第3回「風車を回す」アニメーションを作る CoreRETAS(撮影)編
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コンポジット(撮影)工程では、CoreRETASを使ってこれまでに作成した画像素材を合成して、動画に仕上げていきます。
以下のサンプルは完成見本のカットフォルダのデータです。彩色済みのデータがない場合も以下のデータをお使いください。
サンプルデータ
(1)タイムシートの準備
コンポジット工程では、RETAS STUDIOのCoreRETASを使って、前回までに作成した画像素材を合成します。
まだフィルムを使ってアニメーションを撮影していた時代の名残で、コンポジット(合成)の事を「デジタル撮影」と呼ぶプロダクションもあります。(専門職を「コンポジッター」と言うそうです)
(1)まず、CoreRETASを起動します。初期画面は何もない状態です。
(2)[ファイル]メニューから[新規]→[タイムシート]を選択します。
(3)[新規タイムシート]ダイアログの[タイムシート名]は「練習01タイムシート」に変更します。
[カメラサイズ]の[幅/高さ]に直接、数値入力するか、プルダウンメニューから「1280 x 720」を選択します。
(4)[OK]をクリックすると、新規タイムシートが作成されます。
CoreRETASでは、この「タイムシート」に様々な数値を入力することで、それまではバラバラの一枚絵だったものをアニメーションに仕上げていきます。
(5)[ウィンドウ]メニューから[ステージ]、[セルバンク]、[レイヤー設定]の各ウィンドウ(パレット)を表示させます。
これらのウィンドウはCoreRETASの作業でも良く使用するウィンドウです。
(2)セルバンクの作成
(1)前回までに作成した画像データをCoreRETASに読み込みます。
まず、[セルバンク]の[登録]ボタンをクリックします。
(2)[ファイルを開く]ダイアログで、PaintManでペイントしたデータが入っているフォルダを開きます。
ここでは、「練習-001-001-0001(1)」フォルダを開きます。
更に中のフォルダ「-LO」を開き、中の画像ファイルを選択して開きます。この時、初期設定ではファイルを1枚選択すれば、同一フォルダに入っている読み込み可能なファイルが自動的に全て読み込まれます。
(3)[セルバンク]の「-BG」に画像データが読み込まれて、[セル番号]がサムネイルの下に表示されます。
これで、1~4までの画像をタイムシートで使用できるようになりました。
※今回は素材を1つのセルバンクにまとめて登録しましたが、画像の枚数が多く、素材が複数のフォルダにわかれている場合は、同様の操作でセルバンク(フォルダ)ごとに画像を登録していく必要があります。
(3)タイムシートの入力
先ほどセルバンクに登録した画像の番号(セル番号)をタイムシートに入力すると、時間に沿って画像の表示を切り替えてアニメーションさせたり、複数の画像を1枚に重ね合わせて合成することができます。
タイムシートの横軸はレイヤー(画像の重なり)を表し、右に行くほど重ね順が上になります。
また、縦軸はフレーム(時間経過)を表し、下に行くほど時間が進みます。
1.「-BG」セルの入力
(1)「-BG」レイヤーから入力していきます。今回の作例ではどのレイヤーも、全てのフレームに同じセル番号を指定します。
[タイムシート]のフレームに同じ値を入力するには事前にレイヤー上の全てのフレームを選択しておきます。
タイムシートの秒数が大きく、スタートフレームからスクロールしないと、全てのフレームを選択できない時などは、下図説の赤枠内をダブルクリックすると、そのレイヤーの全てのフレームが選択できます。
※[タイムシート]でレイヤーを選択する時は、デリケートな操作が必要です。
狭い領域内に様々なボタンが配置されているため、クリックする場所が少しでもズレると、意図しない結果になることがあります。
フレームが黒く反転しているのは選択された範囲の表示です。
(2)[タイムシート]の左上が[パラメーター入力フィールド]です。
「-BG」レイヤーに登録する「セル番号」は[セルバンク]の「4」(空の背景画像)です。キーボードから英数半角で「4」と入力して[Enter]キーを押します。この入力フィールドには全角数字では入力できません。
※全角と半角の入力間違いを防ぐ方法として、キーボードで右側にテンキーがある場合は、数値入力は必ずテンキーを使うことをお勧めします。
(3)[ステージ]ウィンドウの[表示モード選択オプション]の中の[画像]ボタンをクリックしてオンにします。
[画像]ボタンがオンになると、ボタンの周りが白くなります。
これで、ステージ上にプレビュー画像が表示されるるようになります。
表示された画像の位置を変更したい場合は、[手のひら]ツールで動かします。
[ステージ]ウィンドウ内であれば[手のひら]ツールは何処でもドラッグできます。
[手のひら]ツールは[ステージ]の見える範囲を変更できるだけで数値的な設定は変更しません。
2.「Aセル」の入力
(1)[ウィンドウ]メニューから[中割り]ウィンドウを表示させます。
[全般]欄の[自動更新]ボタンをクリックしてオンにします。(ボタンの周りが白くなった状態)
(2)[タイムシート]ウィンドウで、[A]レイヤーの全フレームに同じ数値を入力をします。
[-BG]レイヤーの全フレームが選択されている状態であれば、下図解の赤枠部分をクリックすると、全フレームを選択したまま、レイヤーの選択移動ができます。
※「-BG」レイヤーの選択を解除してしまっている場合は、同じ場所をダブルクリックです。
(3)[タイムシート]ウィンドウの、[セルバンク選択]メニューを「-BG」に変更します。
(今回の作業例では、「-BG」に全ての画像データを登録し、共有しているからです)
(4)[セルバンク]の2番目に登録された「風車の支柱」のセル番号[2]を[タイムシート]の[A]レイヤーの[パラメーター入力フィールド]に入力します。
(5)[ステージ]ウィンドウに表示された、[A(#1)]レイヤーの「風車の支柱」の位置を移動させましょう。
デフォルトの位置は少しカメラの中心からズレています。
[ステージ]ウィンドウで[移動]ツールを選択します。
支柱の上の部分に[移動]ツールを合わせます。
カメラの中心までドラッグします。
「支柱」の上の部分がカメラの中心と重なるように移動させます。
3.「Bセル」の入力
(1)次の「B」レイヤーも[セルバンク選択]メニューを「-BG」に変更します。
(2)同様に、全フレームを選択した状態にし、セル番号「1」を[パラメーター入力フィールド]に入力します。
(3)[ステージ]ウィンドウの[B(#2)]レイヤーに「風車の1辺」が表示されます。
「風車の1辺」の回転軸辺りに[移動]ツールを合わせます。カメラの中心(+印)付近までドラッグします。
(4)位置合わせが決まったら、[ステージ]ウィンドウで[中心]ツールを選択します。
[中心]ツールをドラッグして「風車の1辺」の回転軸辺りに移動させます。
(ドラッグする場所は、[ステージ]上なら何処でもかまいません)
(5)「風車の1辺」の位置と回転軸の設定が出来たら、複製を3つ作ります。
[タイムシート]メニューから[レイヤー]→[複製]を選択します。
(6)[レイヤーの複製]ダイアログで、「複製する数」の項目を、「3」に設定します。
[セルバンクを複製する]のチェックは外して、[OK]をクリックします。
[タイムシート]ウィンドウに「B」レイヤーの複製、「B(1)」レイヤー、「B(2)」レイヤー、「B(3)」レイヤーが追加されます。
4.「Cセル」の入力
(1)「C」セルも同様に、セルバンクを「-BG」に設定します。
(2)全フレームを選択し、セル番号「3」を入力します。
(3)[ステージ]ウィンドウで[移動]ツールを選択し、「留め具」を風車の回転軸付近に移動します。
セルの基本的な配置が終わりました。
(4)回転の設定
この段階では、複製した風車の羽根は4枚同じ位置に重なっています。これに角度をつけて風車の形に見えるように設定します。
(1)タイムシートの[連動]ボタンをオンにします。
(このボタンがオンになっていると、レイヤーのパラメータ表示が連動して見やすくなります)
(2)[B]レイヤーの[入力パラメーター選択メニュー]をクリックして、[T回転]に切り替えます。
[連動]を設定しているので、全てのレイヤーの[入力パラメーター選択メニュー]が、[T回転]表示になります。
(3)[B]レイヤーの全フレームを選択し、[タイムシート]メニュー→[キーフレーム]→[非連続キーフレームの設定]を選択します。
「キーフレーム」とは、タイムシート上で回転や移動などを行う際、基準となる値です。
[タイムシート]ウィンドウの、 フレーム[1]とフレーム[48]に「非連続キーフレーム」の三角マークが付きます。
(4)[B]レイヤーの回転角度は「0度の」ままにします。
(5)全フレームを選択したまま「B(1)」レイヤーに選択を変えます。
[パラメーター入力フィールド]に、角度「90」を入力します。
[ステージ]ウィンドウの、[B(1)]レイヤーが90度に変更されました。
(6)[B(1)]レイヤーに対して全フレームが選択された状態で、[タイムシート]メニューから[キーフレーム/非連続キーフレームの設定]を選択します。
[B(1)]レイヤーの、フレーム[1]とフレーム[48]に「非連続キーフレーム」の三角マークが付きます。
(7)「B(2)」レイヤーも同様に、[パラメーター入力フィールド]に、角度「180」を入力します。
全フレーム選択して[タイムシート]メニュー→[キーフレーム]→[非連続キーフレームの設定]を選択します。
[ステージ]ウィンドウの、[B(2)]レイヤーが180度に変更されました。
(8)「B(3)」レイヤーも同様に、全フレーム選択して[パラメーター入力フィールド]に、角度「270」を入力します。
そのまま、[タイムシート]メニュー→[キーフレーム]→[非連続キーフレームの設定]を選択します。
[ステージ]ウィンドウの、「B(3)」レイヤーが270度に変更されました。
これで、「B」レイヤーから「B(3)」レイヤーまで90度ずつ角度調整出来ました。
この後、それぞれの「風車の1辺」が、隣の「風車の1辺」まで角度変化(回転)をさせる[中割り]設定をします。
(5)中割りの設定
(1)[タイムシート]ウィンドウを下へスクロールします。
48フレーム目の「B」レイヤーから横へ「B(3)」レイヤーまでドラッグして選択します。
(2)[タイムシート]メニューから[値の演算]を選択します。
(3)[値の演算]ダイアログに以下の通りに入力します。
※[値の演算]ウィンドウの[値]に入れる数値の根拠は...
48コマで2回転させた場合、[タイムシート]上に無い49フレームと1フレーム目を同じ角度にすると、動きが繰り返しに見えるようになります。
理屈では[49]フレーム目に[720]と入力出来ればよいのですが、[49]フレーム目は存在しないので以下の通り計算をした数値を[48]フレーム目に入力するわけです。
360度×2回転=720度
720度÷48フレーム=15度
47フレーム×15度=705度(変化の最大値)
[引く]を選択するのは、絵的に逆時計回りが「風を受けた風車の動き」に見えるからです。
(数値的には[モーションチェック]機能で検証した時に繰り返しに見えるだけで、カットとしては必ずしも繰り返しに見える必要はありません)
(4)[値の演算]で、90度ずつ違う各レイヤーの角度に演算結果が与えられました。
ただし、このままのタイムシートでは、1~47フレーム目まで静止していた羽が48フレーム目にいきなり動くだけのシートです。
(5)[タイムシート]ウィンドウの、[B]レイヤー1フレーム目から[B(3)]レイヤー48フレーム目まで斜めに選択範囲をドラッグします。([タイムシート]の全面表示できない作業環境では自動スクロールします)
選択できると、反転表示になります。
(6)[タイムシート]メニューから[中割りの実行]を選択します。
(選択範囲に[キーフレーム]の開始と終了は含まれていると[中割り]が実行できます)
(7)[タイムシート]ウィンドウの中割り結果の表示です。
1フレーム目と48フレーム目の間(キーフレームの間)の数値が自動的に計算され、タイムシートに入力されました。
これで、風車が回転するタイムシートが完成しました。
(6)ムービーの書き出し
実際に動きを確かめてみましょう。
1.RAMプレビュー
(1)[ファイル]メニュー→[RAMプレビュー]→[実行]を選択します。
(2)[レンダリング]ウィンドウが開いて、レンダリングが始まります。
レンダリングが終了すると、繰り返し再生モードになります。
再生を中止する場合は、キーボードの[Esc]キーを押します。
POINT
RAMプレビューのクオリティを変更する
[RAMプレビュー]のクオリティを変更する場合は、[ファイル]メニューから[RAMプレビュー]→[設定]を選択します。
[RAMプレビュー設定]ウィンドウの、[レンダリング設定]の各項目を任意の設定にします。
ここで、RAMプレビューのサイズやクオリティを変更できます。
[実行]をクリックすると、再度再生されます。
2.ムービーの書き出し
RAMプレビューで確認した結果を各種ムービーで書き出す事が出来ます。
(1)[ファイル]メニュー→[RAMプレビュー]→[ムービー書き出し]の種類を選択します。
(2)[名前を付けて保存]ダイアログで[ファイルの種類]を選択し、[保存]をします。
ここでは[Flash Movie(*swf)]形式を選択します。
※「Quick Time Movie」の書き出しは、事前にApple社の[Quick Time]をインストールしておく必要があります
以上で、風車を回すアニメーションは完成です。
次回、RETAS STUDIO講座は、「キャラクターを1体作成してレイアウトの練習」を予定しています。
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