第4回 「廻る」 レイアウト編
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商業アニメーション製作で、アニメーター志望なら一度は憧れる職種として「キャラクターデザイン」があります。
なぜ、アニメーション業界では「キャラクターデザイナー」と呼ばれる事が少ないのでしょうか?
それは、如何にアニメーションの技術力が高くても「デザイナー」だけでは食って行けないからです。
商業アニメーション製作における「キャラクターデザイン」というポジションは独立した職業ではなく、主に作画監督クラスの力量を持ち合わせたベテランアニメーターが企画段階以降でプロデュサーやスポンサーから選任されて作業するので、専門職のイメージが強い「デザイナー」という扱いが少ないためだと思われます。
「キャラクターデザイン」の目的は、複数人のアニメーターが作業する場合、見本となる「キャラクター表」を事前に作成しておかないと作画の統一感のクオリティが落ちるからです。
アニメーション作家の様に作画のすべてを一人でする場合でも、「キャラクター表」は作品の世界観を絞り込む為に必要な作成物です。
現在、TV放送作品の殆どが「原作付きアニメーション」ですが、その元になっている漫画原作者のデザインしたキャラクターをオリジナルのまま使わない事が多いのは、例えば動画的に「正面顔と横顔のニュアンスが違わない」様にアレンジしたキャラクター表を作成するためです。キャラクター表には原作者が描かない顔の向き等やポーズの参考も提示します。
資格は要らない「キャラクターデザイン」
アニメーションに使うキャラクターを作るのに資格は要りませんが、最低限の「絵的なつじつま合わせ」が出来る才能があった方が良いでしょう。
と云う事で、どの向きから描画してもつじつまの合うキャラクターを作成しましょう。
前置きで大変そうな事を書きましたが、簡単なキャラクターなら難しくはないです。
今回作例のサンプルデータはこちらをお使いください
サンプルデータ
(1)カットフォルダの準備
(1)Stylosを立ち上げ、ファイルブラウザ→[新規カットフォルダ]ボタンをクリックして、カットフォルダを作成します。
作品名:「練習」
話数:2、シーン:1、カット番号:1
用紙設定:「16x9」(練習1で作成した用紙設定を使用)
(2)[OK]ボタンをクリックすると新規カットフォルダが作成されます。
[画像]タブに切り替えてウィンドウ幅を調整しています。
(3)ファイルブラウザの[メニュー表示]から[設定]を開きます。
(4)[ブラウザ設定]ダイアログで[レイヤーの種類]を[ベクター作画レイヤー]にします。
(通常は前回使用した状態を保持しています)
(5)カットフォルダの空欄のサムネイル部分をダブルクリックして新規セルを作成します。
※以後新規セルはこの方法で「Layout」フォルダ内に作成します。
(2)キャラクターの比較参考図
ここからの作業は、キャラクターの比較参考図を作成する手順の説明です。
比較表のために横線を引いて、コピー&ペースト/矢印キーで移動させ増やします。
一枚のセルファイルの中で「罫線用」や「下描き用」「クリーンアップ用」など、[レイヤー]を追加しないで、既にある[色トレース線プレーン]をやりくりして作成してみましょう。
1.ガイド線の作成
まず、キャラクターを描くためのガイド線を作成します。
今回はキャラクターを頭身の違う4つのバリエーションで描いて比較してみます。
(1)[レイヤー]パレットの「青色トレース線プレーン」を選択します。
(2)[ツールパレット]の[直線ツール]を選択します。
[直線ツールオプション]の[45度刻みで確定]にチェックをオンにすると、水平や垂直が確実に描けます。
(普段はチェックをオフにしておきましょう)
(3) [セル]ウィンドウのフレーム内の上に適当な長さの横線を引きます。
(4) [ツール]パレットから[消しゴム]ツールを選択します。
[消しゴムツールオプション]で、 [線の太さ]を「1.0mm」位に設定します。
(消しゴムの消せる幅の設定です)
そして、[触れた部分を削除]モードにします。
(5)[セル]ウィンドウの線を、適当な長さに四分割します。
(後で比較キャラクターを四体、描くからです)
(6)[ツール]パレットから[投げ縄選択]ツールを選択します。
[投げ縄選択ツールオプション]の[画像を移動させる]のチェックをオンにしておきます。
また、[編集]メニュー→[設定]→[ベクターの選択方法]で選択モードは、[一部でもかかるものを選択]をクリックしておきます。
こうすると、文字通り、少しでも選択範囲にかかればベクター線全体を選択対象にできます。
(7)[セル]ウィンドウで、分割した左側の線の一部分を[投げ縄選択ツール]で囲います。
上手く選択できた場合は、その線の[中心線]が表示されます。
(8)[編集]メニューから[コピー]を実行します。
(9)[編集]メニューから[ペースト]を実行します。
(10)[セル]ウィンドウ上で、[投げ縄選択ツール]で、線に触れる程度で丸く選択したのが、矩形(四角く)選択範囲の形状が変化します。
オリジナルの位置に同じものが貼り付けられていますが、この状態ではオリジナルの線は選択されていません。
そこで、キーボードの[Shift]キーを押しながら下向き矢印キーを「6回」押します。
[ペースト]されていた線が下へ移動します。
[Shift]キーを押しながら移動すると、矢印キーのみで移動したときの10倍移動するので、 下向き矢印キーを「60回」押した場合と同じ結果になります。
[ペースト]されていた線は下へ、60の幅で移動した事になります。
※マウスのドラッグで適当に移動してしまいたいところですが、ガイド線として均一な間隔を保つため、今回はキーボードで移動していきます。
(11)この後は先ほどコピーしたデータがクリップボード内に残っているので、[コピー]は省略できます。
[ペースト]を実行して、キーボードの[Shift]キーを押しながら下向き矢印キーを「12回」押すと三段目ができます。
少し手数はかかりますが、
同様に、[ペースト]を実行して、[Shift]キー+下向き矢印キーを「18回」、「24回」、「30回」、「36回」、「42回」、「48回」と繰り返して、合計9本にします。
(八頭身キャラクター用の罫線が出来上がります)
(12)今度は、右側の「二頭身キャラクター用罫線」を作成します。
右側上の線を[投げ縄選択ツール]で囲い、[コピー]を実行して、[ペースト]後、[Shift]キー+下向き矢印キーを「24回」、「48回」と実行します。
(13)今度は、中右側の「三頭身キャラクター用罫線」を作成します。
中右側上の線を[投げ縄選択ツール]で囲い、[コピー]を実行して、[ペースト]後、[Shift]キー+下向き矢印キーを「16回」、「32回」、「48回」と実行します。
(14)最後は、中左側の「三頭身キャラクター用罫線」を作成します。
中左側上の線を[投げ縄選択ツール]で囲い、[コピー]を実行して、[ペースト]後、[Shift]キpー+下向き矢印キーを「9回」と[Shift]キー無しで下向き矢印キーを「6回」を実行します。
他の罫線作成と手順が少し違うのは、移動した先でその都度、[コピー]を実行して、[ペースト]後、[Shift]キー+下向き矢印キーを「9回」と[Shift]キー無しで下向き矢印キーを「6回」を実行します。
それを後、4回実行して罫線完成です。
2.キャラクター比較図の雛形
さて、説明する比較図用の雛形として、以下の画像を用意しました。
いわゆる「丸チョン」と称する「ラフの前段階」のガイド図(アタリ)と理解してもらえれば良いでしょう。
絵を描くのに不慣れな初心者向けの下書き用雛形図です。
緑プレーンに描いた下絵をもとに赤プレーンにキャラクターを描き込んでいきます。
※サンプルデータ内の「Layout」フォルダ→「LO0002.dga」をライトテーブルパレットに読み込んで使ってみてください。
◆ラフな頭身表
まず、大きさの基本となる頭身表です。
八頭身から二頭身まで表の高さは同じにして、細かい部分は描かないで比率を比較しています。
次の性格付けによって、頭身が絞り込めます。
【各頭身の道化師キャラ】
この講座で後々登場して貰う為に「道化師」と云う設定にします。
八頭身:リアルですが可愛気が表現出来ません。
五頭身:簡略化し易くなりますが、まだ可愛気が足りません。
三頭身:可愛気が程良いでしょう。
二頭身:可愛さは十分ですが、手足が短いため小芝居に向かないですね。
キャラクターデザインの最重要ポイントは「デフォルメ(誇張)」です。
リアルなキャラクターが駄目と云う意味ではなく、「簡略化と誇張」によってアニメーション制作作業の効率化を目的としています。
3.三面図の作成
「三頭身の三面図」ラフのラフ。
演技や動作を考慮して三頭身キャラクターにしましょう。
アニメーションは色んな向きからキャラクターを見せる必要がある為「三面図」を作成します。コスチュームもこの段階で決定します。
新しいセルを開いて、ラフのラフを描画します。
この「ラフのラフ」をもとに、少し線を整えて、ラフを作成します。
新規にセルを作成し、[ライトテーブル]パレットに「ラフのラフ」を登録して線を整えます。
さらにもう一度、「三頭身の三面図」をラフからクリーンアップします。
彩色する事を考慮してキャラクターの細部を整えます。
(影線や色トレス線部分を決定します)
(3)レイアウトの練習課題/パース
この講座の内容を簡便にする為に、大前提として
「道化師はサーカスの様な大きな組織には属していない設定」
その為、背景美術設定は街角が主な舞台とします。
練習課題として「夜の森にたたずむ道化師の周りを飛ぶ妖精」をレイアウト作図します。
1.消失点レイヤーの準備
(1)[新規セル]を作成し、[直線]ツールで遠景の水平線を引きます。
(2)[レイヤー]パレットの[新規レイヤー作成]ボタンをクリックして[消失点レイヤー]を作成します。
[新規レイヤー]ダイアログでレイヤーの種類[消失点レイヤー]を選択します。
(3)[OK]ボタンをクリックすると、続けて[消失点]ダイアログが表示されるので、先ほど引いた水平線上を「クリック」します。
「赤いポイント」と放射線が表示されます。
「赤いポイント」をドラッグして適当な場所に移動します。
※「消失点」は、基本的に水平線上に置きますが基準線が垂直線の場合もあるので、パースの取り方は一概に説明できないのです。
(4)[OK]をクリックして[消失点]が確定しました。
([消失点]レイヤーはガイド用レイヤーなのでいつでも変更が出来ます)
2.レイアウトの作画
(1)[レイヤー]パレットで[ベクター作画レイヤー]に切り替えます。
(2)[パース線]に沿って、地面のラフ画を描きます。
森の中を表現しようとしています。まずは、手前に生えている木の幹を描きましょう。
あまり理屈で考えないで、雰囲気で描き進めましょう。
普段からスケッチ等をしておくと、比較的簡単に描けると思います。
(3)奥行き(パース)を感じさせるように、遠くに見える木は小さく描きます。
例えば、★印がついたパース線を参考に、枝ぶりや幹の太さを手前の木より割合的に小さく描きます。
しかし、あまり規則正しく配置するとランダムな感じが失われるので、適当に乱れていても構いません。
更に、森の奥をシルエット風に描きます。
(4)「色トレース線プレーン2(緑色)」に切り替えます。
(5)今回のレイアウト練習は「森の妖精と道化師が出会った」と云う設定です。
キャラクターの大きさや位置決めのラフ線を「色トレース線プレーン2(緑色)」で仮描画します。
レイアウト上での、線色を使い分ける基準は、実際にペイントする色ではなくて、「背景は黒線」「キャラクターは赤線」「その他の表現は緑線や青線」を使いますが、こだわる必要はありません。
紙作画と違って、STYLOS上では線をプレーンで管理しているので、さしあたって使用しないプレーンを下描き用に流用しても良い訳です。
新規に「ラスター下描きレイヤー」を作成しても構いませんが、下描きの仕方によってはファイルが重くなる場合があります。
(6)「色トレース線プレーン(赤)」を使用して、キャラクター「妖精」を光で表現する位置を描画します。
(7)メインキャラクター「道化師」のディテールを、「色トレース線プレーン(赤)」に描画します。
「色トレース線プレーン3(青)」を使って、「地面影」を描画します。
キャラクターのディテールを描き込めば、ラフ・レイアウトの完成です。
3.影指定の作成
ちょっと味気ないので「影指定レイヤー」を追加して少しだけ「ぬり絵」をしましょう。
(1)[ツール]パレットの[影指定作成]ボタンをクリックして、「影指定レイヤー」作成と「描画モード切替」をします。
[ペンツールオプション]の「設定2」ボタンを選択して、「線の太さ」を5mm位にします。
「筆圧を線の太さに影響させる」の項目をオンにします。(太い絵の具筆の感じです)
※[ペン]ツールは設定を3つまで記憶しておくことができます。
(2)デフォルトで入っている、各「色設定」を適当に使って、「森の暗さ」を表現してみました。
「ぬり絵」作業は、本来の影指定機能の目的とは違う使い方ですが、雰囲気つくりに使うと良いでしょう。
今回のラフ画とレイアウトは、すべてカットフォルダの「Layout」フォルダ上で作成しました。
次回は、キャラクターに影をつけて原画作成の予定です。
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