パース定規の使い方
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[パース定規]は、透視図法での描画を補助するための定規です。透視図法とは、画面に立体感や遠近感を表現する技法のひとつ。この技法で描くことを「パースをつける」「パースを描く」といいます。
[パース定規]を使うと、パースに沿った直線をフリーハンドで引くことができます。また、[パース定規]をキャラクターや背景の配置や大きさを考えるときのガイドラインとして利用してもよいでしょう。使い方をマスターして、作画に役立ててください。
[1]パース定規とは
[パース定規]は、[アイレベル][消失点]で構成されています。
[アイレベル]… 人の目線の高さ、あるいは、カメラの高さのことをいいます。画面上の水平線(または地平線)と一致します。
[消失点]… 物体を構成している平行線は、それを見ている人の視点から遠ざかるにつれ、1つの点へと収束していきます。この点を消失点といいます。
IllustStudioには、3種類の[パース定規]があります。
■パース定規(1点透視)
[消失点]を1つ設定する、1点透視用の定規です。正面から見た物体や部屋の奥行きを表現する場合などに使用します。[消失点]は、アイレベル上に設定するのが基本です。定規のスナップを有効にすると、消失点に収束する直線(いわゆるパース線)と、アイレベルに対して垂直・水平方向の線を、フリーハンドで描くことができます。
■パース定規(2点透視)
[消失点]を2つ設定する、2点透視用の定規です。物体をななめ横から見た場合などに使用します。2点透視では、アイレベル上に2つの消失点を設定します。定規のスナップを有効にすると、それぞれの消失点に収束する直線と、アイレベルに対して垂直方向の線を、フリーハンドで描くことができます。
■パース定規(3点透視)
[消失点]を3つ設定する、3点透視用の定規です。大きな物体を見上げるようなアオリの構図、または、高いところから見下ろすフカンの構図を描くときに使用します。3点透視では、アイレベル上に2つの消失点、アイレベルより上または下にもう1つの消失点を設定します。定規のスナップを有効にすると、それぞれの消失点に収束する直線を、フリーハンドで描くことができます。
[2]パース定規の使い方
1. [パース定規]を作成する
[パース定規]は、[定規レイヤー]と[画像レイヤー]に作成できます。定規を作成するレイヤーを選択して、[定規]メニュー→[パース定規]から、[1点透視を作成]、[2点透視を作成]、[3点透視を作成]のいずれかを選ぶと定規が作成されます。
2. [パース定規]のスナップを有効にする
[定規]メニュー→[スナップ先を設定]で[パース]を選択します。[定規]メニュー→[スナップ]にチェックが入っていると、[パース定規]のスナップが有効です。チェックを外すと、スナップが無効になります。
また、[定規ハンドル]でもスナップのオン・オフを切り替えることができます。
3. [パース定規]を編集する
定規の[ガイド線]に[ガイドハンドル]や[センターポイント]をドラッグすることでを編集できます。
[パス編集]ツールの[ツールオプション]の設定で、[すべてのレイヤーを対象にする]にチェックを入れておくと、定規の描かれていないレイヤーを選択している場合でも操作ができるようになります。[ペン]ツールや[鉛筆]ツールなどの描画ツールを選択中でも、[ctrl]キーを押したり、[消失点]や[ガイドハンドル]や[センターポイント]にカーソルをあてると、一時的に[パス編集]ツールに切り替えて使用することができ、その場合、[すべてのレイヤーを対象にする]にチェックを入れておくと、定規を切り替えながら描画をすることができます。
[パース定規]は[アイレベルのコントロールポイント(2点透視・3点透視の時はアイレベル上の消失点)]、[ガイド線]、[ガイドハンドル]、[センターポイント]をドラッグして編集します。
[センターポイント]をドラッグすると、[消失点]の位置はそのままで、[ガイド線]の表示角度を変更できます。
[ガイドハンドル]をドラッグすると、[センターポイント]を中心に[ガイド線]が回転します。[消失点]の位置を調整できます。
[センターポイント]をドラッグすると、ガイド線上で[センターポイント]と[ガイドハンドル]の表示位置を変更できます。
[アイレベル]のコントロールポイントをドラッグすると、[アイレベル]の表示位置を変更できます。2点透視、3点透視の[パース定規]では、アイレベル上に設定した[消失点]もいっしょに移動します。
[定規ハンドル]の[移動コントロール]の内側をドラッグすると定規全体が移動します。
ドラッグする場所によって定規の形がどう変わるのかを理解して、描きたい絵に合った[パース定規]を設定できるようになりましょう。
[3][パース定規の編集]メニューの使い方
[定規]メニュー→[パース定規]で表示されるメニューからも、[パース定規]が編集できます。このメニューには、[パース定規]を使いこなすのに欠かせない便利なコマンドがそろっています。しっかりマスターしておきましょう。
1.[パース定規の編集]メニュー
(1)無限遠にする
選択中の[パース定規]が平行線に切り替わります(消失点がなくなります)。
(2)スナップを無効化
選択中の[パース定規]のスナップを無効にします。
(3)消失点の位置を固定
選択中の[パース定規]の[消失点]の位置をロックします。
(4)すべての消失点の位置を固定
表示中の[パース定規]のすべての[消失点]の位置をロックします。
(5)すべての消失点の位置固定を解除
選択中の[パース定規]の[消失点]の位置固定をすべて解除します。1つ以上の[消失点]がロックされているときに選択できます。
(6)アイレベルを水平に固定
[消失点]の位置を移動しても、[アイレベル]を水平に保ちます。初期状態ではここにチェックがついています。チェックを外すと、[消失点]を移動したときに[アイレベル]の角度が変わります。[アイレベル]を傾けたいときはチェックを外して使用します。
(7)アイレベルを現在の位置で固定
[アイレベル]の位置をロックします。[消失点]を移動しても、[アイレベル]の角度は変わりません。このコマンドは、[アイレベルを水平に固定]の チェックが外れているときに選択できます。[アイレベル]を任意の角度に傾けたら位置を固定、そのあと[消失点]の位置を調整…という手順で作業するとい いでしょう。
(8)1点透視に変更
現在の定規を1点透視のパース定規に変更します。
(9)2点透視に変更
現在の定規を2点透視のパース定規に変更します。
(10)3点透視に変更
現在の定規を3点透視のパース定規に変更します。
(11)パース定規の詳細設定
[パース設定]ダイアログを開きます。
2. [パース設定]ダイアログ
[パース設定]ダイアログでは、さらに詳細な設定ができます。
(1)手のひら
ドラッグするとキャンバスを移動できます。[消失点][センターポイント][ガイドハンドル]の上ではカーソルの形が変わります。ドラッグすると定規の編集ができます。
(2)クリック位置に消失点を追加
クリックした位置に[消失点]を追加します。
(3)クリック位置に消失点のガイド線を追加
クリックした位置に、選択中の[消失点]の[ガイド線]を追加します。
(4)選択中の点を削除
選択中の[消失点]や[ガイド線]を削除します。[消失点]を選択している場合には[消失点]とそれに付属するガイド線がすべて削除され、ひとつの[消失点]に[ガイド線]を3本以上表示している場合は、[センターポイント]か[ガイドハンドル]を選択してこのボタンをクリックすると、[ガイド線]を削除することができます。ただし、[ガイド線]を2本未満に減らすことはできません。
(5)補助線を表示
選択中の[消失点]に収束する[補助線]を表示します。[補助線の色][線の間隔]は、任意のものに変更することができます。
(6)すべての消失点に設定を適用
チェックを入れると、表示されているすべての[パース定規]の[消失点]に[補助線]を表示します。
[4]知っていると便利なコマンド
■スナップの切り替え
キャンバスに[消失点]が複数あると、意図しない消失点の方向にスナップして、思い通りに線が引けないことがあります。そんな場合は、[消失点]ごとにスナップのオン・オフを切り替えると、作業しやすくなります。
この操作は[定規]メニューの[スナップ]がオンになっているとき(チェックがついているとき)にのみ有効です。[消失点]へのスナップは、キーボードの[Ctrl]キー+カーソルキー(矢印キー)で、切り替えることができます。
(1)パース定規の作成時に上方向にある消失点 [Ctrl]キー+[↑]キー
(2)パース定規の作成時に左方向にある消失点 [Ctrl]キー+[←]キー
(3)パース定規の作成時に右方向にある消失点 [Ctrl]キー+[→]キー
(4)4点目以降に追加された消失点 [Ctrl]キー+[↓]キー
スナップがオンの場合、[ガイド線]はレイヤーのメインカラーで表示されます。
※初期状態では、[定規レイヤー]に作成された定規はパープル、[画像レイヤー]に作成された定規(サブ定規)はグリーンに設定されています。スナップがオフの状態では、[ガイド線]の色が変わります。
■消失点のアイレベルへの吸着解除
[パース定規(3点透視)]で、3点目の[消失点]を[アイレベル]より下に配置する場合、[パス編集]ツールで[消失点]をドラッグして移動しようとす ると、アイレベルに近づいたときに[消失点]がアイレベル上に吸着します。アイレベルから一定距離以上をドラッグすると吸着は解除されますが、[Alt]キーを押しながら[消失点]をドラッグすると、吸着せずにスムーズに移動することができます。また、パース定規の作成時にアイレベル上に配置されている[消失点]は、吸着を解除することはできません。
[5]定規ハンドルを使った操作
[定規ハンドル]は、定規の形の調整、定規全体の移動、回転、拡大、縮小、スナップのオン・オフなどをコントロールするのに使います。
[表示]メニュー→[描画補助]→[定規ハンドル表示]で、キャンバスに[定規ハンドル]が表示されます。
(1)削除ボタン
クリックすると定規を削除します。
(2)スナップ切り替えボタン
クリックして、定規のスナップのオン・オフを切り替えます。スナップをオフにすると、定規の色が薄くなります。
(3)頂点コントロールの表示切り替えボタン
クリックして、[頂点コントロール]の表示・非表示を切り替えます。[頂点コントロール]を[表示]にすると、[消失点][ガイドハンドル][センターポイント]が円で表示されます。コントロールしたい点にマウスを置くと円が赤く表示され、さらに、その点と連動して動く[ガイド線]も赤く表示されます。
(4)回転・拡大・縮小コントロール
ハンドルをドラッグして、定規の回転・拡大・縮小を行います。[消失点]や[アイレベル]を固定している場合は、表示されません。
(5)移動コントロール
円の内側をドラッグすると、[パース定規]を移動できます。円の外周をドラッグすると、[定規ハンドル]を移動できます。
[6]パース定規+ベクターレイヤーで「ビル」を描く
[パース定規]を使って描く場合、消しゴムの[交点消去]機能を利用できる[ベクターレイヤー]で作業するのがオススメです。
ここでは、3点透視の[パース定規]で「ビル」を描く手順を紹介します。
このようなビルを描いてみましょう。
(1)[レイヤー]パレットの[定規]リブに、新規の[定規レイヤー]を作成したら、そこに[定規]メニュー→[パース定規]から[3点透視を作成]を選択して、3点透視の[パース定規]を作成します。
(2)[パス編集]ツールで[消失点]や[ガイド線]を移動して、ビルのイメージに合うように[パース定規]の形を調整します。
[消失点]の位置の決め方は、どのような絵を描きたいかによって変わりますので、明確なルールはありません。一般的に、[消失点]同士が近すぎると不自然なパースになってしまいます。
最初は、建物などの写真を読み込んで[パース定規]を合わせる練習をしてみましょう。このとき、最初に[アイレベル]の位置を決めて、それから[消失点]を合わせていくと作業しやすくなります。
(3)[レイヤー]パレットの[画像]リブに新規[ベクターレイヤー]を作成し、[ペン]ツールでビルの大まかな外観を描きます。この時、線と線が交差する部分(ビルの角など)は終点をぴったり合わせず、交差するように線を引いていきます。
(4)はみ出した線は、[消しゴム]ツールの[交点消去]で消去します。
(5)窓の線を入れていきます。右側の[消失点]以外のスナップはオフにしておくと描きやすいです。はみ出た線は、[交点消去]で消去します。
(6)同じようにして、ほかの向きの線も入れます。
(7)後ろのビルや、さらに細かい部分も描き加えたら完成です。
完成した線画に、さらに着色を加えるとこのようになります。
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