第6回 さあ、これで1カットできあがり!?
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(1)新生活の春、アニメの春
すっかり春めいてまいりました。
気温があがってくると、花は咲き、鳥もさえずり、ややこしいものも湧いてきたりするわけですが、アニメファンにとってはもちろん新番組の季節!であります。
去年に比べれば若干減ったとはいえ、まだ3ケタにおよぶ新作アニメーション作品が公開されるわけで、「いったいこんなに誰が見るんだろう......?」とひとごとながらちょっと心配になってしまいますね。
さすがに筆者も全部は見ていられません。いや、見てもいいんですが、それやっていると、確実にこの記事を書く時間が減っていきますから。そうでなくても、毎回毎回......げほん、げほん。本当に、セルシスのみなさんには、いつもお世話になっています!
一応、自分が記事で関わったタイトルくらいはチェックしていますが(お忘れかと思いますが、筆者は『アニメーションノート』なる雑誌で、取材や記事書きをしているのです)、本当、アニメってたくさんありますねえ。
ちなみに家にこもってアニメを見ていると、すぐ仕事したくなくなるので、アニメはデータ録画して、ファミレスでコンピュータを広げて見るようにしています。おかげでほんとテレビ見なくなりました......。これは余談。
(2)さあ中割りだ!
前回は、カット15の原画までの作業を進めていたわけですが、今回はそのまま続きということで、カット15の動画作業に入ろうと思います。
このカットでは、原画が3枚、そのうち2枚目と3枚目の原画の間に、2枚の「中割り」が入ります。その中割りを描いてしまえば、動画作業も完了となるわけですが、ここで動画作業の全体の流れを確認しておきましょう。
動画は次のような進行で進みます。
(1)タイムシートの転記
原画は中割りのあるなしに関わらず、通し番号がつけられています。
動画作業の前にはこの番号を、中割りの動画を含めた通し番号に書き換える必要があります。RETAS STUDIOではこの作業は自動でやってくれるから便利です。
詳しくは製品に収録されているガイドブック「RETAS STUDIOでアニメを作ろう」(p66)を参照してください。
(2)原画のクリンナップ
原画は彩色に適さないラフな線で描かれていることも多いので、きちんと線同士がつながって、彩色しやすいように清書する必要があります。これがクリンナップです。
今回は、クリンナップ(と中割り)の作業で[入り]と[抜き]の効果を加えてみました。
詳しくはもう少し先で。
(3)中割り
クリンナップまで終わればいよいよ中割りです。
原画に指示がある場合にはそれに従って、原画と原画の間の絵を描いていきます。
(3)完成した動画
――さあ、そんな手順を踏んで、動画まで完成しました。
3枚目と4枚目が中割りした動画。それ以外が原画からのクリンナップです。原画のツメ指定では、5枚目に「ツメて」中割りするように指示がありましたので、3と4は単純に2と5の中間の絵ではなく、より5に近い2枚の絵になっています。
このカットでちょっと難しいのは2点、
「かばんが描き起こしである」、「やや振り向いている」
ところです。
かばんは2枚目までには登場しませんから、動画の段階で描き起こす必要があるのです。
普通なら、こういう場合、動画にかばんの作画を任せたりせず、原画担当のアニメーターがその部分を描いておくものだと思います。
とはいえ、動画担当者は、ただ原画の線の間をつないでいればいいだけかといえばそうでもありません。たとえば、キャラクターが振り向くような動作の場合、画面上のキャラクターの形は刻々と変わっていきますから、単に原画と原画の間の線を描いても、「キャラクターが振り向いている」ようには見えないのです。
そういう理由で、動画担当者であっても、必要な絵を一から描き起こす能力は必要とされています。なかなか高度な仕事です。
......これだけ書いておけば、完成した動画が**でも言い訳ができるな。
(4)[入り]と[抜き]
さて、今回の動画では[Stylos]の描画機能のひとつである、[入り]と[抜き]を使ってみました。
引かれた線が、先端に行くほど、するどく細くなっているのがわかるでしょうか。
これを実際の鉛筆やペンでやると、描きはじめは力を入れずに、線を描くに従って力を入れていき、今度は線を引き終えるときには逆に力を抜いていく......という、ちょっとした修練の必要な技能が要求されます。
けれど、[Stylos]では、力の入れ方や線を引く速さとは関係なく、引かれた線の両端にドット単位で[入り][抜き]を指定できるようになっています。これさえあれば、ペンの使い方に熟練しなくても、プロみたいな線が引けそうです。
[入り][抜き]なしではどうしても鈍くさかった線が、なんだか綺麗になりました。うれしい。
(5)彩色、こういうつまずきはアリか!
ようやく動画作業が終わりまして、今度は[PaintMan]で彩色です。彩色自体は、色を選択して動画の上に流し込んでいくだけですから、らくちんらくちん......と思いきや細かな落とし穴が。
彩色用データとして[Stylos]からデータを書き出す際に、データの保存先が普段使っているのとは別のところになっていることに気づかず、「あれ?何度やっても彩色用データが作れないぞ」としばらく悩んでしまいました。
RETAS STUDIOでは、ファイル名は長くなりがちです。またファイルブラウザの表示も、長いファイル名がやや見づらい仕様になっていますから、初心者のうちは、ファイルの保存先をしっかり確認しておいた方がいいでしょう。
筆者は、こんな間抜けな間違いで、30分近くも損をしました。
基本的なことって大事ですよね......。
もうひとつ、初めて使ってみてわかったことですが、動画のデータは彩色するために2値化してしまうわけですが、その変換過程で[Stylos]上ではわからなかったはみ出しなどが生じるのです。
これは、何度か使ってみて慣れる必要がありそうです。思いつきの対処法としては、[Stylos]上で線を引くときは、極力行き先の線からはみ出すように線を引いて、あとでケシゴム機能で「境界になっているところまで消す」ようにすれば、変なはみ出しはなくなりそうです。
さあ、彩色データが完成しました。
(6)背景を描く
動画の彩色まで終われば、あとは撮影するだけ......となりそうですが、まだ足りないものがありました。
背景です。
これがないと、キャラクターはなんにもない場所でむなしく演技をしなければいけなくなってしまいます。とりあえず簡単なものでいいから描いてみました。
CGソフトを使って描いた背景です。
エアブラシ機能と、ぼかし機能を使って5分くらいで描きました。「効果背景」などと呼ばれる背景です。
これで必要な素材は最低限そろいましたから、いよいよ[CoreRETAS]で撮影に取りかかります。
(7)これで......いいのかな?
「マニュアル通りにやっています、というのは阿呆の言う言葉だ」という箴言がありますが、人間、なんにも知識がないときにはまずマニュアルを頼りにするものです。もちろんマニュアルの鵜呑みで、「なぜそうなるか」を知らない、考えないまま作業を進めるのは良くないわけですけど。
しかし、撮影に関してはわからないことだらけ。
正直ガイドブックを見ても、そこに載っている以上のことはできそうもありません。
まあまずは最小限だけやってみよう、と自分を励まして、作業を進めます。
本当に最小限だけですから、実際にやったのは背景画像の登録くらいなもの。
それでもカットを動画にすることができました。
おー。
お、おーー。
なんか動いていますよ、いろいろ気になるところはありますが、まずは1カット形になったことをお祝いしましょう。
今回できたのは、素材を撮影して、動画ファイルとして出力したところまで。
これは[CoreRETAS]の機能としては、本当に最低限のところしか使っていません。
次回は、アニメでは基本とされるカメラワークをなんとか使ってみたいと思います。
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