水彩ツールを徹底解剖
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IllustStudioには、水彩のような塗りを再現できる[水彩]ツールが用意されています。[水彩]ツールを使えば、水彩特有の透明感のある着色から、色を塗り重ねていく厚塗りまで、幅広い彩色が行えます。
[1]筆の種類で表現も変わる!
[水彩]ツールのツールセットには、あらかじめいくつかの筆のタイプが収録されています。
[水彩]ツールという名前で括られていますが、油彩など水彩以外の手法に向いた設定も用意されています。
ブラシのパターンやパラメータ次第で、まったく異なる様々な描き味のブラシにカスタムできるのが[水彩]ツールの特徴です。
1.各ブラシのプレビュー
■水彩
水彩風のブラシが揃っています。「不透明水彩」や「丸筆」は比較的クセが少なく、CG的な塗り方にも使えます。「透明水彩」や「雲にじみ」などは、よりアナログ的なタッチを生かした手法に使えるブラシです。
■油彩
水彩に比べると、不透明度が高く下地の色を上から塗りつぶす設定になっています。
■なじませ
このカテゴリのブラシは色を塗れません。下地の色を混ぜたり伸ばしたりするのに使用します。
■その他
「かすれマーカー」という名前が付いていますが、「水彩毛筆」のような用途でも使用できます。
2.各ブラシの詳細
■水彩
不透明水彩
筆圧によって不透明度が変わります。初期設定では少し不透明度が低めに設定されているので、実際には透明水彩と不透明水彩の中間くらいのニュアンスに感じる人もいるかもしれません。
不透明度の値を上げると、ポスターカラーのような完全に不透明な仕上げに、逆に下げれば透明水彩風にも使えます。
また、設定にクセが少ないので、ブラシをカスタマイズする際のベースの設定にも最適です。
透明水彩
[絵の具量]の値が低く設定されているため、全体的に薄い色になります。[水彩境界]がオンになっているので、ストロークのフチに少し色の濃い部分ができて、ブラシタッチが強調されます。
少し濃い色味を出したい場合は、筆圧を強めにかけるか、何度か塗り重ねます。色が薄すぎると感じる場合は、[筆圧設定]を変更しても良いでしょう。
丸筆
ブラシサイズの強弱が付きやすく、筆圧次第でかなり細い線が引けます。
ブラシの入り抜きでストロークを強調したい場合にも使えます。
平筆
丸筆とは違って、サイズは一定のブラシです。平筆風にストロークの端が平らになるのが特徴的な設定です。
塗り&なじませ
一見するとただボケ足の付いたブラシに見えますが、筆圧に応じて[絵の具量]や[絵の具濃度]が変化するブラシです。
筆圧が弱いと下地の色を混ぜ、筆圧をかけるほどに、現在の描画色で描画されます。
すでに色を塗った領域をぼかしたり、色をなじませるのに適した設定です。
水彩毛筆
あまり水を使わずに描いたように、ストロークに沿ってスジが入ります。均質な塗りには不向きですが、ブラシタッチを強調できます。
ざらざら筆
目の粗い紙に不透明水彩で塗ったように、(あるいは壁にペンキを塗ったように)ストロークのフチがザラザラとかすれたニュアンスになります。
雲にじみ
水を張った紙に絵の具を置いたような、柔らかいにじみのパターンです。
筆圧によって不透明度が変化するので、複雑なグラデーションを描けます。
繊維にじみ(塗り混ぜ)
毛羽立った紙や繊維にしみ込んだような、にじみのパターンです。
雲にじみに比べると少し硬めで、異なった質感を表現できます。
また、ペンをストロークせずに点を置くように描画すると、水滴を上から垂らしてはねたような表現ができます。
水多め
「透明水彩」の設定よりもハッキリと水彩境界が強調されます。
水を多く含んだ透明水彩のように、ストロークのフチに色の濃い部分ができます。
水少なめ
ストローク内にザラザラした質感が残ります。他の水彩系ブラシとは少し異なった印象になります。
単体で使う以外にも、すでに色を塗った部分に質感を加えるような使い方もできます。
■油彩
油彩筆
水彩系に比べるとかなり不透明度が高く、マットな仕上がりになります。僅かに下地の色が混ざるのでペンツールなどとは違った表現が可能です。
初期設定ではブラシの[厚み]が若干低く、楕円形のブラシですが、デジタルツールだと割り切って、円形に直してしまう、というカスタマイズもありです。
油彩平筆
水彩の平筆よりも色が濃く、ストロークの端が若干かすれます。あえて不透明度を下げて質感の違う水彩平筆風にカスタマイズするのも良いでしょう。
■なじませ
色混ぜ
円形にボケ足が付いた癖の少ない設定です。「なじませ」系の設定は色を塗るのではなく、すでに塗ってある色を均して混ぜる設定です。色を均してしまうので、下地の質感は若干スポイルされてしまいます。
[硬さ]の値を上げると、初期設定とは逆にストローク感を強調した色混ぜになります。これもデジタルと割り切れば使いどころのあるカスタマイズです。
繊維にじみ(にじませ)
繊維にじみのパターンの色混ぜです。初期設定では、比較的濃い、油彩や不透明水彩的な表現に向いているかもしれません。「色混ぜ」とは違ってかなり荒いニュアンスが残るので、質感を加えることができます。
水彩なじませ
色混ぜですが、水彩境界が付いているのでブラシストロークが強調されます。
透明水彩的なイラストで、ブラシの質感を残したい時などに使えます。
色のばし
他の設定と違って、色を「均す」と言うよりも、最初にクリックした地点の色をどこまでも引きずっていく設定です。
[抜き]の設定がオンなので、キレイなブラシタッチが残ります。
■その他
かすれマーカー
インクの減ったマーカーのように色ムラのある掠れた線がひけます。
水彩毛筆のように、ストロークを強調する用途で使っても良いでしょう。
[2]描画に使うパレット
①ツールセット……登録されているツールセットの一覧が表示されるパレット。また、選択中のツールセットには、各ツールの設定を変更する[ツールオプション]部分が表示されます。[ツールオプション]部分は、パレットとして独立して表示することもできます。
②ツールスタイル……ブラシのサイズや不透明度をあらかじめ設定した値の中から選択できます。
③ツールプレビュー……選択中のツールセットのブラシ形状が表示されます。設定を変更すると、ストローク表示ができます。
ツールオプションの分離
[パレット]メニュー→[ツールオプションの分離]のチェックをオンにすると、[ツールセット]パレットに表示されている[ツールオプション]部分をパレットとして独立して表示することができます。
ツールオプションを分離すると、[ツールセット]パレットにツールオプションは表示されなくなります。
分離した[ツールオプション]を元に戻すには、再度[ツールオプションの分離]を選択し、チェックをオフの状態にします。
※[パレット]メニュー内の[ツールオプション]の項目は[ツールオプションの分離]がオンになっていないと有効になりません。
ツールオプションの表示項目
初期状態の[ツールオプション]はいくつかのパラメータが非表示の状態になっています。
[ツールオプション]下部の[全てのパラメータを表示する]をクリックすると、一時的に全ての項目を表示して設定を変更できます。
この、表示状態の切り替えは一時的なもので、別のツールを選択すると、元の表示状態に戻ります。
初期状態で非表示に設定されたパラメータを常に表示状態にしておきたい場合は、パラメータを右クリックして、表示されたメニューから[このパラメータを非表示設定にする]のチェックをオフにします。
逆に、表示されているパラメータを非表示にする場合は、このチェックをオンにします。
これとは別に、項目の横に「+」ボタンがある場合、クリックすると同じカテゴリのサブ項目が展開します。折りたたむ場合は「-」ボタンをクリックします。
[3]水彩ツールのツールオプション
ツールオプションには設定できる項目がたくさんあります。その中でも、特に[水彩]ツールの調整に有効な設定項目と、調整時のポイントをご紹介します。
①ブラシサイズ・不透明度
全ての描画系ツールにおいて重要な項目ですが、[水彩]ツールにおいては[不透明度]の値を変えることで、透明水彩風から不透明水彩風にブラシの表現を変えられます。
ただし、[水彩]ツールの不透明度や色の濃さは後述する[絵の具量]や[絵の具濃度]のパラメータの影響も受けます。
②絵の具量・絵の具濃度・色延び
これらは、水彩ツールに固有の設定です。
[絵の具量]は下地色(レイヤーにすでに塗られている色)と描画色を混色する割合です。
値が高いほど、選択中の描画色の色味が強く塗られます。値を下げると下地の色に対してうっすらと描画色が混色されるようになります。値を0にすると、描画色は一切混色されず、下地の色をなじませるだけになります。
値を高めにすると「不透明水彩~油彩風」に、値を低くすると、「透明水彩風」に。0にすると、無色の「水」になるイメージです。
[絵の具濃度]は、下地色(レイヤーにすでに塗られている色)の不透明度にどの位影響を受けるかの設定です。
別の言い方をすると、「透明部分と色が混ざりやすいかどうか」とも言えます。
[絵の具濃度]を高くすると、下地の不透明度に影響を受けにくくなるので、全く透明な部分に色を塗っても、そのまま不透明に塗りつぶすことができます。(不透明水彩~油彩風)
[絵の具濃度]が低いと、下地の不透明度に影響を受けやすくなるため、全く透明な部分に色を塗ると、不透明度が下がって、色が薄くなります。(透明水彩風)
[色延び]は下地の色をどの程度延ばすか、(混色したまま色を引っ張るか)の設定です。[絵の具量]を0にする と、効果が分かりやすいです。下図では、「色延び:大」の設定では、下地のあずき色が伸ばされて描画色の青と混色しながら塗られるため、薄紫部分では元の 青色より濃くなっています。
③硬さ
ブラシ形状が「円」の時のみ設定できます。
値を高くするとボケ足の少ないハッキリしたブラシになり、ブラシのタッチが残しやすくなります。
値を低くするとボケ足の付いた柔らかいブラシになり、タッチが残らず周りの色になじみやすいブラシになります。
④ブラシ形状
円形の他にも様々な形状を設定できます。
[ブラシ形状]をクリック、[パターン素材集の一覧]を選択、リストからブラシパターンを選択、という手順で変更します。
「繊維にじみ」や「水彩毛筆」などの複雑なタッチも、ブラシ形状によるものです。
オリジナルのブラシ形状を作成して読み込めば、初期設定とは全く違う質感のブラシも作成できます。
⑤合成モード
[水彩]ツールでは「通常」と「乗算」が選べます。
基本的には「通常」のままで良いのですが、「透明水彩」のような不透明度が低い設定で、濃い鮮やかな色使いをしたい場合は「乗算」に設定すると塗り重ねた際の色の入り方が変わって、色を濃くしやすくなります。
⑥質感の種類
ブラシ形状とは別に、ブラシに「キャンバス」や「画用紙」といった用紙の質感を加えることができます。
リスト内の[パターン読み込み]を選択すると、[素材]パレット内のパターントーンを質感に設定できます。もちろん自作のパターントーンも設定できるため、表現の幅はさらに広がります。
[解像度]は、質感の細かさの設定で、値を下げると質感のパターンが細かくなり、値を上げると大きくなります。
あまり[解像度]を極端に下げ過ぎると、細かすぎてパターンが潰れてしまう場合があります。
[効果の強さ]は質感を合成する強さの設定で、値を上げるほどパターンが強く出てきます。
また、他にも[適用方法]や、[ストロークに適用]の有無によっても質感の合成結果が変わってきます。
⑦水彩境界
これも、[水彩]ツールに固有の設定です。
水を多く含んだ透明水彩絵の具が乾いたときにできるフチのような効果です。
ブラシタッチを強調したり、わざと塗りムラを作って手描き感を強調したり、「透明水彩っぽさ」を表現する設定です。
[処理範囲]はフチの太さ、[ぼかし幅]はそのぼかし具合です。
[ぼかし幅]の値が小さいほど水彩境界は目立ちやすくなりますが、極端に低く設定すると、ハッキリと線が出てしまい、水彩としては不自然な印象になります。(特に、「0」にすると、ジャギーが出てしまいます。)
[透明度影響]、[明度影響]はフチの色に関する設定です。それぞれ透明度と、明暗を調節します。
[透明度影響]が低い状態では、いくら[明度影響]を上げてもほとんど効果がありません。
[透明度影響]が高い状態で[明度影響]を上げ過ぎると、フチが真っ黒になってしまいます。
二つの値は相互に影響を及ぼすので、うまくバランスを取ることが大切です。
ブラシ[硬さ]のを下げた状態で[水彩境界]を適用するとブラシの中心と、フチの間に隙間ができてしまうので、設定によっては不自然な表現になってしまいます。
ただ、これらの不自然なブラシも、「水彩画」という枠にこだわらず、「そういうもの」として利用すれば、新しい表現が可能かもしれません。
その他、各パラメータの詳細については、マニュアルをご覧ください。
設定を元に戻す
変更したツールオプションの設定を元に戻したい時は[ツールセット]パレットの[初期設定に戻す]ボタンをクリックします。
※[ツールオプション]を分離している場合は、[ツールオプション]パレットにも同様のボタンが表示されます。
[4]カスタマイズした設定の保存
1.設定したツールセットを保存する
カスタマイズしたブラシ設定は新しくツールセットとして保存できます。
(1)[ツールセット]パレット左上の[新規ツールセット]ボタンをクリックします。
(2)[新規ツールセット]ダイアログで、新しいツールの名前やアイコンを設定します。
また、この時ツールセットにショートカットを割り当てられます。
※ツールセットに割り当て可能なショートカットキーは、[Shift]などを使用しない1キーのみです。
他のツールとキーが重複した場合は、キーを押すごとに順番に切り替わります。
(3)[OK]をクリックすれば、[ツールセット]パレット内に、新しいツールセットが保存されます。
2.ツールセットの分類
[ツールセット]パレットでは、フォルダを作成してツールセットを分類できます。
(1)[ツールセット]パレットで、[新規フォルダ作成]ボタンをクリックします。
(2)[フォルダ設定の変更]ダイアログでフォルダの名前を付け、[OK]をクリックします。
※ここで、[環境バックアップの対象にする]のチェックをオンにすると、後述する[環境バックアップ]でフォルダ内のツールセットをバックアップ対象に含めることができます。
(3)作成したフォルダにツールセットをドラッグ&ドロップすると、ツールセットをフォルダ内に分類できます。
3.ツールセットの書き出し・読み込み
書き出し
作成したツールセットは(*.tos)ファイルとして書き出しできます。
ファイルとして書き出したブラシの設定は、別のPCでも読み込めるので、バックアップ用に保存するだけでなく、友人と共有したりCLIPで公開したりもできます。
ツールセットをファイルとして書き出す場合は、[ツールセット]パレットで、書き出すツールセットを選択した状態で、[メニュー表示]ボタン(または右クリック)→[ツールセットの読み書き]→[ツールセットの書き出し]から、名前を付けて保存します。
※[ツールセットの読み書き]→[現在のツールセットをすべて書き出し]を実行すると、選択中のツールのツールセットが全て書き出されます。
読み込み
書き出されたツールセット(*.tos)ファイルを読み込むには…
[ツールセット]パレットの[メニュー表示]ボタン→[ツールセットの読み書き]→[ツールセットの読み込み]を選択するか、「*.tos」ファイルを直接イラストスタジオのウィンドウ内にドラッグ&ドロップします。
環境バックアップ
[環境バックアップ]機能を使うと、作成したツールセットだけでなく、パターントーンや、アクション、ショートカット設定、環境設定など、お使いの環境を丸ごと(あるいは一部選択した項目を)バックアップしておくことができます。
[環境バックアップ]ダイアログで[事前に「環境バックアップの対象にする」の設定をオンにした項目のみ保存]を選択すると、予めフォルダ作成時のダイアログで[環境バックアップの対象にする]にチェックをオンにしたフォルダのみバックアップできます。
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