第7回 彩色する

提供者 : セルシス    更新日 : 2015/06/30   
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(1)[PaintMan]へ橋渡し

~作画が終わったら次は彩色~
[Stylos]で動画を作画し終わったら、さあアニメ制作はおしまい......なんてことにはならない。いつも自分たちが目にするアニメと言えばやっぱり「総天然色」なわけだし、萌え萌え女(男)子アニメも破天荒にぐりぐり動き回るアニメもおじゃる○もみんなカラーなのだ。つまりアニメ制作とは、作画だけでは終わらない、ということ。

作画が終わった後は、
・彩色
・撮影
と順番に作業を進めていくことになる。今回と次回は「彩色」について説明していくことにしよう。まず今回はキャラクターの色を作って、セルに仮塗りを行うまでの工程を説明しよう。

RETAS STUDIOで実際に彩色を行うには[PaintMan]を利用する。しかし、彩色の前の作画作業中にある工夫をしておくことが大切なのだ。その作業は[Stylos]で行うことになる。

講座の第4回で説明したように、彩色作業のために色トレス線を引いておく。

さらに[影指定]レイヤーで影色部分を塗り潰して、彩色作業時に、影色をどちらに塗るか判りやすいようにしておく。[影指定]レイヤーで塗った色は撮影時には反映されないので、好きな色を塗ってしまっても構わない。色トレス線などの準備が終わったら、[Stylos]の最後の作業、[書き出し]を行う。

[Stylos]で描いている線はアンチエイリアスがかかっている(これも第4回で説明している。忘れた人は復習しておこう!)。これはアンチエイリアスがかかった状態の方が、線が滑らかに見えて作画しやすいからだ。[ComicStudio]や[IllustStudio]などの絵を描くためのソフトを使ったことのある人は、単色で彩色を行う場合は[塗りつぶし]ツールなどを使うと簡単に作業ができることを知っているだろう。RETAS STUDIOでは[フィル]ツールと呼ばれているツールと同じものだ。

しかし、これらの彩色を[フィル]ツールを使って行う場合に、アンチエイリアスが邪魔をする。

彩色するための[フィル]ツール(塗りつぶしツール)は、線を判断して色を塗り分ける。しかし、アンチエイリアスがかかっていると本来の線以外に、薄くぼやけさせるためのドットが生じてしまう。これらを上手く判断できない状態になると、この絵の様に、線の中がすべて塗り潰されない状態になる。

そこで、[Stylos]で作画した絵に[書き出し]作業を行って、[PaintMan]で容易に彩色できる前準備が必要なのだ。

 

(2)仕上げ書き出し

彩色前の[Stylos]で行う準備が[仕上げ書き出し]だ。作画の終わったカットフォルダの内容をすべて[PaintMan]で彩色ができるように変更してくれる。

まず、完成したカットフォルダを開いた状態で、ファイルブラウザの上部にある[仕上げ書き出し]アイコンをクリック。

[カットフォルダ書き出し]ダイアログが表示されるので、

それぞれの項目を選択する。[Stylos]で作成したタイムシートを彩色後、撮影作業で引き継ぐために[CoreRETASのタイムシートを書き出す]というオプションはONにしておこう。[Stylos]で作画の時に作成したタイムシートと、彩色が終わって撮影を行う場合に利用するタイムシートは別のものを用意しなければならないのだ。

対象選択に[動画]を選びその横の[設定]ボタンをクリックする。

[動画の書き出し設定]ダイアログが表示されるので、ここで書き出す画像の線の太さを設定することができる。[Stylos]ではベクターで作画をおこなっていたので、[ベクターのトレース方法]が有効になる。ラスターで作画した場合は[ラスターのトレース方法]を操作する。

[ラスター2値化]を選択して、[線幅]を調整して、線の太さを調整する。[プレビュー]をONにすると書き出されたあとの線の太さが確認できるので、細かく調整しておこう。[出力レイヤー]の選択も忘れずに。デフォルトの状態でまず問題はない。

また、デフォルトではレイアウトフレームの内側のみを書き出すように設定されている。レイアウトフレーム外(つまり余白)も書き出したい場合は[画像設定]ボタンをクリックして、[画像設定]ダイアログで[全体を書き出す]をONにしておく。

注意する点は、[Stylos]で作成したカットフォルダと、その後の彩色用のカットフォルダは別に用意しなければならないということだ。作画するときには[原画(KeyAnimation)]と[動画(Inbetween)が必要だが、彩色以降は必要無くなるので、カットフォルダ内のフォルダ構成も変化するのだ。

書き出しが終わったら、ようやく[PaintMan]の出番だ。

 

(3)[PaintMan]起動。色を作る。

まず、[PaintMan]を立ち上げた直後も、[Stylos]と同じように[F12]キーを押してファイルブラウザを呼び出し、先ほど書き出した彩色用のカットフォルダから作画用紙を呼び出しておこう。

彩色で最低限必要なパレットは[ツール]パレット、[ツールオプション]パレット、[カラー]パレットと[レイヤー]パレットだ。このキャラクターをどんな色で塗るのか、まずは仮色を決めていこう。

色を作成するためには[カラー]パレットを利用する。

色の調整は下部のスライダーで行う。

ここで留意しておきたいのが矢印マークの[RGB]と[HSV]の切り替えだ。それぞれのスライダーに[R:赤][G:緑][B:青]の光の三原色を割り当てるか、[H:色相][S:彩度][V:明度]を割り当てるかを変更できる。RGBは光の三原色をそれぞれ加算混色によって調整するもの。この原理を熟知していないと、たとえば「肌色を作りたい!」と思ったときに速やかに色を選ぶことが難しい。

そんな場合は、いったん[HSV]モードで大まかな色を[H:色相]から拾ってしまうといいだろう。しかし、HSVでは赤や青、緑と言った色相を簡単に選ぶことができるが、その段階は100段階の調整になる。

そこでモードを[RGB]に切り替えて、肌色を更に細かく「もっと赤く...」、

「もっとオレンジ気味に...」という具合に、RGBモードで色相をさらに細かく調整すると、「HSVモードで直感的に色を選び」、「RGBモードで詳細に色を調整する」といったことが可能になる。モードの切り替えは適宜行うようにしよう。

ここでひとつ注意がある。

[カラー]パレットのスライダーが図の様に4本になっている場合だ。これは[編集]メニューの[アルファ使用モード]のチェックをONにすると表示されるもので、アルファ(透明度)を表している。このスライダーの数値を下げて色を作成すると、不透明度が下がった状態の色で彩色されてしまう。この状態で背景の上にセルを表示させると、背景が透けて見えてしまうのだ。必要な場合を除いて[編集]メニューの[アルファ使用モード]のチェックはOFFにしておくようにしよう。

 

(4)最初の彩色!

色が決まったら、一度キャラクターに色をつけてみよう。ここで気をつけるのは[レイヤー]パレットだ。

[レイヤー]パレットの[プレーン]に注目してみよう。[2値彩色]レイヤーが選択された状態で[主線]プレーンと[彩色]プレーンが表示されている。これらのプレーンには役割が割り当てられていて

主線が格納されている[主線]プレーン。

色トレス線が格納されているのが[彩色]プレーンだ。

彩色を行う時は[彩色]プレーンを利用する。これから彩色を行っていくが、ここで[彩色]プレーンが選択されていることを確認しておこう(なお、彩色を行う場合は、[主線]と[彩色]両方のプレーンが表示されていることが必要)。

それでは、色を塗ってみよう。まず[ツール]パレットから[フィル]ツールを選択する。

次に[フィルツールオプション]パレットで、[含み塗り]を[なし]に設定する。この含み塗りのことについては後述するが、とても重要な機能なので、頭の片隅においておこう。

あとは色を塗りたい領域でクリックをするだけだ。このあたりは[ComicStudio]などの塗りつぶしツールと同じ要領だ。

続いて肌の影色も塗っておく。ここでは、色トレス線がそのまま残って、青い線が見えている状態になっている。

 

(5)含み塗りを使い分ける

ここで、先ほどの[フィルツールオプション]パレットの[含み塗り]を調整してみる。

[指定色]に設定して、青のボタンにチェックをいれる。肌色の部分は青い色トレス線で区切られているからだ。オプションの設定が終わったら、肌の影色をもう一度上塗りしてみよう。

肌の影色との間にあった色トレス線も含まれた状態で色が塗られた。なぜこのような段階を踏む必要があるかというと、[フィル]ツールは色の差を判断して色を塗ってくれるツールなのだが、色を調整しているときに誤ってノーマルの部分と影色を塗ってしまうと、

このような悲しい結末を迎える。こうなるともうお手上げだ。アンドゥでやり直せる範囲ならまだいいが、たいていこういった凡ミスは「忘れた頃に発覚する」ものだ。実際に涙した人々を、本当にたくさん見てきたのだから間違いない。こうなった場合は[Stylos]の書き出しからやり直すことになる。早い話が「彩色を一からやりなおす」ということだ。

このような悲劇を最小限に食い止めるため、特に[PaintMan]の作業に慣れていない場合(さらに色の調整を行っている場合など)は[含み塗り]は最後までとっておいた方が賢明だろう。

彩色の際、気をつけておきたい点が、「白」の扱いだ。今回は白目の部分を白く塗りたいところだが、RETAS STUDIOでは「あるお約束事」がある。セルでは色を塗った箇所以外が透明になっているため、背景の上にセルを表示させると、背景の前にキャラが存在するように見える。

RETAS STUDIOでは「真っ白」を「透明」として扱う、という仕様がある。この透明になっている部分(=「真っ白な部分」)は[透明部分の表示]ボタンで確認できる。たとえば、

[含み塗り]の[赤]を有効にして白目の部分をこのように塗り潰したとしよう。しかし、これは見た目が白く見えているだけで

[透明の表示]アイコンをクリックすると

こんなことになってしまっている。[透明の表示]状態では「透明」な部分を水色で表示してくれる。ということは、この白目の部分は透明になっているので、

このように背景が透けてしまうと言うことだ。これではあまりに悲しい。そこで、[PaintMan]で彩色する場合の「白」の扱いの「お約束」を覚えておこう。

[カラーパレット]で真っ白な状態は、例えば[RGB]モードなら[R][G][B]それぞれのパラメータが[255]の数値になっている。これがRETAS STUDIOで「透明」として扱われる「真っ白」だ。そこで

[R][G][B]、すべてのパラメータを[254]にしてしまう。255より1少ない数値なので、正確にはわずかにグレーになっているはずなのだが、人間の目には全く判らないだろう。この色をRETAS STUDIOでは「見える白」として扱う。

これで、白目の部分も無事塗り潰すことができる。

 

(6)色をカラーパレットに登録

色が決まったら、必要な色は[カラー]パレットに登録していこう。

すでに色を塗られた作画用紙から色を拾い出すときはスポイトツールを使用する。[フィル]ツールを選択したままで[Alt]キーを押下した状態でも一時的にスポイトツールが選択できる。

マウスのポインタを[カラー]パレットの上部のマス目に運び、好きなマス目で[Alt]キーを押しながらクリックすれば、[カラー]パレットへ色の登録ができる。

何枚もある作画用紙に彩色するには、パレットに色を登録したり、1枚キャラクターを描いて色塗りし終えた作画用紙を見本として表示し、そこからスポイトで色を拾う方法などが考えられる。

大量にキャラクターなどの塗り分けを行う場合などにはこのようなカラーチャートを作成することもできる。カラーチャートは登録できる色数も多くなり、複数のカラーチャートを作成して多岐にわたる設定の保存が可能だ。また、同じキャラクターで同じ色を長期間利用するときも、個別に保存の出来るカラーチャートは便利だろう。作画用紙の枚数や利用状況に応じてやりやすい方法を使い分けるといいだろう。

 

(7)もっと色塗りを!

さて、現状ではまだ色を決めて単純に塗りつぶしを行っただけの状態だ。

色塗りを行うと、このような細かな部分の塗り残しがどうしてもでてしまう。表示を拡大して、ひとつずつ[フィル]ツールで塗り潰していくことももちろん可能だが、[PaintMan]ならではの効率的な色塗り方法も覚えておきたい。

ということで、次回は[PaintMan]をさらに効率よく利用する使い方を説明していこうと思う。アニメ業界で桁外れのシェアを誇るRETAS STUDIOのなかでも[PaintMan]は特に効率化を図れる部分なのだ。

それではまた次回!

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