2.ラフイメージの作成
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ラフを描く主な目的は構図を決めることです。そのため、キャンバス全体を画面からはみ出さないように表示させて、全体の構図を常に確認しながら描きます。
表示倍率100%で全体を表示できない大きなキャンバスの場合、ズームアウトして全体を表示させると細い線がつぶれて見えにくくなりますし、作業に夢中になって必要以上にズームインして細かく描きこみ、時間を浪費してしまうこともあります。
そのため、表示倍率100%でも、画面内に収まる小さいサイズのキャンバスを作成します。
1.ラフ用キャンバスの作成
まず、[ファイル]メニュー→[新規作成]を実行し、キャンバスのサイズを設定します。
今回は完成作品のサイズをB5、解像度を350dpiにしたいので、[規定のサイズ]から[B5(350dpi)]選択しますが、ラフ用に[基準解像度]を[350dpi]から[72dpi]に変更してピクセル数を減らしました。こうすると、解像度を上げるだけで元のサイズへ戻せます。
画像の向きで[横]を選択してから[OK]をクリックします。
2.線でラフを描く
今回のイラストのコンセプトは『日常の中に見つけた非日常』で、実在する場所(下の写真)を元にした風景イラストを描きます。
写真は画像ビューアなどで表示させておいて、見比べながら描きます。
夏の終わり頃、雨上がりで階段の踊り場にある水たまりが青空を映し出している…というイメージが浮かんだので、そのイメージを前面に押し出すように構図をアレンジします。
キャンバス作成時に自動的に用意されているレイヤー(ラスターレイヤー)を「線」という名前に変更して、[鉛筆]ツールのツールセット[シャーペン]で線を引きます。
(1)まずは、写真を見ながら写すようにだいたいの構図を取ります。
(2)その後、アレンジを加えながら修正し、さらに描き進めます。
①参考写真は、レンズによる歪みと撮影角度の傾きが大きすぎたので、それをキャンバス上で補正しながら線を引きます。
②階段と踊り場(階段から続いている、平らな部分)の幅は実際よりも大きめにとり、水たまりを描き入れるスペースを確保します。
③一番手前にある車止め(車の進入を防ぐためのもの)は、存在感を強調させたいので右側がはみ出さないように幅を縮めて描きます。また、階段と同じ角度に揃えて画面に統一感がでるようにします。
④この風景はコンクリートや民家などの無機物が中心なので、画面が面白みに欠けるところがあります。背景ではなく1枚の風景イラストとして成り立つようにしたいので、もうひとつの主役として車止めの上にスズメを配置しました。
⑤絵をパッと見たとき、まず水たまりに目が行き、次にスズメ、その次は遠景に目が行くように視線を誘導したいので、右上に電線を追加して流れを作ります。
⑥遠景はこの段階で細かく描いてしまうと画面が見づらくなってしまうので、大まかに民家の配置を決めるだけにします。
3.ラフの彩色
構図と同時に色合いも考えておいた方が、後で悩まなくて済むので、簡単に彩色してみます。
[レイヤー]メニュー→[新規ラスターレイヤー]を実行し、作成されたレイヤーの名前を「塗り」に変更します。
ラフの線を消さずに色が塗れるように、「線」レイヤーの下に「塗り」レイヤーを配置します。
オリジナル[カスタム平筆]を使用して大まかに塗ります。
水たまりの青空が目立つように、他の部分は彩度の低い色が中心のくすんだ色調に設定しました。
遠景は遠くにあるものほど空気の色に溶け込み、コントラストが弱くなることを意識します。
さらにイメージを深めるために、オリジナルの[軟らかいエアブラシ]を使用して、仕上げと同じように光の効果を加えてみます。
上の画像では、合成モードを[スクリーン]にしたレイヤーを使って、画面の上部に水色、下部にピンクを重ねています。
そして、[加算(発光)]レイヤーに薄い黄色を塗って重ね、住宅の屋根を光らせています。
レイヤーの合成モードと光の効果の付け方については、仕上げの工程で詳しく解説します。
これでラフは完成です。
4.下描き前の準備
管理しやすいように、仮塗りに使用したレイヤーを結合して、レイヤー数を減らします。
■複数のレイヤーをまとめて結合する方法
(1)結合したい中で一番上にあるレイヤーを選択します。
[Shift]キーを押しながら、結合したい中で一番下にあるレイヤーを選択します。そうすると間にあるレイヤーも一緒に選択されるので、[レイヤー]メニュー→[選択中のレイヤーを結合]を実行します。
※次の下描きの工程で、線だけを表示させて参照するため、ラフの「線」レイヤーは結合しないでおきます。
(2)[選択中のレイヤーを結合]を実行するとダイアログが表示されます。レイヤー名を「塗り」と入力し、[元のレイヤーを残す]のチェックを外してから[OK]をクリックします。
(3)彩色レイヤーが1枚のレイヤーに結合されました。
(4)さらに、「線」と「塗り」のレイヤーを両方選択してから[レイヤー]メニュー→[レイヤーのフォルダ化]を実行し、ひとつのフォルダにまとめて格納します。レイヤーフォルダ名は「ラフ」という名前を付けて、次の工程と識別しやすいようにしておきます。
最後に、下描きはラフと違って細部を描写する必要があるため、キャンバスの解像度を予定していた350dpiに戻しておきます。
[編集]メニュー→[キャンバス解像度の変更]を実行し、[ピクセル数を固定する]のチェックを外してから、[基準解像度]のリストにある「350dpi」を選択して[OK]をクリックします。
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