9.人工物の質感表現
閲覧数 : 21523回 総合評価 : 4件
1.色作りについて
私が色を選ぶときは、[カラーセット]パレット(①)の中で目的の色に近い色を選択した後、[カラー]パレット(②)の[HSV]タブにあるバーで色相(H)彩度(S)明度(V)を調節しています。
IllustStudioには[カラーサークル]や[カラーガイド]パレットもあり、色の選択方法が豊富で、どれを選ぶかは好みの問題ですが、色が数値で表示され微調整がしやすいHSVバーはオススメです。
選んだ色をすでに塗ってある周りの色となじませたいときは、今回使用するオリジナル[カスタム平筆]のような下の色が混ざるブラシで色を塗り重ねた後、中間の色を[スポイト]ツールで拾い、再び塗り重ねる…という手順を、イメージ通りの色になるまで繰り返します。
[鉛筆]・[ペン]ツールなどの描画系ツール使用時は、[Alt]キーを押すと、押している間だけ一時的にスポイトツールに切り替わるので、[ツール]パレットで[スポイト]ツールを選択するより効率よく色を拾えます。
■ショートカット(キーボードでの操作)
[スポイト]ツールの一時切り替え | [Alt]キー+クリック |
2.ブラシサイズの調整について
タッチに変化を出したいので、ブラシサイズは頻繁に変更します。[Ctrl]+[Alt]キーを押しながらキャンバス内でドラッグすると、素早くブラシサイズを変更できます。
ドラッグ開始地点から近い場所でドラッグを終了するとブラシサイズが小さくなり、開始地点から離すほど大きくなります。
細かいヒビなどを描き入れたい場合はペンのように小さくし、広い範囲をうっすらと塗りたいときはブラシサイズを大きくします。
■ショートカット(キーボードでの操作)
[ブラシサイズの変更 | [Ctrl]+[Alt]キー+ドラッグ |
3.コンクリートの描写
コンクリートの表面の質感は、[水彩]ツールの描き味を生かしたムラのあるタッチで描きます。反対に、陰影は境目がグラデーションになるような、塗り跡の見えない柔らかいタッチで描きたいので、後から別のレイヤーに描き入れることにします。
先に質感や汚れなどを描いておけば、陰影を付ける事だけに集中できるので、立体感を表現しやすいという利点もあります。
(1)まず、絵の中心になる踊り場の部分から質感を描き加えていきます。
8.レイヤーの塗り分けで塗り分けたレイヤーに、オリジナル[カスタム平筆]で厚塗りします。コンクリートの汚れやひび割れも基本的には同じ方法で、大まかなストロークで新しい色を加えた後、周りの色を拾って輪郭を整えたり、なじませたりしながら塗ります。
また、描写が単調にならないように、小石(あるいはコンクリートの破片)もところどころに描き入れています。
①ただのコンクリートでも、古ければ汚れて黒ずみ、表面が崩れていたりします。補修されたために一部分だけ新しくなっていたり、雨に打たれて筋状に色あせていたり、苔が生えていたりするので、それを考慮して濃い灰色や白、緑色を加えます。
②左側の斜めになっている壁を描くときは、角度がついて見えるように、下図の矢印のようなストロークでブラシを入れています。
また、合わせて[カスタム平筆]の[ツールオプション]で[向き]を「/」(235.0)から「\」(325.0)のような角度に変えて、左上から右下にブラシを入れたとき、ストロークが細くなるようにしています。
(2)階段もコンクリートなので、踊り場と同じ要領で描き込みます。メリハリが出るように、奥にある最下段の方はあまり描きこまず、手前にある最上段の付近を詳しく描いています。
白い点はコンクリートの中に含まれる粒をイメージしています。
あまり点を打ちすぎると汚くなるので、埋め尽くさない程度に描き込んでいます。
4.車止めと手すりの表現
次は近景の車止めと階段の手すりを描きます。
実物はかなりひどく錆びていて、白い塗装が施してあったはずなのに、地の色が茶色かと思うほど錆で埋め尽くされていました。
とりあえず、それを参考にした色とタッチで塗ってみます。
(1)オリジナル[水彩ベタ]で錆の色を大まかに塗ります。
(2)錆具合によって色が違うので、オリジナル[カスタム平筆]で焦げ茶と赤の2色を混ぜながら形を整えます。
また、表面の丸みを表現するために、カーブに沿った塗り跡を薄く残しています。
……ここまで描き込みましたが、錆の描写が目立ちすぎて絵の中で浮いています。
一旦このまま置いておき、後からフィルタをかけて調整することにします。
5.その他
コンクリートを細かく描き込んだので、メリハリをつけるために、電柱や民家はあまり詳しく描き込まず、あっさりと仕上げます。
民家の壁面と屋根は、線が入っている方向へ沿うようにブラシを入れて、ムラを作りつつも雑に見えないように気をつけています。
民家の壁はほとんど影になりますが、屋根は最終的に光が当たっている感じに表現したいので、明るい色も入れておきます。
屋根の線の向きにそって線を引いたときに線が太くなるように、オリジナル[カスタム平筆]の[ツールオプション]で[向き]を真横「-」(90.0)に変更してから塗っています。
街灯や奥にある車止めは、[カスタム平筆]のサイズを大きくして、薄く塗り重ねることでシンプルに表現しました。
コメント