第4回 [Stylos]での作画機能になれる
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(1)下描き!
絵を描くためには、まず下描きだ。よほどの腕前か度胸がない限り一発描きなんて荒技は難しいものだろう。ましてやアニメともなるとさらに下描きの重要性が高まってくる。
[Stylos]には[ラスター下描き]レイヤーが存在する。その名の通り下描きを担当するためのレイヤーだ。[Stylos]ではこの[ラスター下描き]レイヤーを作画用紙1枚につき1枚用意できる。
薄い色でラフを描いていき、
だんだんと濃い色にしていくと下描きがしやすいだろう。
アニメではたくさんの作画用紙に絵を描くが、それを動画として動かすときはホンの一瞬だ。[Stylos]上でモーションチェックをすれば簡単に動画を見ることができるが、このときに作画用紙1枚1枚のデータ容量が重くなってしまうと作業が滞ってしまう。用意できる下描きレイヤーが1枚になっているのはパソコンの負荷を下げるためだ。
それでも、下描き作業のやり方は千差万別、下描きのときに何枚もレイヤーを重ねて描きたいというユーザーもいるだろう。そんなときには他のレイヤーを活用してしまおう。
(2)様々なレイヤーを活用
レイヤーを重ねて下描きをしたい場合には[ラスター汎用]レイヤーを使うといいだろう。[ラスター汎用]レイヤーは[ラスター下描き]レイヤーと違い複数のレイヤーを作成できる。
[ラスター汎用]レイヤーは、[ラスター下描き]レイヤーと同様にフルカラーで描画が行えるので薄い色から濃い色へ線をまとめたりすることもできる。
[ラスター下描き]レイヤーでは[ペン]ツールを使用すると色が少し薄めになる。何度もなぞっていくと線が本来の濃さになる。
[ラスター汎用]レイヤーでの描画は、色の濃さは最初からMAX状態なので、重ねて線を引いても線の濃さが変わらない。
これらの特徴をふまえた上で[ラスター下描き]レイヤーと[ラスター汎用]レイヤーを使い分けるとよいだろう。
もう一つの方法は、[作画]レイヤーを使う方法だ。ベクターでもラスターでも[作画]レイヤーでは線画にアンチエイリアスがかかる。
慣れの問題もあるが、画面を拡大してもジャギーの目立たないアンチエイリアスのかかった状態で描画したい場合もあるだろう。その場合は、作画レイヤーに「下描き」を描いてしまうのだ。
まず[レイヤー]パレットの[新規プレーン作成]ボタンをクリックする。
[新規プレーン]ダイアログが表示されたら[プレーンの種類]は[主線プレーン]のままでプレーンを追加してしまう。このときに、下描きがしやすいように[プレーンカラー]を変更しておいてもよい。
[作画]レイヤーに下描きする場合は単色しか扱えないが、プレーンごとに線画の色を変更することができるのだ。すでに描いた線画の「色」そのものを変更できるのは、[作画]レイヤーのプレーンを活用するワザならではのものだ。
線画の色を変更するには[レイヤー]パレットの[プレーン]上で右クリックしてメニューを表示、[プロパティ]を選択する。
[プレーンのプロパティ]ダイアログが表示されたら、[プレーンカラー]を好きな色に変更して[OK]をクリックするだけだ。
その後、[主線プレーン]などに清書(クリーンナップ)していくことができる。
ここまでざっと下描きで活用できるレイヤーを紹介してきた。それぞれのレイヤーを使うメリットデメリットをまとめておくので、自分にあった下描きの方法を覚えておこう。
レイヤーの後始末
[ラスター下描き]レイヤー以外のレイヤーで下描きを行った場合に注意しておきたいのが、レイヤーの後始末だ。[ラスター汎用]レイヤーや[ラスター/ベクター作画]レイヤーは、本来は下描きを行うためのレイヤーではないので、もちろん「動画」にも表示されてしまう。下描きが終わったら必ずレイヤー(またはプレーン)を削除するか、非表示にすることを忘れないようにしておこう。
また、[ラスター汎用]レイヤーなどをたくさん作成しても描画作業自体にはあまり影響はないが、モーションチェックを行う場合など、作業レスポンスに悪影響を与える恐れもある。不必要なレイヤーは適宜削除するように心がけておこう。
(3)プレーン
話が前後してしまったが、プレーンについても触れておこう。RETAS STUDIOにはレイヤーとともに[プレーン]が存在する。[プレーン]とは簡単に「1枚のレイヤーの中に、さらに存在するレイヤーのようなもの」と覚えておこう。もちろん実際にはそれだけにとどまらないのだが、最初は簡単に覚えておくといいだろう。
[Stylos]でもっとも[プレーン]を活用するのは[ラスター/ベクター作画]レイヤーだ。作画レイヤーでは描画する線の色毎にプレーンが分かれている。
いわゆるアニメ塗りをするときに「明るい色(ノーマル色)」と「暗い色(1号影)」の「色の境目」を分けるために「色トレス線」と呼ばれる線をいれる。青や赤、緑の色を利用して作画される色トレス線は主線に影響を与えてはならないので、プレーンを分けるのだ。[ツール]パレットにあるプレーン選択領域と[レイヤー]パレットのプレーン選択は一致しているので、描画の際はどちらのパレットでもプレーンを選択できるようになっている。作画レイヤーでのプレーンの存在を理解しておこう。
(4)ベクター作画レイヤーでの消しゴム
RETAS STUDIOで作画するとき、[ベクター作画]レイヤーを利用していると便利な消しゴム技を使える。
[消しゴム]ツールを選択すると、この[ツールオプション]パレットが表示される。注目したいのは消しゴムの「消し方」を司る部分。このオプションを使い分けることによって、作画の効率がアップするのだ。
[触れた部分を削除]を選択した場合、[消しゴム]ツールは普通の使い方と同じだ。[消しゴム]ツールで触れた部分がそのまま消えていく。
[交点まで削除]は一番ベクターの特性を利用した消しゴムの使い方になるだろう。
こんな作画の場合、飛散物の中(赤い部分)の線は消しゴムで消しておきたい。
しかし、線が交わっている部分などはうまく消さないと「消しすぎてしまう」こともある。こんな場合は[消しゴムツール]オプションを[交点まで削除]に指定しておく。
線の一部でも[消しゴム]ツールで消しておけば、「線と線が交わっている部分まで」を消してくれる。はみ出した線を整える場合など活用できるシーンは多いだろう。
[全体を削除]は一部でも線を[消しゴム]ツールで消せば、線全体を消去できる。
こんな風に絵に線がまたがってしまった場合も、このオプションで消しゴムをかければ
線全体を消すことができる。[ラスター作画]レイヤーではできない[ベクター作画]レイヤーならではの方法だ。
(5)影指定レイヤー
色トレス線を用いた作画を行った場合に気をつけておきたいのが、影指定だ。いくら自分一人で作画していても「どっちが影になるかわからなくなる」ことは当たり前にある。そこで、作画の段階で影になる部分に仮の色を塗っておくのだ。
[影指定]レイヤーを作成したら、[フィル]ツールで仮の色づけをしておこう。
プロの現場ではある程度色数を絞って、影の部分だけに色塗りを施す。あくまで「ノーマル色」と「影色」の区別がつけばいいからだ。また、ハイライトについても色を塗っておくとわかりやすい。その他、この画像にある目のまぶたなどの縁取りに緑色で塗られている部分は「影」ではなく、黒く塗り潰すように指定しているものだ。
[影指定]レイヤーではフルカラーで色を塗り込むことが可能なので、様々な用途にも利用できる。いろいろなアイデアを盛り込んでいこう。
(6)影指定を再作成
[影指定]レイヤーで影部分に色を塗っている最中、あとから描き足したい部分がでてきたとする。こんな時に、後から描画した線には[影指定]レイヤーが反映されない。
これは、[影指定]レイヤーが作成された段階で、[ベクター/ラスター作画]レイヤーの線画情報がコピーされているからだ。
[作画]レイヤーが修正されても、[影指定]レイヤーの内容は更新されないので、修正箇所の影指定がうまくいかなくなってしまうのだ。
もし、[影指定]レイヤーを作成後に[作画]レイヤーの作画を修正した場合は[影指定作成]ボタンをクリックして、もう一度[影指定]レイヤーに[作画]レイヤーの内容を転写しておく。その段階までに塗られた影指定はそのままで、線画情報が更新される。
これで修正した[作画]レイヤーの内容(この例では色トレス線)に従って影指定の塗りが行えるようになる。
(7)影指定は[PaintMan]のため
[影指定]レイヤーは着彩を行う[PaintMan]の作業のために用意するものだ。何枚もある作画用紙の中でライティングの方向が変わってしまったり、影そのものが抜けてしまったりしていないかを[Stylos]作業中によくチェックしておこう。
ここまでがアニメ作画のための[Stylos]の基本的な使い方だ。アニメを更に作り込んでいくために、[Stylos]ではいろんな機能が用意されている。色塗りまでの説明をしたので、早く着彩の[PaintMan]に進みたいところだが、あと2回[Stylos]を使った作画についての応用編を説明していく。今回のアニメはあまり講座本編では活躍しなかったが、癒し用にここにあげておこう。
次回はアニメ動画のワザと[Stylos]の機能を組み合わせる方法を説明していこう。
それではまた次回!
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