使いトーンを管理
[2]モアレのでないトーン書き出し・・・汎用画像への書き出し時の注意点
[1]トーン管理法・・・素材パレットを使いトーンを管理
漫画を描いていると、このキャラクターの髪のトーンはこれ、服の柄はこれ・・・といった、「キャラクターごとに決まったトーン」というものができてきます。しかし、コミスタのトーンは途方もない種類があり、どこのフォルダにどんなトーンが入っているかを覚えるのは至難の業です(柄物は特に!)。
素材パレットには”お気に入り”という項目があり、よく使うトーンはここに登録しておくこともできますが、似たような柄や網点が多く登録してあると、だんだんワケが解らなくなってきます・・・
ということで、ここではちょっと便利なトーンの管理方法をご説明&ご提案していきたいと思います!
1.キャラクター個別にトーンを管理する方法
まずは登録したいキャラクターの素材を用意します。
この素材は左図のようにかっちり作ってもよし、右図のように簡単に作っても良いかと思われます。
(または、既に描いたマンガの中から取りだしてくる事も可能です)
↑この素材を構成しているレイヤーを選択状態にします。
[編集]メニューから[パターンを登録]→[キャラクター素材]を選択すると、以下のダイアログが現れます。
[A]と[B]は記入しなくても素材登録はできますが、無名の素材が出来てしまったり、意図しない名前のフォルダが作成されてしまうので、なるべく自分で解りやすい名前を付けてあげて下さい。説明欄には、その素材に対してメモを書き入れることができます。
最後にOKボタンを押すと、素材パレットの[マテリアル]→[ユーザー]→[キャラクター素材]以下に
[B]の名前のフォルダが作成され、中に[A]の名前の素材が登録されます。
さて、ここからが本番です。頑張って登録した素材をどうやって使うのか!
まずはトーンを貼りたい部分に選択範囲を作成します。いつもの通りマジックワンドを使ってサクサク作っちゃいます。
[ウィンドウ]メニューから[素材]を選択し、素材パレットを表示します。
すると、以下のプロパティパレットが現れます。
(1)のボタンを押すと、この[キャラクター素材]に含まれているトーンが別ウィンドウで表示されます。
帽子部分にトーンが貼られます!
この「プロパティ」パレットは、「×」ボタンを押して閉じない限りは開いたままになるので、この後も帽子部分と同じように「トーンを貼りたい場所に選択範囲を作成」→「プロパティパレット/トーンを貼り付け」→「貼りたいトーン選択」を繰り返せば、このキャラクターのトーン貼りは終わっちゃいます。
この素材の便利なところは、視覚的にどこにどんなトーンを貼っているのかが解る事ではないでしょうか。
トーンレイヤーにわかりやすい名前を付ける
キャラクター素材を登録する前に、トーンレイヤーの名前をわかりやすい名前にすると、さらに迷いません。
一番最初に「素材」を作って登録しなければなりませんが、途方もない数のトーンの中から目当てのトーンを「探す手間」が省けますので、是非とも利用してみて下さい!
2.トーンセットを作って管理する方法
よく使う柄物トーンは四角などに貼って素材登録。そこで自由にフォルダを作成して、管理するという方法もあります。
カラーをデジタルで描かれる方は、「カラーセット(自分好みの色をセレクトして登録しておくパレットのこと)」という言葉をよく聞かれるかなと思うのですが、それをトーンでもやってしまおう!トーンセットを作ってしまおう!という作戦です。
好きなトーンをぺたぺた、貼り付けてみました。今回は綺麗に作ってありますが、枠などは別に無くても良いと思います。
自分が解りやすいようにぺたぺた貼り付けてみて下さい。小さくてもそれと解るトーンは小さめに貼り付け、ちょっと大きく貼らないと全体のイメージが掴めないものは大きめに貼り付けてあります。
これを素材として登録します。登録の仕方は上記「1」と同様、登録したいトーンレイヤー等を選択状態にし、[編集]メニューから[パターンを登録]→[キャラクター素材]を選択すると[パターンをキャラクター素材に登録]ダイアログが出てくるので、ここに色々と書き入れ、最後にOKボタンを押します。
自分の好きなトーンが簡単にセレクトできる、自分だけのトーンセットが出来上がりました!
これで多少は、冊子の素材カタログとにらめっこする時間が減るかな??
漫画を描いていると、作品ごとによく使うトーンというものが出てくると思うのです。常に使うトーンは[素材]パレットの「お気に入り」へ登録し、その作品中のみよく使うトーンはこうやって「キャラクター素材」として登録しておくという方法が、今現在ではとても解りやすいトーンの管理法だと思います。その作品の制作が終わったら、「キャラクター素材」の方はあっさり削除しちゃっても良いですしね。
あとやはり、複数の方で制作されるプロの現場では、より意味を持ってくると思います。
遠方のアシスタントさんにも、原稿データと一緒にこの「キャラクター素材」データも送れば、それだけでトーンの指定ができるので、指示する手間が省けます。
3.自分のためのちょっとした応用
みなさん、ダウンロードしたトーンの管理はどうしていますか? 私はダウンロードフォルダに入れっぱなしです。トーン大好きなので凄い数です。約100枚ごとにフォルダ分けはしてますが、ちょっと埋もれがち・・・これはいけないですね!
ということで今回、ダウンロードしてきたトーンの一覧表を作ってみました。上はその一部分です。
柄の特徴が掴みやすいように、ちょっと大きめの横長です。ひとつの素材に20枚程度トーンを貼り、100枚のトーンを5つの「キャラクター素材」として管理することにしました。
■まとめ
今回は「キャラクター素材」の使い方の説明もありましたが、豆知識的な部分が多かったですね。私とセルシスのスタッフの方の、「こういう風に使ったら便利!」という意見をまとめてみたのですが、もっともっと便利な使い方があるかもしれません。皆さんもどんどん使ってみて、自分で使いやすいようにカスタマイズしていってください!
余談ですが「キャラクター素材」はトーンレイヤーだけではなく、他のレイヤー(ラスターレイヤー)も扱うことができます。
[2]モアレのでないトーン書き出し・・・汎用画像への書き出し時の注意点
原稿を作って印刷に出される方には、ちょっと目を通していただきたい項目になります。綺麗に印刷したいならば、綺麗に原稿を書き出さなくてはなりません。ここでは美しい原稿の書き出し方をやりたいと思います!
1.モノクロ2階調で書き出す
一番簡単で確実な方法です。印刷が初めての方はとりあえずこちらで書き出して下さい。
(1)[ファイル]メニューから[書き出し]→[画像ファイル]を選択します(ピクセル指定と寸法指定がありますが、好きな方を選んでしまって大丈夫です)。
すると、「画像のエクスポート」ダイアログが現れます。
(2)[A]の色深度を「モノクロ2階調」にします。次に[B]のラスター設定ボタンを押し、[ラスター詳細設定]ダイアログを出し、出力設定を「レイヤー設定に従う」にします。
これでOKです!
しかしこの「モノクロ2階調」で書き出す事には1つだけ、グレーで塗った部分とトーンの部分の混在原稿が出力できないという問題点があります。混在原稿は、グレースケールで書き出すことになります。
2.グレースケールで書き出す
グレースケールで書き出す時は、少し注意しなければならない事があります。
下の[A]という画像を例にしてご説明していきたいと思います。
[A]はComicStudio上での画像です。画像の右側も左側のトーンにもグレーの部分があります。
(このグレー部分はアンチエイリアスといって、画像を滑らかに見せるためにぼやっとした濃淡を作る技術です)
このまま何の設定もせずにグレースケールで書き出し、印刷に出してしまうとトーン部分にモアレが出てしまう可能性があります・・・
どうしてモアレが出来てしまうのか?
モノクロ印刷というものは名前の通り白か黒かの世界で、グレーという存在がありません。
印刷をする前にアンチエイリアス・・・グレーの部分を白か黒かハッキリさせる作業を、私たちか印刷屋さん、もしくは印刷機の方でやらなくてはなりません。
[A]をモノクロ2階調で書き出してみました。
トーンにはグレー部分が無く、右側部分も完全に白黒化され、印刷に適した状態になっています。
[A]を他の画像ソフトで、線数300の網点2階調化してみました。
([A]をそのまま印刷した場合も、多分結果はこんな感じになるかと思います)
右側の部分は上の図とあまり変わらない様子で変換されましたが、トーン部分は酷くゴツゴツしてしまったのが解ります。このゴツゴツが、トーンの種類によってモアレを引き起こす原因になります。
同じ2階調化なのになぜ、ComicStudioから書き出したトーンはゴツゴツしなかったのか?
ComicStudioには、トーンを綺麗に出力する特別な技術が使われているのです!
元の画像を考えると、ComicStudioでのトーン2階調化がかなり特殊なんだなーと思われます。
しかしこれが、トーンを綺麗に出すための高度な変換テクニック!・・・らしいです。凄い秘密技術のようです。でもたまに形が揃っていない時があるので、「これはどうなのでしょう?」とお尋ねしたところ、それはそれでトーンジャンプを防ぐための処理=トーンを綺麗に出力するための処理をコッソリしているのだそうで、問題ないそうです。
以上を踏まえて、「トーンはクッキリ綺麗に、その他の部分はグレーで出力したい!」という特殊な場合、以下のように設定します。
(1)[ファイル]メニューから[書き出し]→[画像ファイル]を選択します。
(2)「画像のエクスポート」ダイアログが現れるので、[C]の色深度を「グレースケール」にします。
次に[D]のトーン設定ボタンを押して[トーン詳細設定]ダイアログを出し、出力設定を「すべてモノクロの網点で出力」にします。
はい、トーンはクッキリ綺麗に、その他のグレーの部分はグレーのまま出力されました!
この状態で印刷に出すと、グレーの部分は印刷機によってかなり細かい網点へと変換されます。
(網点の細かさは印刷機によって違うようなので詳しくは印刷屋さんにお尋ね下さい)
グレーの上にトーン、トーンレイヤーの不透明度変更は危険!?
グレーの上にトーンを配置すると、印刷時グレーの部分がトーン化され、お互いが干渉しモアレの原因になります。
網点トーンなどレイヤーの不透明度を変更すると、印刷時トーンの網点をトーン化するためモアレの原因になります。
■トーンを綺麗に出力するために
トーンレイヤーには貼り替えの容易さ、貼り付け範囲のカラー表示など、今までご紹介してきた様々な特性がありましたが、ファイルを書き出す際にもなるべくモアレを出さないよう、綺麗に変換してくれる特性もあるそうです!
トーンレイヤーをラスタライズしてしまうと、この恩恵が無くなってしまうんだとか・・・。
デジタル原稿は基本「原寸で作る/B5サイズの本の原稿はB5サイズで作る」という暗黙の了解みたいなものがあります。
B5のデジタル原稿をA5サイズに縮小した場合、問答無用でモアレが出てしまうからです。
この辺がアナログとは違うところですね。
しかしComicStudioで、下記の設定(B5→A5縮小)で出力してみたところ、
綺麗に縮小されました。
あ、ComicStudioって凄い!と思った瞬間でした(笑)。
(1)はComicStudioから、[等倍]で出力したもの。
(2)はComicStudioから、[元データからの拡大率→81.0%]で出力したもの。
(3)はComicStudioから等倍で出力し、その後他の画像ソフトで81%に縮小したもの。
図を見ると、(2)は縮小しているのにトーンが全然変化していません。つまり、トーンレイヤー以外のものはそのまま縮小したけれど、トーンレイヤーには縮小をかけなかった、ということになります。[トーン詳細設定]→[線数設定]の項目にある「レイヤー設定に従う」というのは、元々のトーンの線数を保つという意味のようです。ふむふむ。
原稿を作ってから縮小するという場面はほぼ無いとは思いますが、いざという時には役に立つかもしれないですね。
とにかくComicStudioで原稿を作っておけば、途中で仕様の変更(仕上がりサイズの変更)があっても対応できそうですよー!
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