パターンブラシの限界に挑戦~雲を描く その1~
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パターンブラシの限界に挑戦~雲を描く その1~
※ComicStudioのバージョン:ComicStudioVer.4.6.2
前回までで地面部分の描画は完成しました。今回からはパターンブラシを使い、空に浮かぶ雲の描画にチャレンジしてみましょう。
積雲用のブラシを作成する
ひとことで「雲」と言っても、その形は様々です。しかし一般的に「雲」と言った場合、空に点々と浮かぶ「積雲」を想像する人が多いのではないでしょうか。
今回はまず、この積雲を描いてみることにします。
写真:積雲の例
(1)ブラシ形状の作成と登録
まずはレイヤーを新規作成します。[レイヤー]パレットの「新規レイヤー作成アイコン」(円内)をクリックし[表現色]を「グレー(8bit)」にします。また[減色手法]は「減色しない」にしておきましょう。レイヤー名は「雲ブラシ」としました。
[ツール]パレットからパターンブラシ(円内)を選び、[ツールオプション]パレットから「もや」を選びます。
内側は濃く、外側は少し薄くなるように楕円を描いていきます。
[レイヤープロパティ]パレットの[減色手法]を「トーン化」にします。
すると、[プロパティ]パレットに[トーン]タブが現れるため、そこをクリックします。
[種類]の部分から「ノイズ」を選びOKボタンをクリックしましょう。砂目のような質感が得られるはずです。
ただしこの時点ではまだそう見えているだけで、実際はグレーのままです。
[レイヤー]パレットの「雲ブラシ」レイヤー上を右クリック(1)。「レイヤーの変換」を選びます(2)。オプションは特に変更することなく「OK」を押しましょう。こうすることでようやく雲ブラシの先端が完成しました。
上部[編集]メニューから→[パターンを登録]→[ブラシ素材]を選びましょう。名前は「雲ブラシ」としました。
この時点でのブラシはこのようになっています。引き続きツールオプションを変更し、雲の描画に向いたブラシにしていきましょう。
(2)各種パラメーターの変更
[ツールオプション]パレットの[メニュー表示]アイコン(円内)をクリックし「設定情報を変更」を選びます。[スタイル]を「エアブラシ」にしましょう。
[サイズ]の左横の赤丸(円内)をクリックし、その後現れたパレットで以下のように変更します。
[コントロールの選択]を「ペンの筆圧」。[サイズ]は「20.00mm」。[最小]は「30%」としました。これで筆圧により大きさが変わるようになります。
[向き]タブをクリックし[コントロールの選択]を「ランダム」とします。[範囲]は「15.0°」。こうすることで方向が一定にならず、毎回微妙に傾きながら描画されるようになりました。
[散布]タブをクリックします。[コントロールの選択]は「ペンの筆圧」として[散布]を「40.00mm」に。[最小]は「0%」です。これにより、筆圧の強弱で散布の範囲が変わるようになります。
最後に[密度]タブをクリックします。ここでも[コントロールの選択]は「ペンの筆圧」。[密度]は「8」とします。強く描くと密度が上がる設定になりました。
これで雲ブラシは完成です。
(3)雲ブラシによる描画
試しに描いてみましょう。[素材]パレットから適当なトーンを書類上にドラッグします。今回は「60L 10%」のトーンを使用しました。
トーンレイヤー上で透明色を選びます。先ほどの「雲ブラシ」を選択し描画するとその部分が消えます。もし消えすぎてしまっても黒色を選んで描画すれば再びトーンが現れるので安心です。
形を整え、雲が完成しました。
より雲らしくみせるためのコツを解説します。
今回作成したブラシを使って、ただ楕円を描いたとしても今ひとつ雲らしく見えません。積雲らしく見せるためには比較的下側を平らに。上側を丸く描いてあげる必要があります。雲は重力と気流の関係で、このような形になることが多いのです。
ただし全てそうすればいいわけではありません。雲は地平線に近ければ近いほど下側が平らに見えますし、全体に細くなります。逆に、地平線から遠ざかるほど丸みが増して見えます。
雲を描くときは「地平線から遠いか近いか」を考えてあげると良いでしょう。
(4)設定を変更し積乱雲用のブラシを作成
ブラシの設定を変えて、他の形の雲の描画にもチャレンジしてみましょう。まずは「積乱雲」。いわゆる入道雲です。
まずは先ほど作成した雲ブラシを複製しましょう。[ツールオプション]パレットの[メニュー表示]アイコン(円内)をクリックし「新規設定」を選びます。ウィンドウが表示されるので、名前を「積乱雲」としました。
[ツールオプション]を下記のように変更します。ブラシの形状を円形に近くし、散布の範囲を狭めました。
(5)積乱雲ブラシによる描画
三角形を基本に形を描いていきます。
必要に応じて影も加えていきます。まずはおおざっぱに影を加え、その後に[パターンブラシ]ツールの「エアブラシ(トーン削り用)」等を使って微妙に削っていきます。これで完成です。
(6)巻積雲ブラシの作成と描画
次に巻積雲。いわゆる「うろこ雲」の描画にもチャレンジしてみましょう。「積乱雲」と同様にブラシを複製し「巻積雲」というブラシを作りました。
主に変更した点は「散布」の範囲です。こうすることで小さな雲が広い範囲に複数描画されるようになります。
(7)トーンを二枚貼り雲に奥行きを与える
さらにトーンを二枚貼りして、高い位置の雲と低い位置の雲を表現しましょう。
先ほど作成した巻積雲の上にもう一枚同じ「60L 10%」のトーンを貼り込みます。
その後[トーンプロパティ]パレット上の「トーン柄を移動」アイコンをクリックし、トーンの柄をずらします。こうすることでトーンの二枚貼りが再現出来ます。
巻積雲よりも低い位置にある積雲を描きます。様々な描き方がありますが、今回はわかりやすいように「マスキングレイヤー」を使うことにします。
[新規レイヤー作成]アイコンをクリックして[種類]を「マスキングレイヤー」にします。レイヤー名は「積雲」としました。
[パターンブラシ]ツールの「雲ブラシ」で積雲を描いていきます。マスキングレイヤー上ではマスクされる部分が赤で描画されるためわかりやすいです。
完成です。奥側には巻積雲、手前には積雲が浮かんでいるように見えると思います。
(8)風を表現する曲線を描画
場合によっては、風を表現する曲線などを入れてあげても良いでしょう。今回は放射曲線定規を使って風の流れを入れてみます。上記の積雲同様、見た目にわかりやすくするためにここでもマスキングレイヤーを使用します。レイヤー名は「風」としました。
上部「定規」メニューから→「特殊定規の作成」→「放射曲線定規」を選びます。
[ツール]から「定規選択」ツールを選び、移動します。風上と風下を考えると良いでしょう。
ペンツールを使い、風の流れを描き入れていきます。この際使うペンはなるべく細くし、「入り」と「抜き」にチェックを入れてあげるとうまく流れが表現出来ると思います。
(9)地平線に近くなるにつれて薄くなる空の色を表現
一般に空は、地平線に近づくにつれ色が薄くなります。トーン削り用のブラシで削ってあげても良いですが、よりなめらかに薄くさせるために、専用のレイヤーを作りましょう。「新規レイヤー作成」アイコンをクリックし表現色を「グレー」にします。その後、トーンの[プロパティ]を以下のように変更します。
[ツール]から「グラデーション」ツールを選び、[ツールオプション]パレットから「編集中のレイヤーの描画する」を選びます。また、[繰り返しタイプ]は「繰り返さない」を選びましょう。
キーボードの[Shift]キーを押しっぱなしにして方向を制御します。下から上に向かってドラッグすると白いノイズのグラデーションが描画出来ます。
完成です。使いようによってはパターンブラシだけでかなり表現力の高い絵が描画可能であることがわかっていただけたかと思います。
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