第8回 さらに、彩色
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第8回で使用したRETAS STUDIOのデータをダウンロードしてご確認いただけます。
※今回は第7回の続きのため第7回サンプルデータと同じものになります。
※当サンプルデータに関するユーザー様へのサポートは行っておりません。
(1)[サブ]パレット
[PaintMan]をさらに掘り下げる
前回の連載では主に
・[Stylos]用のファイルから[PaintMan]で彩色できるようにファイルを変換
・キャラクターなどの必要な色を設定(色の作成)
・[フィル]ツールの基本的な使い方
を説明した。今回は実際の彩色作業で必要な機能をさらに掘り下げて説明していこう。
前回、キャラクターの色を指定してみた。しかし個人制作での彩色作業では、キャラクターの彩色済み作画用紙を見本として参照した方が効率が良いこともあるだろう。そんな場合に活用できるのが[サブ]パレットだ。
[サブ]パレットは[メニュー]ウィンドウから[サブ]パレットを選択するか、ファンクションの[F9]キーを押下すると表示される。
最初は[サブ]パレットには何も表示されないが、[メニュー表示]ボタンからメニューを選択して、ここに様々な画像を呼び出すことが可能だ。今回は色を塗った後の作画用紙を登録しているが、ここに一般的な画像ファイルなども呼び出すことができるようになっている。
画像の呼び出し方は、まず[メニュー表示]ボタンをクリックしてメニューを呼び出す。
・[現在の画像を登録]:今作業している作画用紙の内容を[サブ]パレットに登録
・[開く]:画像ファイルや作画用紙(セル)ファイルを登録
・[クリアー]:サブパレットの画像を消去する。
メニューから必要な画像を呼び出して、[サブ]パレットに登録して、彩色作業時にここから色を[スポイト]ツールで拾っていく。
色を拾っていく際も、[フィル]ツールなどを選んでいれば、[Alt]キーなど押下することなく、そのまま[サブ]パレットの上にマウスポインタを移動させるだけで[スポイト]ツールに切り替わる。
[サブ]パレットと[カラーチャート]の使い分けだけでも、さまざまなケースに対応できるようになるだろう。例えばアナログの絵の具で彩色したものをスキャンして、その画像を[サブ]パレットに登録し、色を拾う...なんて使い方も面白いだろう。発想次第では、とてもフレキシブルに利用出来る機能だ。
(2)デジタルの宿命「塗りもれ」
一般的な画像処理系ソフトを使用している人たちには真っ先に思い出される「塗りもれ」。[フィル]ツールは線で閉じられている領域内をワンクリックで塗り潰してくれるのだが、そうはいかないケースもあるということだ。
このような図形がある場合に、中心位置の「青いトレス線で囲まれた領域」を塗り潰すと
このようになるはずだが
青いトレス線にこのような「隙間」があると
このように、本来の領域をはみ出して塗り拡げてしまうことがある。実は前回から使用している作例にもこんな「塗りもれ」が発生する箇所があるのだ。
作例の髪の毛の部分の
ココだ。青トレス線がとぎれているので、このままでは「塗りもれ」してしまう。もちろんここで[Stylos]にもどって修正...ということもできるのだが、それはあまりにも手間がかかるので、[PaintMan]で修正作業をしてしまおう。
というのもプロの現場ではこの修正を彩色マンが行うことが多いのだ。個人で制作を行う時も、彩色の際にこの「塗りもれ」が発覚することもあるので、[PaintMan]を利用した修正作業も覚えておくといいだろう。
(3)線画を修正して「塗りもれ」を回避
今回のような線が欠けている部分には[ブラシ]ツールを使って加筆修正を行っていく必要がある。
今回は色トレス線が欠けているので[レイヤー]パレットで[2値彩色]レイヤーの[彩色]プレーンを指定して、[ブラシ]ツールの[線の太さ]を調整しながら欠けた部分を描き込んでいく。「色トレス線」か「主線」なのかで修正をする「プレーン」が異なることに留意しておこう。
[消しゴム]ツールや[直線]、[曲線]、[図形]、[折れ線]ツールなども、基本的に[Stylos]と同様に利用出来るようになっている。ただし、ベクター線は利用出来ないので、交点削除などの[Stylos]ならではの機能は利用できない。これらの描画系ツールを利用して、修正作業を[PaintMan]で行っていく。
修正の終わった線画に対して、彩色を行えば作業がスムーズになる。
これが「線画を修正してから彩色を行う」方法だ。しかし、[PaintMan]にはこういった「線画が欠けた」画に対して、線画の修正を行わない方法もある。
(4)線画を修正せずに塗りもれを回避
線画を修正しなければ「塗りもれ」が発生してしまう、と思われるのだが、そこは[フィル]ツールのオプション設定で対応ができるようになっている。[フィルツールオプション]パレットにある[隙間を閉じる]という項目だ。
このオプションをONにすると、線に欠けたところがあっても隙間を「無かったこと」にしてくれる。この機能は[ComicStudio]や[IllustStudio]と同様だ。
しかしこの機能も万能ではない。線の隙間が極端に大きすぎたり、あえて「ここは細かい隙間として描いた」という箇所があれば、そこは[隙間を閉じる]オプションをOFFにしておいた方がいい。臨機応変に対処しよう。
(5)[閉領域フィル]ツール
デジタルで彩色を行った場合に一番面倒な作業が「塗り残し」の修正だ。
点で構成されているデジタル画の場合、[フィル]ツールなどを利用するとどうしても「塗り残し」が発生してしまう。これらの白く残ってしまった塗り残しは、ひとつずつ拡大して[フィル]ツールで根気強く塗り潰してしまえばいいのだが、それでは時間がかかりすぎてしまう。アニメは何枚も何枚も色を塗っていかなければならないのだ。
こういった「塗り残し」に対して[PaintMan]の彩色ツールの中には便利なものがある。
そのひとつが[閉領域フィル]ツールだ。
使い方は、塗りたい色を選択してから[閉領域フィル]ツールで塗り残した部分を取り囲む様に指定するだけでよい。
これで、塗り残された部分の彩色も簡単に行える。なお画像は判りやすいように塗り残し箇所に対し赤で[閉領域フィル]ツールを適用した状態だ。
[閉領域フィル]ツールは[ペン]ツールの様に使用するオプションと、選択範囲を指定するように使用するオプションがあるので、塗り残しの範囲に応じて使い分けができる。
(6)[塗りのばし]ツール
[PaintMan]には、塗り残した部分が「透明」な場合に使用できる[塗りのばし]ツールという便利な機能も用意されている。
[塗りのばし]ツールとは[透明部分の表示]アイコンをクリックして表示される「透明部分」に「元の色」を「塗りのばす」ことができる機能である。
髪の毛の先の方に塗り残しがある場合、「元の色」からドラッグを始めて、塗り残し部分にポインタを移動させていく。移動させた途端に「元の色」が透明部分に塗りのばされていくことが判るだろう。
[閉領域フィル]ツールでは「色を選んでから塗る」という作業を行うので、必ず「塗り潰したい色」を選択する必要があった。これに対し[塗りのばし]ツールは色の選択を必要とせず、「塗りのばしたい元の色」が塗られているピクセルから「透明部分」にドラッグをするだけである。
逆に色を選んでから塗る[閉領域フィル]ツールなら、複数の色が全く塗られていない「閉領域」を持つような
こんなパターンの画でも、すべてを囲むように選択して
一度に塗り潰すこともできる。[閉領域フィル]ツールと[塗りのばし]ツールは用途に合わせて使い分けよう。
(7)塗り残し撲滅機能
さて、様々なツールを利用すると、かなり効率よく彩色できることが判っただろう。しかし、どんなに頑張っても、やっぱり必ず残ってしまう塗り残し。これは人間である以上仕方のないことだ。でもこの「塗り残し」をすべて修正しなければアニメの彩色は次へ進むことができない。
そんな塗り残し撲滅機能とも言える機能が[彩色チェック表示]だ。
メニュー[表示]から[彩色チェック表示]を選択(ショートカットは[Ctrl]+[B])すると、色の塗られた領域のみ「黒く」表示される。
色トレス線がそのままの色で表示され、この作例では「赤い」部分と、色が塗り残された「白い」部分で表示されている。
[彩色チェック表示]モードからは[ESC]キーで普段のモードに戻るので、塗り残した部分をチェックしては修正していこう。
これで[彩色チェック表示]がすべて真っ黒になれば塗り残しはすべて修正完了だ。
(8)たくさんの枚数をこなすために
[PaintMan]では以上のような形で、「多くの枚数をこなすために」効率的に彩色ができるツールが備えられている。そもそも、[Stylos]上でアンチエイリアスで描かれていた線画をギザギザの目立つ[2値化]にするのも、少しでも素早く彩色作業を行えるようにするためのものなのだ。
[PaintMan]ではこの他にも色々な塗り方が用意されているが、手始めに今回紹介した塗り方を極めておこう。
さて、[PaintMan]には直接彩色をするツール以外にも様々な機能がある。そのひとつが[バッチ]パレット(メニューから[ウィンドウ]→[バッチ]パレットを選択)だ。[バッチ]パレットとは様々な作業を自動的に行う機能であり、[ComicStudio]や[IllustStudio]でいう[アクション機能]のような存在だ。
例えば、髪の毛のノーマル色と影色を変更したいと思った場合に色の変更を登録して、バッチ処理を実行すると
簡単に色の変更が可能になる。さらに、複数枚の作画用紙すべてに同じ作業を行う場面でも、この[バッチ]パレットがとても重宝するのだ。
(9)[バッチ]パレット~色置換
[バッチ]パレットの選択肢の中から[色置換]を選択するとパレット内で色置換の手続きが可能になる。
[入力(手前のセル)]を選択すると、[手前のセルの連番ファイル]というメニューボタン(下側の赤い囲み)が表示される。ここでフォルダ単位なども選べるが、今回は今塗っている作画用紙(セル)を含む4枚のセルを塗り替えるという作業を設定してみる。
もし、今4枚目を塗っているのなら[開始番号]を[1]、終了番号を[4]にする。このようにどの作画用紙まで色の置換を行うかを設定しておく。
次に[色置換]を選択すると、どのレイヤーの色置換を行うかを選択する[対象]オプション、さらに「元の色」→「置換後の色」を登録するパレットが表示されるので「元の色」は[1]側に「置換後の色」は[2]側にそれぞれ登録する。
最後に[出力(オーバーライト)]を選択する。メニュー選択(赤い囲み部分)[オーバーライト]を選べば、色を塗り替えたファイルが上書きされる。他にも色を塗り替えたファイルを別のフォルダに保存したり別のファイル名にすることもできる。
ということで、彩色に関しては今回でおしまい。
次回からは撮影用ソフト[CoreRETAS]の使い方を覚えていこう。
「絵を描く」「色を塗る」といった作業とは一線を画する「撮影」という作業だが、何をするものなのかを順番に理解していけば心配はいらない。
それではまた次回!
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