提供者 : セルシス    更新日 : 2015/06/27    作家 : 武田みか(たけだみか)
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キャラの彩色

1.色の重ねかた

今までは、全体の統一感を意識したやわらかい色味の彩色でしたが、ここからは各パーツにマッチした塗り方を選んでいきます。

彩色するパーツごとに、ツールを選んで塗っていきます。たとえば、服(やわらかい布地)は[鉛筆]ツールの[色鉛筆]、つるつるしたマグカップ(陶器)は[水彩]ツールの[不透明水彩]……といった感じです。ツールを変えることで、質感の違いがはっきりと出せます。やわらかい部分はそっと軽い筆圧で塗るなど、手の動きも意識するとベストです。

パーツは、それぞれクリッピングフォルダ化しておきましょう。塗るレイヤーの上で右クリックし、メニューから[クリッピングフォルダ化]を選択します。透明部分を保護しながら彩色をすることができます。

色の重ね方は、

・暗い部分(シャドウ)→レイヤーを合成モード[乗算]で重ねる。
・明るい部分(ハイライト)→レイヤーを暗い部分より上に置いて合成モード[通常]で重ねる。

という感じにします。使う色は、下地の色との相性を考えて選びます。髪の毛の彩色を例に解説します。

2.髪と顔の彩色

髪の毛は、次のように塗っていきます。

■暗い部分(シャドウ)
やや落ち着いた「紫色」を重ねます。熱くも冷たくもなりすぎないように、赤と青の中間色を加えることで、やわらかな印象のシャドウが生まれます。明るい色を重ねてしまうと、彩度が高く軽い印象になり、影の深みが出せません。

■明るい部分(ハイライト)
「黄色」を[水彩]ツールの[不透明水彩]で入れていきます。「黄色」は、下塗りのときに全体に塗った色で、絵の基本となる色です。この色を使って光を入れることで、ふわりとしたやわらかい色を表現できます。また、髪の毛はみずみずしさを表現したかったため、[水彩]ツールを使いました。

光と影

同様の手順で、肌も塗っていきます。肌は[スポイト]ツールで、色を拾いながら彩色します。「髪の毛」と「服」をつなぐ色なので、どちらと隣接しても違和感のない濃さにします。

スポイトで

瞳を塗ります。白で上部に明るいハイライトを入れ、瞳の下部もやや明るい色にします。

瞳

 

3.そのほかのパーツの彩色

同様に、服やテーブルなども塗っていきます。重ね塗りをしていて、少しコントラストが強いかな?と思ったら、塗ったレイヤーの不透明度を下げてみるといいでしょう。100%で重ねずに、60%程度の不透明度で重ねることで、やわらかい印象になります。一例として、服の明るい部分の不透明度を変えてみました。

透明度変更

全体の色味を確認しつつ、イメージに合わないと思ったら色調補正系のフィルタを使い、その都度補正を行うようにします。手描きの感覚で、その場その場のフィーリングでどんどん変えてしまいましょう。

はじめの意識にとらわれすぎないように、自身の感性を信じて、思い切りよく進めていきます。勢いを持って作画をすることで、いきいきとした絵に仕上がります。また、一度にすべてのパーツを仕上げるのではなく、全体のバランスを見ながら、各パーツを徐々に仕上げていくようにしましょう。

4.テーブルの彩色

キャラの彩色が終わったら、手前のテーブルクロスを描きます。本来なら背景となるパーツですが、キャラとの位置関係上、先に描いてしまいます。チェックの模様を描くために、背景のペン入れで使用した定規レイヤーを表示します。

定規レイヤー

[定規]メニューの[スナップ]にチェックを入れ、パースに沿ってラインを引きます。

定規、スナップ、パース

キャラの後ろの背景と、テーブル上の小物を残して、ひととおり塗り終わりました。

背景塗り終わり

 

背景と小物の彩色

1.背景を塗る前に

残りの部分の彩色に取りかかります。

まずは背景。キャラより目立たせず、煩雑にならないように配慮します。色の明度や彩度も、キャラに比べて低くします。今回の場合、絵の一番の主役は女の子ですので、背景がキャラよりも目立ってはいけません。背景にフィルタをかけて落ち着いた雰囲気にしたり、逆にキャラのコントラストを強くして背景よりも目立たせるなどの調整方法もあります。また、キャラと比べてあえてタッチをラフにすることで、キャラと背景の差を出して、見やすくする方法があります。

今回は、「影(シャドウ)」レイヤーを作成し、合成モードを[乗算]にして塗り重ねるだけのシンプルな彩色にします。キャラのパーツ分けをした時と同様に、選択範囲を作成して、下塗りレイヤーを[コピー]、[貼り付け]し、塗る準備をします。

2.背景の彩色

パーツ分けをしたときに作成したキャラ部分の[選択範囲レイヤー]を利用します。[選択]メニュー→[選択範囲レイヤー]→[選択範囲に変換]を選び、その後、[選択]メニューの[選択範囲の反転]を選びます。キャラ以外の背景部分が選択できたら、「下塗り」レイヤーを選び、[編集]メニューの[コピー]、[貼り付け]と連続して実行します。

選択範囲レイヤー

背景の部分だけのレイヤーができました。レイヤーをクリッピングフォルダ化し、背景にシャドウを入れていきます。

透明部分作成

背景を塗り終わると、下図のようになります。

背景合成

背景をもう少しキャラに合う色味に調整したいと思います。[フィルタ]メニュー→[色相・彩度・明度]で調整をします。

調整

 

だいぶ色味を変えてみました。明度は高くしましたが、あくまでキャラの色合いより目立たないものを選んでいます。

色味変更後

色味が整ったら、さらに細かい質感を加えていきます。先に説明した通り、細かい質感を描き込むレイヤーの不透明度を100%で重ねてしまうと、印象が強くなってしまうので、60%程度に調整します。

窓枠ハイライト

窓枠のところにハイライトを入れて、背景は完了です。

 

食べ物の彩色

最後に、テーブルの上の小物、パンケーキを塗ります。

食べ物を描くときは、実物を見る、もしくは(それができない場合は)写真を見ながら絵を描くと良いでしょう。「おいしそう」「大好き」という描き手の気持ちを絵の中に込めることで、受け手にその魅力がより強く伝わります。私の場合は、雑誌の記事や広告の写真をみて「描きたいな」という気持ちが生まれることが多いです。食べ物に限らずですが、そうした直感をなるべく早めに(気持ちの鮮度が落ちないうちに)表現することで、生き生きした作品に仕上げられます。

食べ物

形を意識して、彩色をしていきます。だいたい塗り終わったら、新規レイヤーを作成し、焼き色などをのせます。

焼き加減

次回は、絵を仕上げる工程を紹介します。次回で完成です!

作者プロフィール:武田みか(たけだみか)  (サイトURL:http://www2.ocn.ne.jp/~silph/

漫画家/イラストレーター。代表作にコミック『ゆるりずむ』(メディアファクトリー)、PC用ゲーム『フォーチュンサモナーズ~アルチェの精霊石~Deluxe』(ジャングル/リズソフト)キャラクターイラスト担当など。黄・オレンジなどの暖色をメインとした、やわらかな作風が特徴。また食べ物を描くことも好きで、今回は目玉焼にも愛を注いだとのこと。

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