表現色とモノクロレイヤー
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使用したバージョン:CLIP STUDIO PAINT Ver.1.6.7
[1]レイヤー表現色
[2]モノクロ・グレーレイヤーの作成
[3]レイヤー別の表現色操作
[4]保存・印刷
[5]表現色モノクロ時のツール挙動
この講座では、主にモノクロ表現色の使い方を解説します。
[1]レイヤー表現色
1.表現色とは
「表現色」とは、ファイルやレイヤーの中で何種類の色を扱えるかを表す用語です。
CLIP STUDIO PAINTでは、レイヤーごとにモノクロ、グレー、カラーの3種類の表現色を設定出来ます。
■モノクロ
1種類または2種類の色と、透明を扱える表現色です。完全な2階調のデータ(2値画像)を作成できます。
設定によって、レイヤーで扱う色を黒と透明、白と透明、黒と白と透明に切り替えることができます。
印刷用マンガのデータや、線画レイヤーなどで使用します。
以降の説明では、表現色に関するさまざまな情報を掲載しています。
多くの情報を記載していますが、モノクロ印刷用のマンガ原稿を作成する時は『表現色を「モノクロ」にしておく』ということさえ覚えておけば、基本的に問題ありません。
■グレー
256色の無彩色を扱える表現色です。
黒と透明、白と透明、黒と白の組み合わせを設定でき、それぞれ256段階に混色した色を使用できます。
階調のある白黒画像や、Webサイトなどのディスプレイ上で表示するモノクロ画像で使用します。
■カラー
およそ1677万色を扱える表現色です。
人間の目で区別できるほとんどすべての色を扱うことができます。
カラーイラスト、カラーマンガなど、有彩色のある画像で使用します。
レイヤーアイコンについて
モノクロ、グレー、カラーのレイヤーには、下図のレイヤーアイコンが表示されます。
モノクロ、グレーのアイコンの右下の四角は、使用している描画色を表します。
※減色のプレビュー中を除き、キャンバスの基本表現色と同じ表現色のサムネイルは表示されません。
(減色プレビューは「[3]レイヤー別の表現色操作」→『1.ラスター・ベクター・テキスト・フキダシレイヤー』で、
基本表現色は「[2]モノクロ・グレーレイヤーの作成」→『1.基本表現色を設定』で解説します。)
2.モノクロ・グレーレイヤーの概要
モノクロ・グレーレイヤーでは描画に使用できる色(描画色)を、黒、白、透明から選択します。
レイヤーの作成時や、[レイヤープロパティ]パレットなどでは、レイヤーの表現色を選択する下図のようなインターフェイスが表示されます。
①表現色……クリックして「カラー」・「グレー」・「モノクロ」から表現色を選択します。
②描画色……「グレー」・「モノクロ」レイヤーの場合に表示されます。
描画に使用する色が特定の色に限定されます。黒白のボタンをクリックして、それぞれ下記の組み合わせから使用する色を選択します。
■モノクロレイヤーの場合
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黒ボタンだけをオンにする……描画色が黒と透明に設定されます。[ツール]パレットで描画色を選択している場合、選択している色にかかわらず常に黒で描画します。透明色を選択している場合は透明で描画します。
白ボタンだけをオンにする……描画色が白と透明に設定されます。描画色を選択している場合は常に白で描画します。
黒白両方のボタンをオンにする……描画色が黒・白・透明に設定されます。選択している描画色の輝度に応じて、黒か白で描画します。
■グレーレイヤーの場合
黒ボタンだけをオンにする……描画色に黒から透明の256段階の色が使用できます。
白ボタンだけをオンにする……描画色に白から透明の256段階の色が使用できます。
黒白両方のボタンをオンにする……描画色に黒から白の256段階の色が使用できます。
[2]モノクロ・グレーレイヤーの作成
1.基本表現色を設定
[ファイル]メニュー→[新規]で、新規キャンバスの作成時に「基本表現色」を設定できます。基本表現色でモノクロかグレーを選択すると、描画色を設定できます。
印刷用のモノクロ原稿を作成する場合は、モノクロに設定します。
基本表現色……そのキャンバス内でレイヤーを作成する場合の、デフォルトの表現色設定です。
[レイヤー]メニュー→[新規ラスターレイヤー]でレイヤーを作成する場合や、[テキスト]ツール、[グラデーション]ツールなどのツールでレイヤーが作成される場合は、基本表現色に従いレイヤーの表現色が設定されます。
基本線数……キャンバス内で作成するトーン線数の初期値です。
[レイヤープロパティ]パレットでトーン化する場合の線数初期値になります。
(EXのみ)複数ページの基本表現色
[ページ管理]メニュー→[ページの追加]でページを追加すると、最初に作成したキャンバスと同じ基本表現色になります。
[ページの追加(詳細)]の場合は、ページごとに基本表現色を設定できます。
基本表現色は、[編集]メニュー→[キャンバス基本設定を変更]で変更できます。
2.新規レイヤーで表現色を設定
基本表現色とは異なる表現色のレイヤーを作成する場合は、 [レイヤー]メニュー→[新規レイヤー]→[ラスターレイヤー]、[ベクターレイヤー]を選択して[新規レイヤー]ダイアログの[表現色]で任意の表現色、描画色を選択します。
[3]レイヤー別の表現色操作
レイヤーの種類によって、レイヤー作成時に設定される表現色や、表現色を変更する方法に違いがあります。
1.ラスター・ベクター・テキスト・フキダシレイヤー
レイヤー作成時に表現色を選択できる場合を除き、レイヤーを作成すると基本表現色と同じレイヤー表現色になります。
表現色の変更
レイヤーの表現色は、[レイヤープロパティ]パレットの[表現色]、もしくは[レイヤー]メニュー→[レイヤーの変換]で変更できます。
減色変換
カラーからグレーやモノクロに変換する場合のように表現色が減る変更では、変更後の表現色では使用できない色を変換する、「減色」という処理をする必要があります。
[レイヤープロパティ]パレットで表現色を変更する時に、減色処理が発生する場合、[レイヤープロパティ] パレットの表示が[表現色(プレビューしています)]と表示されるとともに、レイヤーアイコンが赤枠で囲われ、減色の結果をプレビュー表示します。
この状態では、変換前の色情報を保持しているため、表現色を元に戻すと描画内容も元通りになります。
[プレビュー中の表現色を適用]をクリックすると、プレビュー内容で変更が確定され、変換前の色情報は破棄されます。元の表現色に戻しても描画内容は戻りません。
描画内容を戻したい時は、[編集]メニュー→[取り消し]などで操作を戻す必要があります。
[レイヤー]メニュー→[レイヤーの変換]で表現色を変更する場合は、プレビューせずに確定します。
ラスターレイヤーでのモノクロ減色
ラスターレイヤーをモノクロに減色する場合、[レイヤープロパティ]パレットに2値データに変換する際の設定が表示されます。
色の閾値……元の描画内容のうち、黒、白、透明に振り分ける基準値です。数字が大きいほど黒に変換される色が増えます。
変換前の表現色がグレーで、描画色が「黒のみ」と「白のみ」の場合、この設定は表示されません。アルファの閾値……元の内容のうち、黒、白、透明に振り分ける基準値です。「色の閾値」と違い、不透明度を対象にした閾値になります。
レイヤーの不透明度を反映……オンにすると、レイヤーの不透明度を加味して変換します。
加色変換
モノクロからグレーやカラーに変換する場合など、表現色が増える変更では、すでに描画されている内容は変更されません。
例えば、モノクロレイヤーに描画した線は、グレーレイヤーに変更してもアンチエイリアスが追加されることはありません。
[テキスト]ツールを選択して[サブツール詳細]パレット→[テキスト]→[アンチエイリアス]で、テキストレイヤーを新規作成するときのアンチエイリアスの有無を個別に選択できます。
[キャンバス設定]を選択すると基本表現色に従います。
基本表現色がモノクロの場合はアンチエイリアスなしに、それ以外の場合はアンチエイリアスありになります。
[オン]、[オフ]に設定すると、基本表現色にかかわらず、アンチエイリアスの有無が設定できます。
2.べた塗り・トーン・グラデーション・色調補正レイヤー
べた塗り・トーン・グラデーション・色調補正レイヤーは表現色を設定できませんが、レイヤーマスクでマスクされる部分を2値データで表示するか、階調をもたせるかを選択できます。
べた塗り・トーン・グラデーション・色調補正レイヤーのようにレイヤーマスクを持つレイヤーは、[レイヤープロパティ]パレットで[マスクの表現]が使用できます。
階調……[あり]か[なし]を選択できます。
[あり]でレイヤーマスクのアンチエイリアス、階調を加味してマスクします。
マスクされた部分の境界は階調を持った表現になります。
[なし]にすると、マスク階調の透明度に応じて完全にマスクする部分と、まったくマスクしない部分に(2値化して)分けます。
キャンバスの表現色がモノクロの場合は[なし]が、それ以外の場合は[あり] が初期値になります。
モノクロ印刷ではトーンモアレの原因になるので、特別な事情がない限り[なし]のままにすることをおすすめします。閾値……[階調]を[あり]から[なし]に変更した場合に表示されます。
階調のあるマスクを2値に分ける基準値です。数値が大きいほどマスクされる範囲も大きくなります。
[マスクの表現]は、何度変更しても減色は発生しません。
また、基本表現色モノクロのキャンバスでグラデーションレイヤーを作成すると、トーン化がONの状態で作成されます。
トーンの線数はキャンバスの基本線数になります。
3.画像素材・3Dレイヤー
画像素材レイヤー・3Dレイヤーは、素材固有の表現色を持ったレイヤーとして作成されます。
ただし、[レイヤープロパティ]パレットの[効果]で、[減色表示]が使用できます。
[減色表示]を選択すると、グレー・モノクロに減色変換した表示にできます。
モノクロの場合は、2値データに減色する設定を操作できます。
[ラスタライズ]や[レイヤーの変換]を実行しない限り、もともとの表現色は失われず、[減色表示]はいつでもオフにできます。
ラスタライズ、保存、印刷するときはこの「減色表示」の設定に従い変換されます。
4.コマ枠フォルダー
コマ枠フォルダーの表現色は、枠線の表現色にのみ影響します。
表現色がモノクロだと、枠線は常に2値データで描画されます。
また、基本表現色がモノクロの場合は、[新規コマ枠フォルダー]ダイアログで[アンチエイリアス]を選択できず、枠線が2値データの状態で作成されます。
カラー、グレーレイヤーの場合は新規作成時にアンチエイリアスの度合いを選択できます。
[素材]パレットのコマ枠テンプレートも、基本表現色に従い表現色が設定されます。
コマ枠フォルダーの表現色は枠線に影響しますが、内部のレイヤーに影響しません。
コマ枠フォルダーがモノクロであっても、内部のカラーやグレーのレイヤーはそのとおりの表現色で表示されます。
5.選択範囲レイヤー・クイックマスク
選択範囲レイヤー・クイックマスクでは、表現色を設定できません。
たとえモノクロレイヤー上でも、アンチエイリアスを有効にしている[選択範囲]、[自動選択]ツールで作成した選択範囲はアンチエイリアスが入ります。
ただし、選択範囲にアンチエイリアスが入っていても、モノクロレイヤー上で描画、塗りつぶし、消去などの編集する内容には影響しません。
[4]保存・印刷
[ファイル]メニュー→[画像を統合して書き出し]、[印刷設定]では、出力時のダイアログで表現色をモノクロにすることができます。
[最適な色深度を自動判別]は、キャンバス内にある各レイヤーの表現色を元に決定されます。
その他の場合は基本表現色にかかわらず、指定した表現色に変換して出力します。
[5]表現色モノクロ時のツール挙動
モノクロレイヤーに描画する場合に、ツールのパラメータは一部無効になります。
[ペン]、[鉛筆]、[筆]、[図形]などの描画ツール
アンチエイリアス・下地混色・水彩境界は無効になります。
アンチエイリアスや階調のある描画ツールで描画しても、2値データとして描画されます。
モノクロ印刷用に階調のある表現をしたい場合は、グレー、カラーのレイヤーに描画してから、[レイヤープロパティ]パレットの[トーン化]を有効にします。
トーンに変換することで擬似的に階調のある表現ができます。
[ドットペン]サブツール
上記の描画ツールに加え、ブラシ濃度、不透明度が無効になります。
[塗りつぶし]ツール
アンチエイリアス、不透明度が無効になります。
[グラデーション]ツール
[レイヤープロパティ]パレットの[描画対象]が、[編集対象のレイヤーに描画]になっている場合、アンチエイリアスが無効になります。
この状態でグラデーションツールを使用すると、白と黒にはっきりわかれた描画になります。
モノクロでグラデーションの表現をする場合は、[描画対象]を[グラデーションレイヤーを作成]に変更しておきましょう。
[オブジェクト]サブツール
モノクロレイヤー上のベクター線、フキダシ、コマ枠フォルダーを操作する場合は、アンチエイリアスと下地の不透明度が無効になります。
表現色がモノクロ、グレーのベクターレイヤー上に、ペン先形状にカラーを持つツールで描画してから表現色をカラーに変換した線は、ブラシ先端の持つ色で表示されます。
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