パース描写-3Dワークスペースを作る-
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IllustStudioの3Dワークスペースやパース定規を利用すると、パースペクティブを利用した描画を進めることが可能です。ここでは「3Dワークスペース」について紹介します。
[1]3Dワークスペースの作成
3Dオブジェクトを読み込まず、3Dワークスペースだけを作成する手順を紹介しましょう。 3Dワークスペースの基本的な使い方は「3Dオブジェクトを使った下描き」をご覧ください。
(1)[レイヤー] メニュー→[新規レイヤー]→[3Dワークスペース]を選びます。
(2)下図の様に3Dワークスペースを作成する範囲を選びます。
範囲を決定すると、3Dワークスペースが作成されます。
キャンバスより大きく範囲を指定しても、キャンバスと同じ大きさの3Dワークスペースが作成されます。
作成した3Dワークスペースはハンドルをドラッグして大きさを後から変更することも可能です。
その際、3Dワークスペースの中心点の位置に注意しておきましょう。
(3)3Dワークスペースが作成された直後は[3Dワークスペースプロパティ]パレットが表示されます。
また、[レイヤー]パレットには[3Dワークスペース]レイヤーフォルダが作成されます。
フォルダの中には[3Dプレビューレイヤー]が格納されています。ここに読み込んだ3Dファイルのプレビューや3Dグリッドが描画されています。こ のレイヤーに直接描き込むことはできませんが、「3Dワークスペース」フォルダ内に新しく描画系レイヤーなどを作成すれば、そこに描画できます。
[2]3Dグリッドの表示と移動
3Dワークスペースでは、立体的なグリッドを表示できます。
グリッドの表示は[3Dワークスペースプロパティ]上部の[グリッド]ボタンで選択します。3つをそれぞれ組み合わせて表示することも可能です。
[3Dワークスペースプロパティ]パレットで[カメラ]を操作すると、3Dグリッドの表示位置や回転、大きさを調整できます。
[カメラ]の調整は、カメラマンを移動させるイメージで行います。
例えば、[移動]の[左右]のスライダーを「右」に動かすと、3Dグリッドは「左」に移動します。
同様に、[移動]の[左右]のスライダーを「左」に動かすと、3Dグリッドは「右」に移動します。
実際に、デジタルカメラや携帯電話のカメラ機能を使ってみると、カメラの移動とは逆方向にファインダーの中に映る被写体が移動するはずです。この仕組みをよく理解した上で[3Dワークスペースプロパティ]パレットを操作すると、イメージしやすくなります。
[3]パースの強さ、3Dグリッドの大きさの設定
パースの強さは、カメラレンズの「望遠(ズーム)」か「広角(ワイド)」のどちらかで決まります。
ズームレンズは、デジカメなどでも「n倍ズーム」などと呼ばれているので目にすることも多いでしょう。遠くにある被写体を拡大して映し出すことのできるものです。広角はその反対です。
望遠 | パースが強い |
広角 | パースが弱い |
パースの強さは、[3Dワークスペースプロパティ]パレットの[パース]で設定します。
[パース]を「5」に設定した状態でPC教室の3Dオブジェクトを表示させました。手前と奥にあるディスプレイや机と椅子の大きさに、それほど変化がありません。
下図は[パース]を「5」に設定して、3Dグリッドを表示した状態です。これは遠くから望遠レンズを使って拡大して撮影した状態になります。
[パース]を「40」に設定しました。PC教室の椅子と机、ディスプレイなどが手前と奥で、大きさに変化があります。
下図は[パース]を「40」に設定して、3Dグリッドを表示した状態です。これは被写体に近づいて広角レンズで撮影した状態になります。パースの強さによって見え方の違いが発生します。
また、3Dワークスペースを表示させている状態で、[3D選択]ツールを選んでいると、3Dワークスペースでカメラの向きと連動した消失点が表示されます。3Dグリッドとカメラは完全に連動していますので、これは3Dグリッドの消失点と同じです。
同じものであっても、近くにある時は大きく見え、遠くにあるときは小さく見えます。それを利用する方法が遠近法(透視図法/パースペクティブ)です。
遠近法(透視図法)では、画面内にある平行線をずーっと延長していって、交わった点を「消失点」と呼びます。伸ばした平行線に平行な線であれば、画面内のどこにあっても、必ずこの「消失点」に向かって伸びていきます。
たとえば、上図では机はみな平行に並んでいます。また、パソコンのディスプレイや、窓枠の線も平行に並んでいるので、同じ青い点の位置に収束します。
「まっすぐ同じ方向に並ぶ机」「四角い部屋の壁や床」などはみな同じ方向にだんだん小さく見えていき、それらの線を結ぶとかならずひとつの点に集まります。この点が「消失点」です。上図で消失点が3つあります。これを3点透視図法と呼びます。
遠近法(透視図法/パースペクティブ)では、同じ方向を向いている四角い箱は、この消失点が同じ位置にあります。街に立っているビルなどの建築物も、同じ向きで建っていることが多いので、背景などを描くときに役立つものです。
消失点は、キャンバスの外に設定されることが多く、その設定のためにパース定規などが有効に利用できるようになっています。
また、被写体との向き合う角度によって、消失点の数が変わることもあります。
被写体と真正面に向き合うと、線の収束する先がひとつだけになります。
これを1点透視図法と呼びます。
1点透視の状態から、被写体に対して横方向にだけ回転した状態では、線の収束する先がふたつになります。これを2点透視図法と呼びます。
3Dグリッドの大きさを変更したい場合は、[距離]のパラメーターを設定します。[距離]の数値を大きくするほど、上図の用に3Dグリッドは小さく表示されます。
[距離]の数値を小さくすると、逆に3Dグリッドは大きく表示されます。
[4]1/2/3点透視の設定
1/2/3点透視のアングルを3Dワークスペースで作成する場合の[3Dワークスペースプロパティ]での各パラメーターの設定についてまとめておきましょう。
1点透視は消失点がひとつだけ存在します。被写体とカメラの向きが全く同じ状態です。3Dワークスペースで1点透視を再現する場合のパラメーターの設定は以下の通りです。
[カメラ]を選んだ状態で[回転]の項目内の[垂直]と[水平]のパラメーターをそれぞれ「0」に設定します。この状態で、「縦」「横」の3Dグリッドは真横から見える状態になるので、一本の線にしか見えません。「正面」の3Dグリッドのみが正面に見えるだけになります。
2点透視は消失点がふたつ存在します。被写体に対して、カメラが「真横」に回り込んでいる状態です。3Dワークスペースで2点透視を再現する場合のパラメーターの設定は以下の通りです。
[カメラ]を選んだ状態で[回転]の項目内の[垂直]を「0」に設定して、[水平]のパラメーターは必要な数値に設定します。この状態で、「横」の 3Dグリッドは真横から見える状態になるので、一本の線にしか見えません。「正面」「縦」の3Dグリッドが見えますが、横方向に向かう選のみ消失点に向 かって変形するので、格子模様は垂直に交わっているように見えません。
3点透視は消失点が3つ存在します。被写体に対して、カメラが「横」と「縦」に回り込んでいる状態です。一般的なカメラで撮影された構図では一番見ることができるアングルとも言えます。3Dワークスペースで3点透視を再現する場合のパラメーターの設定は以下の通りです。
[カメラ]を選んだ状態で[回転]の項目内の[垂直]と[水平]のパラメーターを必要な数値に設定します。この状態では「正面」「縦」「横」のすべての3Dグリッドが見えます。3Dグリッドの格子模様は、それぞれ消失点に向かって変形しているので、垂直に交わっているように見えません。
このようにして、3Dワークスペースと3Dグリッドを活用しながら、自分の好きなアングルを作成すると、消失点の位置関係をIllustStudioが計算して正しく調整することが可能です。正確な消失点の位置を計算する必要がある場合は、3Dワークスペースと3Dグリッドを うまく組み合わせて利用するといいでしょう。
パース定規では、各消失点の位置を自由に設定できます。
しかし、極端な位置にも消失点を設定できてしまうため、構図が歪んで見えてしまう恐れもあります。
一方、すでに解説したように、「3Dワークスペース」では、「回転」や「パース」の値に応じて各消失点の位置が連動して動くので、破たんした構図になりにくく、ガイドとして使用しやすいというメリットがあります。
もちろん、パースの値を大きくし過ぎたり、中心点から遠い位置を使うと大きく形がゆがんでしまいます。
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