提供者 : セルシス    更新日 : 2015/06/30   
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3. 演出

[1] 性格の演出

頬の色味を加える、チークカラーによるさまざまな印象の演出事例です。
色を乗せるときに、あまりぼてっとおいてしまうと、“くいだおれ太郎”のようになってしまいます。ちょっとコミカルな雰囲気ですよね。コントの舞台など、意図的にそのように使用することもありますが、一般的なメイクでは、ふわりと柔らかくパウダーを乗せてなじませます。

                   
明るくて可愛い 大人っぽい
チークを頬の中央に丸くポンポンとおくように色を乗せます。ピンク~オレンジ系です。シアー(透明)感のある明るい色が合います。 チークは頬の横から斜めに、シャープに入れます。横長な形です。カラーは、オレンジ~ブラウン系です。
チーク

頬に色があると、ぐんと元気に見えます。「上気した頬」という言葉にもある通り、血色がよく見えるからです。

[2][老け]・[疲れ]の演出

老けや生気がない暗く疲れた雰囲気を表現するには、暗い色でメイクをすればいいのかというと、実はそうではありません。目の周りをぐるっと黒っぽい色で囲むと、どちらかといえばアートな印象に仕上がっていきます。
実はこういった[老け][疲れ]には、むしろメイクそのものを感じさせないように、カラーを使わず眉毛なども整えないでぼさっとした毛流れを出していくと、暗い無気力感が出ます。
実際に触ってみると判るのですが、骨のない皮膚・肉だけの箇所は[老け]および[疲れ]により痩せて落ち窪みます。また、老化現象として皮膚がたるみ皺を成します。つまり、その位置に影や線を加えると、[老け][疲れ]の演出を行うことができるのです。


老け・疲れポイント

老け疲れポイント

(1)こめかみ
実際に触ると判るのですが、この部分は少し窪んでいます。

(2)瞼(眼窩)
[老け][疲れ]ともよく現れる部分です。影を付けます。

(3)目尻
[老け]向けです。「カラスの足あと」とも呼ばれている、目尻にある複数の皺です。

(4)目の下(クマ)
ここも[老け][疲れ]がよく現れます。目の下の「クマ」と呼ばれている箇所です。疲れた演出として、目の下に黒く線を描くなどはマンガでもよくありますね。疲れにより、この目の周囲が落ちくぼんできます。より落ちくぼむと、二重の線でくっきりと影が入ります。[老い]によるたるみは「影」が線に沿って出来てくるので、老化の演出には黒っぽい色が使いやすいでしょう。また、ここに青色が使われると、病的な印象になります。

(5)ほうれい線
[老け]向けです。たるみで、小鼻から口の端に向けて影ができます。

(6)鼻の下
[老い]向けです。張りがない、影感を付けます。

(7)頬
[疲れ]向けです。「頬がこける」などとも言われる通り、骨がなく肉が主なので、ゲッソリと痩せた印象が出ます。

(8)口の端
イラストで加齢の表現としてよく見かけます。こめかみ上部分・眼窩・頬・顎といった箇所が窪んでゆくことで影を作ることで [老け]・[疲れ]にニュアンスが出ます。口角がさがっていると、加齢によるたるみがより伝わります。

(9)顎
ここには影というより、少しハイライトを入れることで高さを出すと、(4)や(5)などが際立ちます。


影・皺だけでなく、髪だけでなく眉毛にも白髪(白いカラー)を入れたりして、[老い]感を強く付けることもできます。それぞれのキャラクターの設定に合わせて要素を取り入れてみてください。



[3] ステージ向け演出

ステージ(舞台)向けの判りやすい演出例です。バレエの舞台を例としました。

キャラクターが大人の女性であることを敢えて強調したい場合や、設定などで常にばっちりメイクをしていることを表現したいこともあるかとおもいます。「ぱっと見て観客に瞬時にイメージが伝わる」ことを目的とした時にこそ使える色使い・テクニックもあります。

(1) 女性編

目や唇といったパーツ間の調和を取らず、それぞれをいかに目立たせるかと考えると判りやすいでしょう。


舞台向けの目立つメイク 女性舞台メイク

目には「Wライン」として、瞼上の眼窩にそってラインをひきます。更に、下瞼部分にもアイラインにそってラインを入れます。これにより「目はここにある」ということを遠目からも判別できるからです。ただし、完全に囲みきってしまうと却って目が小さく見えてしまうので、わずかに一部を開放します。 横顔も強調されるように、ハイライトや眉毛もしっかりしたものを入れます。

舞台ですと「つけまつげ」を用いますが、これを貼る位置に注意します。通常、本来まつ毛が生えている位置に貼ると考えられがちですが、舞台向けのメイクなのであればそれより外の位置に付けます。これにより、見ている側が「ここまでが目」という認識を持ち、更に大きな目だと思ってくれるからです。

Wライン/つけまつげの位置

Wラインつけまつげの位置

リップラインはくっきりしたピンクや赤を使用します。シアー(透明)よりもマットな色です。そのリップの色に合わせて、チークはリップと同系色を広く・丸く入れます。額にはシェーディングをして、更に立体感を加えましょう。


(2) 男性編

女性向けとは異なり、色を多用せずブラウンを中心としたワントーンで、本人の顔を生かすようにします。

眉毛は毛流れにそってスッとした横長な線を意識して描き足します。女性向け同様Wラインを入れますが、あくまでも直線的に、台形に近い仕上がりです。リップは塗りません。それは、バレエの場合は役者に「台詞」がないことも関係しています。目立出せるべき部分をより目立たせるために、そうでない要素は引き算していくのです。
チークはカラーではなくシェーディングをします。
Tゾーンについては、1.基本 [2]ハイライトとローライトの箇所でご紹介したように、男性的演出としてハイライトを直線的に入れ、完成です。

男性舞台メイク


おわりに

いかがでしたでしょうか?
メイクについて詳しい方も、そうでない方も、いろいろな演出の「気付き」となるかもしれません。
『メイクアップによる魅せる演出』を、是非とも作品制作のテクニックとして採り入れてみてください。

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