ツールオプションを使いこなす
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IllustStudioを使用した作画では、[ツールオプション]をいかに使いこなすかが大きなポイントのひとつになります。
[1]描画系ツールオプション共通の設定
[ペン]・[鉛筆]・[エアブラシ]・[水彩]・[パターンブラシ]ツールなどの[ツールオプション]で設定する内容は、描き味を左右する大切なものです。ツールを使いこなすためにこれらの基本的な設定を理解しておきましょう。
今回は[鉛筆]ツールを例に[基本]、[効果]、[補正]、[拡張]グループの主要な設定項目を紹介します。
[ツールオプション]では、初期状態でいくつかのパラメータが非表示状態に設定されています。
一時的に全ての設定項目を表示するには[すべてのパラメータを表示する]をクリックします。
■基本
[サイズ]……描画サイズを設定します。スライダーや数値の入力で、設定を変更できます。左横の[影響元]ボタンで、描画サイズに影響するタブレットなどの設定を選択できます。
[表示サイズを影響する]……キャンバスの表示倍率にあわせてサイズが変化します。(ディスプレイ上での見た目のサイズは常に一定になります。)
[不透明度]……ブラシの不透明度を設定します。スライダーや数値の入力で、値を変更できます。[ペン]ツール以外では[不透明度]に[影響元]を設定できます。筆圧に応じて濃淡に変化をつける、等の設定にもできます。
[硬さ]……[硬さ]は線のエッジの調整をします。数値100ではエッジがくっきりと、数値1では、ぼかしたタッチになります。 ただし、[ブラシ形状]が定型の「円」の場合のみ設定できる項目です。
[ブラシ形状]……描画するブラシのパターンを設定します。[鉛筆]や[パターンブラシ]、[水彩] ツールでは、円や多角形などの定型以外にも、様々なブラシパターンを設定できます。自作のパターンも設定できるので、パターン次第で様々なブラシに変化し ます。設定によっては、複数種類のパターンを連続して描画することもできます。
[厚み]……ブラシ形状の厚みを設定できます。円などの、定型以外のパターンでも、厚みを変化させられます。
[向き]……ペンの向きを設定できます。[影響元]を変えると、設定した項目にあわせて、ペンの向きが変化します。
なお、[向き]に影響元を設定すると向きが変化する[範囲]と[刻み]を設定できます。
常にストロークの方向に合わせてパターンの向きが変化する設定や、ランダムで向きが変わる設定など、ブラシの用途に合わせて様々な設定ができます。
[間隔]……[間隔]はブラシの形状をどれくらいの間隔で描画するかを調整します。[広い(高速)]・[普通]・[狭い(低速)]・[固定]から選択することができます。[広い(高速)]・[普通]・[狭い(低速)]はそれぞれ自動でブラシの描画間隔が調節されます。
[間隔]が[固定]の場合、[固定]の数値が小さければ、連続したストロークになり、数値が大きくなるほど描画する形状(点)の間隔が広くなります。スタ ンプのように、わざと間隔をあける設定にもできます。また、[影響元]を[ストロークの速度]や[ランダム]に設定することができます。
■効果
アンチエイリアスや、質感(テクスチャ)の設定に関するカテゴリです。
[合成モード]……ブラシ描画時の合成モードを選択できます。すでに描画されている色に対して現在の描画色をどのように合成するか、の設定です。各合成モードの効果はレイヤーの合成モードと同じです。
レイヤーの合成モードとの違いは、同一レイヤーのみ影響があるという点です。(ブラシを「乗算」モードにしても、レイヤーが「通常」モードであれば、下のレイヤーに塗られた色に対しては「通常」モードで合成されます。)
また、選択した描画色と実際に描画される色に色味の変化があるのはもちろん、[焼き込み]や[オーバーレイ]など合成モードの種類によっては透明部分には色が塗れない設定もあります。
[質感の種類]……ブラシ形状とは別に、ブラシに「キャンバス」や「画用紙」といった用紙の質感を加え ることができます。リスト内の[パターン読み込み]を選択すると、[素材]パレット内のパターントーンを質感に設定できます。もちろん自作のパターントー ンも設定できるため、表現の幅はさらに広がります。
[質感の種類]を設定したら、[解像度]で合成される質感の細かさ、[効果の強さ]で質感がどれだけ強く合成されるかを設定します。
■補正
[手ブレ補正]・[後補正]……描画ツールのストロークを補正するものです。手書きのストロークの際に生じる手ブレを修正したり、曲線をなめらかに補正します。[手ブレ補正]はスタイラスペンがタブレットに触れた瞬間に、[後補正]は描画が行われた直後にかけられる補正です。
[前補正]は最大に設定しても極端に線を補正することはありませんが、[後補正]は設定の数値によっては、下図のようにギザギザに震えている線でも、極端なくらい滑らかに補正をかけることも可能です。
[速度による手ブレ補正(後補正)]オプションは、ストロークがゆっくりになるほど補正を弱め、速くなるほど補正が強くなる設定です。細かな部分の描画はじっくり描き込むので、補正をかけずに描画したいという場合などに有効なオプションです。
[表示サイズを後補正に影響させる]……このオプションは、モニターでの見た目上のストロークの大きさ に対して線の補正具合を統一する設定です。画像サイズに関係なく、大きなストロークに対して、なめらかな線に補正します。そのため、細かい部分を描くとき でも拡大表示して、なめらかな補正をかけた状態で描くことができます。
下図は、同じピクセルサイズの画像を、モニター上で50%(実寸の半分)で表示した場合と、300%(実寸の3倍)で表示した場合の例です。50% では、キャンバス上での表示サイズが小さいため、ストロークが小さくなり、狭いストロークで描かれたラインは、極端に補正がかかります。300%の場合で は、ストロークが大きいため、大きく描いたラインは適度な補正を受け、なめらかに描けます。
[入り抜き]……ペンのタッチに関わらず、線の引きはじめ<入り>と引き終わり<抜き>の線に先を細らせるタッチを付加します。それぞれ[入り][抜き]の項目で強さを設定します。
[速度による入り・抜き]……ストロークの速さに併せて入り抜き調整する設定を選択できます。ストロークが速ければ[入り抜き]が強くつき、遅ければ入り抜きがあまりかからないので、より感覚的なタッチに近い状態で描くことができます。
[はらい]……値を大きくすると、タブレットからペンを離したあとも線が徐々に細くなりながらペンについてきます。
[筆圧設定]……タブレットから入力される筆圧の影響度合いをグラフで設定できます。
[傾き設定]……タブレットから入力される傾きの影響度合いをグラフで設定できます。
[2]複数のレイヤーを参照する設定
1.範囲選択時の複数参照
[塗りつぶし]ツールや[閉領域フィル]、 [マジックワンド]ツールや、[矩形選択]や[投げなわ選択]ツールなどの[シュリンク]オプションでは複数のレイヤーを範囲の参照先に設定する[複数参照]の設定があります。
今回は[マジックワンド]を例に参照先の設定について解説していきます。
複数のレイヤーを組み合わせて1枚の絵を描いている時に、[マジックワンド]ツールで選択範囲を指定しようとすると、うまく範囲を指定できないことがあります。
そんな時には、複数のレイヤーを参照して操作を行う[複数参照]の設定があります。
[マジックワンド]ツールを選択し、[ツールオプション]の[複数参照]にチェックを入れます。また、[複数参照]のリストから参照したいレイヤーについて設定します。
参照するレイヤーは、「すべてのレイヤー」「選択状態レイヤー」「フォルダ内レイヤー」「参照レイヤー」の4種類から選択できます。
[すべてのレイヤーを参照]は、表示されている全てのレイヤーが参照されます。(他の設定でも非表示になっているレイヤーは参照されません)
[選択状態のレイヤーを参照]は、レイヤーパレットで選択状態のレイヤーが全て参照されます。
[フォルダ内のレイヤーを参照]は、選択中のレイヤーが、レイヤーフォルダ内に格納されている場合、同じフォルダ内のレイヤーが全て参照されます。
[参照レイヤーを参照]は、別途設定した「参照レイヤー」と、現在選択中のレイヤーのみが参照されます。「参照レイヤー」は複数設定したり、レイヤーフォルダに設定することもできます。
以下のレイヤー構成&選択状態で、実際にマジックワンドを使用した際に作成される選択範囲を見ていきます。
複数選択:オフ
他のレイヤーの影響は全く受けずに、選択中のレイヤー「D」に沿った選択範囲が作成されます。
複数選択:全てのレイヤーを参照
表示されている全てのレイヤーの影響を受けるので、真ん中の狭い範囲しか選択されません。
複数選択:選択状態レイヤーを参照
レイヤーパレットでは「A」「B」「D」のレイヤーを選択しています。選択していない「F」レイヤーの赤い円は無視されます。
複数選択:フォルダ内レイヤーを参照
こちらは、フォルダの外にある「A」と「F」のレイヤー(赤と青の円)が無視されています。
複数選択:参照レイヤーを参照
参照レイヤーに設定した「F」(赤い円)と、現在選択中の「D」レイヤーのみに影響され、それ以外のレイヤーに引かれた線は無視されています。
少し複雑ですが、目的に合わせて参照先を設定すると、毎回レイヤーパレットの表示・非表示を切り替える手間を省けます。
[複数参照]の設定は、選択範囲系のツール以外にも[塗りつぶし]ツール、[閉領域フィル]ツール、[等高線塗り]ツール、[ゴミ取り]ツールでも設定が できます。選択範囲の作成と同様、参照先に設定したレイヤーの範囲を参照して、現在選択中のレイヤーに塗りつぶしを行います。
2.消しゴムツールでの複数参照
前項の参照先とは別に[消しゴム]ツールでも、すべてのレイヤーを参照するためのチェック項目があります。
[すべてのレイヤーを参照]
[ベクター線]で[交点までを消去]を選択すると設定できます。チェックをオンにすると他のレイヤーに書いてあるベクター線と交差した場合も交点とみなされます。
例として、赤、青、黄、緑の四角形を別々のベクターレイヤーに描画し、重ね合わせた画像を用意します。[すべてのレイヤーを参照]を有効にして消しゴムツールを使用すると、現在表示されているすべてのベクターレイヤーを参照して、[交点までを消去]が実行されます。
[すべてのレイヤーを対象にする]
紛らわしい名称ですが、こちらはラスターベクターを問わず使用可能なオプションです。
その名の通り、表示中の全てのレイヤーに消しゴムが適用されます。消しゴムでなぞった範囲は、選択中でなくても、全て消去されます。
例として、赤、青、黄、緑の四角形を別々のレイヤーに描画し、重ね合わせた画像を用意します。[すべてのレイヤーを対象にする]を有効にすると、現在表示されているレイヤーすべてに[消しゴム]ツールを利用することが可能になります。
[3]ツールオプションの設定を変更
1.スライダーとインジケータ
[ツールオプション]の[硬さ]などを設定する四角形の目盛りを[インジケータ]と呼びます。インジケータでは5段階の設定値から硬さを選 択できますが、この目盛り上では細かい数値の調整ができません。より細かい調整を行いたい場合は、[インジケータ]から[スライダー]に変更します。[硬 さ]のインジケータ上で右クリックして、メニューを表示させ、[スライダーに切り替え]を選択します。
[硬さ]の項目がスライダーで変更できるようになります。
これとは逆に、[サイズ]などのスライダーをインジケータ表示に切り替えることもできます。
インジケータでは5段階の設定値を選べますが、それぞれの段階を好きな数値に設定することができます。[硬さ]のインジケータ上で右クリックしてメニュー を表示し、[インジケータの設定]を選択します。表示された[インジケータの設定]ダイアログから、好きな値を設定できます。
2.項目の折りたたみ
[ツールオプション]パレットの各設定項目は、項目の左にある「-」をクリックすることで収納することが可能です。閉じると「-」が「+」になります。設定を変更しない項目は、閉じておくとウィンドウスペースを広く使うことができます。
設定を閉じた状態でも、右クリックして表示されるメニューから、収納されている設定項目を変更できます。メニューで機能のオン/オフを切り替えて使う機能は、まずチェックボックスをオンにして、右クリックを行うと設定項目がメニューに表示されます。
3.パラメータの表示・非表示
前述の折りたたみとは別に、ツールオプションの設定項目の表示・非表示を切り替えられます。
IllustStudioの描画系ツールにはたくさんの設定項目がありますが、その中でも描画中によく設定を変更する項目と、一度設定したらあまり変更しない項目があると思います。
前者は常にツールオプションに表示しておき、後者は必要な時だけ表示するようにすれば、パレットのスペースが節約できる上に、必要な項目を選びやすくなるはずです。
非表示にしたいパラメータを右クリックして、メニューから[このパラメータを非表示設定にする]のチェックをオンにします。
※ここで、[このパラメータを非表示設定にする(全ツールに適用)]を適用すると、すべてのツールのオプションでこのパラメータが非表示設定に切り替わります。
[非表示設定]のパラメータも、ツールオプション下部の[すべてのパラメータを表示する]をクリックすると、一時的に表示状態に切り替わり、設定変更が可能です。(背景色が少し暗いパラメータは非表示設定の項目です。)
この状態は一時的なものなので、ツールを切り替えると、また元の非表示状態に戻ります。
[非表示設定]を解除して常に表示状態に戻す場合は、パラメータを右クリックして[このパラメータを非表示設定にする]のチェックをオフにします。
4.ツールオプションの分離
[ツールオプション]は[ツールセット]パレットから分離して、独立したパレットとして表示/非表示を切り替えられます。
[パレット]メニュー→[ツールオプションの分離]のチェックをオンにすると、[ツールセット]パレットに表示されている[ツールオプション]部分をパレットとして独立して表示することができます。
ツールオプションを分離すると、[ツールセット]パレットにツールオプションは表示されなくなります。
分離した[ツールオプション]を元に戻すには、再度[ツールオプションの分離]を選択し、チェックをオフの状態にします。
※[パレット]メニュー内の[ツールオプション]の項目は[ツールオプションの分離]がオンになっていないと有効になりません。
[4]ツールセットの活用
1.設定を元に戻す
パラメータを変更したものの、元の設定に戻したいことがあると思います。
設定を戻したいツールセットは[初期設定に戻す]ボタンをクリックすると、初期設定に戻すことができます。
また、気に入った設定ができたら、それを初期設定として上書きしてしまうこともできます。
[ツールセット](または[ツールオプション])パレットの[メニュー表示]ボタンから[初期設定に登録]を選択すると、現在の設定が初期設定として上書きされます。
※以後、[初期設定に戻す]を行うと、このパラメータに戻ります。
■設定をロック
[ロック]ボタンをクリックすると、ツールセットに鍵のアイコンが付きます。設定をロックすると、ツールセットを切り替えるたびに設定が元に戻る(初期設定に戻る)様になります。
設定をロックしておくと、「前回使用した時にブラシサイズを変えたのを忘れて、いざ描画してみたらサイズが大きすぎてやり直しに…!」ということはなくなります。いつも同じ設定でツールを使用したい場合はロックしておくと良いです。
2.ツールセットとして保存する
初期設定に登録する以外にも、新しいツールセットとして設定を保存できます。
カスタマイズ元のブラシを残しておきたい場合や、全く新しいブラシを作成する場合は[新規ツールセット作成]ボタンをクリックします。
新規に作成されるツールセットの設定は、現在選択中のツールセットの設定がコピーされます。
3.ツールセットの分類
[ツールセット]パレットにはフォルダを作成できます。
ツールセットの数が多くなってくると、名前やサムネイルだけでは目的のツールセットを選びにくくなってきますが、フォルダを作成して使用目的や系統によって分類しておくと便利です。
[ツールセット]パレットにフォルダを作成するには[新規フォルダ作成]ボタンをクリックします。
環境バックアップの対象にする
[新規設定]ダイアログの[環境バックアップの対象にする]にチェックを入れると、環境バックアップの対象になります。
4.ツールセットの書き出し・読み込み
■書き出し
作成したツールセットは(*.tos)ファイルとして書き出しできます。
ファイルとして書き出したブラシの設定は、別のPCでも読み込めるので、バックアップ用に保存するだけでなく、友人と共有したりCLIPで公開したりもできます。
ツールセットをファイルとして書き出す場合は、[ツールセット]パレットで、書き出すツールセットを選択した状態で、[メニュー表示]ボタン(または右クリック)→[ツールセットの読み書き]→[ツールセットの書き出し]から、名前を付けて保存します。
※[ツールセットの読み書き]→[現在のツールセットをすべて書き出し]を実行すると、選択中のツールのツールセットが全て書き出されます。
■読み込み
書き出されたツールセット(*.tos)ファイルを読み込むには…
[ツールセット]パレットの[メニュー表示]ボタン→[ツールセットの読み書き]→[ツールセットの読み込み]を選択するか、「*.tos」ファイルを直接イラストスタジオのウィンドウ内にドラッグ&ドロップします。
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