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第4回 猫もおどろく手描きの動画

提供者 : セルシス    更新日 : 2015/06/30   
閲覧数 : 5532回 総合評価 : 1件

(1)そろそろ14号が発売になります

アニメーションのメイキング専門誌、というマニアックなテーマの『アニメーションノート』もいつの間にか14号。
毎回取材のたびに、現場のスタッフのもつ技術には驚嘆させられますが、実際にまねごととはいえアニメを作ってみようとすると、さらにその驚きは深まります。

アニメってすごい。

さて、前回絵コンテまで紹介した『アニメーションノート』スタッフが作るアニメ。
今回は絵コンテの中から、一番簡単そうなカットを選んで、それを動画にしてみました。
まずは伝統的な手描きの動画→[TraceMan]のパターンから。
また、筆者の「RETAS修行」も、前回描くだけ描いてみた手描きの動画を[TraceMan]に取り込んで彩色してみるという工程を試してみます。

 

(2)意外なトラブル?

前回掲載した手描き動画は、[TraceMan]を使わず、ほかのソフトでスキャンしたものだったのですが、今回あらためて元の絵を[TraceMan]で取り込もうとすると、「このスキャナは必要な機能をサポートしていません」と表示が出て、スキャンができません。
???
私の持っているスキャナが安物(たしか1万円しなかった)なのがいけないのかしら。なんにしてもスキャナが使えないでは、[TraceMan]を使うことができません。慌てて、セルシスさんに確認してみると、私のスキャナには対応していないとのこと。
そ、そうだったのか。
ホームページにもちゃんと対応スキャナの一覧が書いてあるそうです。ちゃんと読まなかった筆者も悪かったんですが、改めて対応スキャナを買い直さなくてはいけないんでしょうか?
いいえ、そうでもありません。対応スキャナを持っていない場合は、次のような手順で作業を進めることができます。

1. 普段と同じ手順(手持ちのスキャナとスキャナの対応ソフト)でスキャンする。
※複数枚スキャンする場合、同じ位置に絵が来るようにすると良い
2. 保存する
※画像の劣化が少ないpngやtargaなどの画像形式で、またファイル名は連番で保存
3. [TraceMan]のファイルブラウザから新規カットフォルダを作る
4. その新規カットフォルダを開きセルを一つ選択する
5. そうすると「登録」できるようになるのでメニューから「登録」
6. 登録ウィンドウが開くのでそこでスキャンファイルを選択し「開く」
※この時、複数のファイルを選択でき、一括で「開く」もできる。
7. セル上に現れる
※複数のファイルを一括で開いた場合はセル上に1番から順に展開される
8. この先は[TraceMan]でスキャンした場合と同じ作業

分かりましたでしょうか。では実際にやってみましょう。


スキャンした画像

 

(3)文明の進歩は素晴らしい!!

というわけで、指示に従って[TraceMan]でのトレース作業を実行してみます。

いつものように「F12」を押してファイルブラウザを立ち上げて作業開始です。前記の指示の通りに進めていくと......今度はちゃんとトレースまで進めました。
トレースというのは、この場合スキャンしてあった画像データを、[PaintMan]で彩色できるように、2値化する処理のことです。この処理をやっておかないと、次の段階である彩色がスムーズにできません。デジタル環境でのアニメ制作には重要な工程です。

アニメの動画では、色の塗り分けを指示するために、黒の実線以外に塗り分けのガイドとなる「色トレース」線が引かれています。
セルの時代であれば、実線はトレースマシンという半自動の機械が動画(紙)からセルに写し取ってくれましたが、色トレース線は彩色スタッフが、絵の具を使ってペンで直接セルに手描きでトレースしていました。30分のアニメで3,000~5,000枚のセルが使用されますから、この手間は膨大なものです。
けれど、[TraceMan]では、実線はもちろん色トレース線のトレースも自動でやってくれます。あらかじめ設定しておいた色をスキャンした画像データから自動的に見分けて、それぞれ単色(2値)に仕分けてくれるのです。

便利!文明の進歩は素晴らしいものです!

手描きの時代よりもやや融通が利きにくくなっていますが、それでも、ソフト上でかなり調整できるようになっていますから、トレースミスも(ちゃんと調整しておけば)まずおきません。

なんと、1クリックするだけでトレース終了。トレースマシンにかけて、それから仕上げスタッフが手描きで色トレース線を描き込んでいた時代と較べると、いったい何百倍素早く作業が終わることか。


トレース直後

ここまで読んでもらって分かるとおり、すでにスキャナを持っている人は手持ちのものでも作業は進められます。
とはいえ、複数のソフトを頻繁に渡り歩くのはちょっと手間ですから、特にこれからスキャナを買う人は対応製品を最初から選ぶ方が間違いなさそうです。

 

(4)これで色が塗れます

て、スキャンができました。今度はさらに一段階進めて、色を塗ってみます。
[TraceMan]は終了して、[PaintMan]を立ち上げます。[TraceMan]で作ったファイルは別に変換などしなくても、そのまま読み込めるんですね。楽ちんです。

さあ塗れました。

でもよく見ると、細かいところに、色トレース線の色である、青や赤がゴミのように残ってしまっています。

どうやら[TraceMan]の作業の時の調整がいい加減だったようです。いったん[TraceMan]に戻って、2値化をやり直します。
しばらく試しているうちにうまくいきそうな調整位置を見つけました。それでも若干ゴミが残りましたが、[TraceMan]でトレースすると、主線と色トレース線はそれぞれ別のプレーンに分かれるので、色トレース線のプレーンを選んでおおざっぱに消しゴムをかければ、主線を残したままこうしたゴミを消すことができます。


トレースやり直し

さあ、あらためて彩色していきましょう。塗り上がった状態はこんな感じです。

最初の画像とあまり代わり映えしないように見えますが、細かいところのゴミがなくなっているのです。

 

(5)細かいところも簡単彩色

彩色の作業の細かいところを見てみます。

トレースしたデータをよくよく拡大してみると、線がつながっていない場所があります。[TraceMan]上でどんなにうまく調整しても、たまにはこういう線の抜けはできてしまうものです。なにせもとは人間の描いた線、アナログなのですからそういうものです。
ですが、便利なRETAS STUDIOは、ここでもその便利ぶりを発揮してくれます。
この唇の下の影の色トレース線のようにつながっていない場合でも、[隙間を閉じる]機能をONにしておけば、上手に見分けて一度で塗ってくれるのです。

塗り終えた状態ですが、もちろん1ドットずつ塗っているわけではなく、[フィル]ツールという、線で囲まれた領域に同じ色を一度に塗る機能を使って1クリックで塗っています。しかも、もともと青かった色トレース線も[含み塗り]という機能で同じ影の色に自動で塗ってくれるのです。
――なんとまあ便利。

ほかにも1ドットだけ塗り残しになってしまったところを簡単に塗りつぶす機能など、[PaintMan]も便利な機能がたくさんあります。しかも今回の作業では、タブレットはもちろん、マウスも使っていません。
ノートパソコンのタッチパッドだけでトレースから彩色まで進めてしまいました。
文明の進歩って素晴らしいなあ。

 

(6)猫をびっくりさせたい

いつまでも文明の進歩に感動していても仕方がありません。肝心の『アニメーションノート』スタッフによる作品の方へ話を進めましょう。

前回絵コンテは見てもらいましたが、その中からまずは少しでも簡単そうなカットを選んで、原画、そして動画まで描き進めていきます。
選ばれたのはカット10。



カット10

猫が驚いて飛びあがる、というカット内容です。このカットの秒数は「0+6」。「0秒と6コマ」と読みます。一般のアニメの場合は1秒あたり24コマの絵が存在しています。つまり、読み替えるとこのカットは「4分の1秒間」の長さがある、ということですね。ただし、6コマといっても6枚の絵を描くとは限りません。同じ絵が何コマかずつ撮影されるのは、一般的なアニメの場合普通に行われることです。
日本の標準的なアニメなら1枚の絵を3コマずつ、あるいは2コマずつ撮影します。1コマずつ全部違う絵を撮影していく場合を指して特に「フルアニメーション」などと呼んだりしています。

 

(7)こんな原画になりました

絵コンテをもとに原画を描いてみます。このカットは手描きです。せっかくRETAS STUDIOが使えるのですから、手描きの原動画も、デジタル作画も両方やってみるつもりです。
このカット10は手描きでの挑戦となります。さあ、描きあがった原画を見てみましょう。

2枚の原画ができあがりました。
............。
そこ、笑ってはいけません。普段絵を描かないひとが、いきなり原画に挑戦すれば、まあこんなものです。チャレンジ精神が大事なのです。
それよりも、2枚目の原画の左の方に注目してください。なにやら矢印が描いてあります。


ツメ指定

これは動画への指示で「ツメ指定」と呼ばれます。矢印の途中に入っている短い線が、2枚の原画の間に入る動画を示しているのですが、この短い線が、矢印の始まりの方にやや近く引かれているのがわかると思います。2枚の原画の間に1枚だけ入る動画は、1枚目に近い位置に描くように。という指示がこの矢印なのです。
もちろん、原画の清書(クリンナップ)も行なわなければなりません。

 

(8)こんな動画でいいのかな

さて、原画のあとは動画です。

「原画のクリンナップ」

「中割り」

――という順序で動画の作業は進みます。完成した動画は次の通り。

............。
なにやら、2枚目......つまりは中割りがすごいことになっていますが......。これでちゃんと動いて見えるのでしょうか。
と、とにかく[TraceMan]でトレースしてみましょう。

 

(9)猫びっくり!

どうやらなんとかトレースできたようです。
さらに一気に[PaintMan]で彩色まで進めてみます。

 

......色を塗ってしまうと、なんとなくそれっぽく見えてくるのは不思議です。
せっかくですから、動きもチェックしてみましょう。

......速っ!

絵コンテの指示にあるとおり、「0+6」秒で動かすと、本当に一瞬で終わってしまいますね。これでいいのかどうかは、絵コンテの担当スタッフに聞いてみないとよく分かりませんが、こうして動かしてみることで、絵コンテを描いている時点では、「これで大丈夫!」と思った指定内容が本当に大丈夫かどうか見て確かめることができます。

アナログの時代であれば、カメラで撮影して、現像してみるまで動いている様子はわかりませんから、こうしてすぐに動きをチェックできるようになったのはやはり文明の進歩としか言いようがありません。

今回は手描き動画でカット10を制作してみましたが、次回は別のカットをデジタルで制作してみましょう。
どのカットが対象になるかは次回のお楽しみということで、前回掲載した絵コンテを見返して、予想などしていただけると時間つぶしにいいかもしれません。

今回関わった『アニメーションノート』制作スタッフは次の通り。

絵コンテ:ひよこ舎O
カット10原画:USU
カット10動画:遠藤
その他いろいろ:田中桂

――ではまた次回!

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