参照レイヤーを使いこなす
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[1]参照レイヤーとは
[参照レイヤー]とは、特定のレイヤーを[参照レイヤー]に設定することで、編集するレイヤーを切り替えても設定したレイヤーを参照して描画できる機能です。
例えば、クリンナップされた線画を[参照レイヤー]に設定して、別のレイヤーで着色を行うなど、いろいろな場面で作業が進めやすくなります。 [参照レイヤー]が使用できるツールは、次の8種類です。使用する際には、[ツールオプション]の[複数参照]の項目を[参照レイヤーを参照]に設定します。
・[塗りつぶし]ツール
・[閉領域フィル]ツール
・[マジックワンド]ツール
・[矩形選択]ツール
・[投げなわ選択]ツール
・[折れ線選択]ツール
・[エアブラシ]ツール
・[等高線塗り]ツール
■[マジックワンド]ツールの場合
「青」レイヤーと「赤」レイヤーを作成し、それぞれのレイヤーに、レイヤー名の色で四角形を描きます。[マジックワンド]ツールを「赤」レイヤー上で使用する時、「青」レイヤーを[参照レイヤー]に設定した場合では、赤青両方の四角形を参照した選択範囲が取得されます。
[2]参照レイヤーの設定方法
1.参照レイヤーの設定
[参照レイヤー]は、描画系レイヤーの[ラスターレイヤー]や[ベクターレイヤー]に設定することができます。まず、[参照レイヤー]にしたいレイヤーを選択し、レイヤーパレット上で右クリックします。表示されるメニューから[参照レイヤーに設定]を選択します。
設定されたレイヤーのアイコンが[参照レイヤー]アイコンに変わります。[参照レイヤー]に指定しても、キャンバスに描かれた内容に変化はありません。[参照レイヤー]に設定したまま、描き込みなどの作業を行うことも可能です。
2.複数のレイヤーを参照レイヤーにする
複数のレイヤーを[参照レイヤー]に設定することもできます。レイヤーを複数選択した状態で、右クリックしてメニューを表示し、[参照レイヤーに設定]を選択します。
レイヤーフォルダも同様に、[参照レイヤー]に設定することができます。
3.参照レイヤーの解除
[参照レイヤー]を解除する場合は、設定する時と同じように[参照レイヤー]を解除するレイヤーを選択し、右クリックメニューを表示して、[参照レイヤーに設定]を選択します。
[参照レイヤー]を他のレイヤーに切り替える場合は、新しく設定したいレイヤーを選択し、右クリックメニューから[参照レイヤーに設定]を選択し ます。[参照レイヤー]に設定されていたレイヤーは通常のレイヤーに戻り、新しく設定したレイヤーが[参照レイヤー]に切り替わります。
[3]参照レイヤーの使い方
[参照レイヤー]の使用例を紹介します。クリンナップされた線画を[参照レイヤー]に設定し、彩色を行います。
主線を描いたレイヤーの名前を「ペン入れ」レイヤーとします。着色用の新規[ラスターレイヤー]を作成し、それぞれ「服彩色」「髪彩色」「肌彩色」とパーツ別にレイヤー名をつけます。まずは、髪の毛の色を[塗りつぶし]ツールで塗ってみましょう。
「ペン入れ」レイヤーを[参照レイヤー]に設定します。「ペン入れ」レイヤーを選択して、右クリックメニューを表示し、[参照レイヤーに設定]を選択します。「ペン入れ」レイヤーのアイコンが[参照レイヤー]のアイコンに変わります。
[塗りつぶし]ツールを選択し、[ツールオプション]の[複数参照]の項目を[参照レイヤーを参照]に設定します。
「髪彩色」レイヤーを選択し、[塗りつぶし]ツールで着色します。髪の毛の線画の内側をクリックすると、髪の毛の色が塗りつぶされます。本来、「髪彩色」 レイヤーは、何も描かれていないレイヤーですが、「ペン入れ」レイヤーを参照することで、描かれている髪の内側をキレイに塗りがつぶすことができます。
描画するレイヤーがどのような状態であっても、[参照レイヤー]を元にして作業ができるのが大きなメリットです。例えば、線画からはみ出した状態で下のように色が塗られていても、[参照レイヤー]を使うことで、綺麗に塗り分けることができます。
[4]アニメ塗りでの活用
色塗りの中でもいわゆる「アニメ塗り」と呼ばれる方法では、単色でベースを塗って、影色を塗り重ねるような手法がよく用いられます。
このように塗る場合、まずベースとなる色を単色で塗りつぶし、[エアブラシ]ツールや[水彩]ツールで影色を描き込んでいく方法が一般的です。下塗りした レイヤーを[透明部分をロック]に設定して影色を塗る、色域を範囲指定して塗る、クリッピングフォルダを使うなど、さまざまな方法があります。
例えば、[参照レイヤー]を利用した場合、実際のアニメのように色トレス線を使い、簡単に影を塗ることができます。「色トレス線」とは、アニメーションの制作方法の一つで、あらかじめ境界線を描いてから影を塗る方法のことです。
線画を描くレイヤーとは別に「色トレス線」用のレイヤーを用意し、影色との境界線を描いておきます。「色トレス線」は、後で[参照レイヤー]として使いやすいように、青や赤を使って、境界線がわかりやすいようにしておきます。
下描きの段階で、影色を塗る部分に斜線などの描き込みを行っておくと、色トレス線を描く作業や、全体のバランスを見るのに分かりやすくなります。
色トレス用の線画を描いた後、彩色用のレイヤーを作成します。主線が描き込まれているレイヤーのみを[参照レイヤー]に設定して、ベースとなる色を単色で塗ります。この段階では、色トレス線を描いたレイヤーは参照しないで塗り進めます。
次に、影色を塗りつぶします。主線が描かれているレイヤーと「色トレス」が描かれているレイヤーの両方を選択し、右クリックして表示されるメニューから、[参照レイヤーに設定]を選択します。2枚とも同時に[参照レイヤー]に設定します。
各パーツごとの色塗り用レイヤーを選択しながら、[塗りつぶし]ツールで影色を流し込みます。
「色トレス線」を描いたレイヤーを非表示にします。影色がキレイに入り、アニメ塗りができました。
[5]等高線塗りでの活用
[等高線塗り]ツールでも[参照レイヤー]を活用できます。線画のレイヤーとは別に、着色用のレイヤーを用意し、[等高線塗り]ツールで塗れるように色線を描き込みます。
「ペン入れ」レイヤーを[参照レイヤー]に設定し、[等高線塗り]ツールを選択します。[ツールオプション]で[複数参照]の項目を[参照レイヤーを参照]に指定します。
等高線用に線を描いたレイヤーを選択して、[等高線塗り]ツールで線と線の間を着色します。「ペン入れ」レイヤーが参照され、最小限の線や工程で影を含めた着色することができます。
[6]レイヤーを増やさずに色塗りを行う
[参照レイヤー]をうまく使うことで、下塗りを1枚のレイヤーで済ませることができます。クリンナップされた線画レイヤーを[参照レイヤー]に設定しま す。下塗りしたいレイヤーを新規作成し、[塗りつぶし]ツールで着色します。線画を参照し、何も描かれていないレイヤーでも、色面を分けて下塗りすること ができます。
■[編集レイヤーを参照しない]設定
下塗りをする場合、[塗りつぶし]ツールで塗り残しができた毛先などの細かい部分を、[閉領域フィル]や[ペン]ツールで後から塗りつぶすことがありま す。塗り残しをあらかじめ防ぐために、はみ出しながら塗り、[参照レイヤー]を使うことで簡単にキレイに仕上げる方法を紹介します。
(1)使用するツールを選択したら、[ツールオプション]の[編集レイヤーを参照しない]にチェックを入れます。[参照]レイヤーのみを参照するようになり、着色する「色塗り」レイヤーに描かれた部分を無視して塗りつぶしたりや範囲選択を指定したりすることができます。
(2)塗り残しが発生するような細かい部分を、あらかじめ[エアブラシ]ツールなどではみ出すように塗りつぶします。ここでは、髪の毛の先や服の細かなシ ワを、サイズを大きく設定したエアブラシで塗っています。同じ「色塗り」レイヤー上で、今度は[塗りつぶし]ツールを使って肌の色を塗ります。編集中のレ イヤーを参照しないため、はみ出した部分もキレイに塗りつぶしてくれます。
(3)外側にはみ出した部分も、[マジックワンド]ツールを選択し、[編集レイヤーを参照しない]設定を行って、主線の外側を選択します。すると、はみ出 した部分を無視して、主線に沿って選択することができます。[Delete]キーやランチャーの[クリア]を選択すると、はみ出した部分を消すことができ ます。
[参照レイヤー]は、場面に応じて様々な利用方法があります。自分なりの[参照レイヤー]活用法を見つけることで、イラスト作成の効率を上げることができます。
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