第2回「パラマルチ」

提供者 : セルシス    更新日 : 2015/06/30   
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(1)はじめに

今回は「パラマルチ」と呼ばれる効果について説明します。

この技法はアナログの撮影の場合、「パラ」(舞台照明などに使われる耐熱性の色セロファンのようなもの)をカメラレンズの前に画面に被るように設置することで、画面の一部を強調するような演出や影のイメージを表現したりするのに使われます。

完成動画「パラマルチ完」

 

これをRETAS STUDIOで表現します。
今回はよく使われる青色でのパラマルチで説明します。

作例として、以下のデータを使用します。
・第2回作例データ

 

(2)パラマルチとは

まず画面全体にパラを掛けたものを作ってみましょう。
パラを掛けていない状態のものがこちらです。

動画「ノーマル02」

※タイムシートは「RS講座作例-C2」フォルダ内の「ノーマル02.tsf」です。

 

これに単純に全面青のベタに透明度(今回は65%)を付けて載せてみました。

動画「パラマルチ01」

※タイムシートは「RS講座作例-C2」フォルダ内の「パラマルチ01.tsf」です。

 

作例動画「パラマルチ01」を見れば分かりますが、これではパラ(セロファン)を通した絵には見えません。
なんだか水中にいるような画面にも見えます。

ベタ面の作成

「パラマルチ1」のようにベタ(一面同色の画像)を使う場合は画像ファイルを作らなくても、CoreRETASだけで用意できます。

(1)[セルバンク]の[メニュー表示]→[平面の登録]をクリックします。


(2)[平面の設定]ダイアログが表示されます。

「平面設定」から[平面サイズ](ここでは1280X720)と[平面色](必要であればアルファ)を設定することでベタ1面が使えるようになります。


(3)セルバンクにベタが登録されました。

この青ベタは、通常のセル同様に、タイムシートで表示できます。

 

では、次の作例を見てみてください。

動画「パラマルチ02」

※タイムシートは「RS講座作例-C2」フォルダ内の「パラマルチ01.tsf」です。

 

こちらだと青色のパラ(セロファン)を通したように見えますね。
現実世界において、「パラ」というのはどのようにして青くみえるのでしょうか?

光というのはR(赤)G(緑)B(青)の三原色で表現されます。
R、G、Bの各々の強さで色が表現されます。また、RGBがそれぞれ同じ強さで最大になったときは白の表現となります。
では、ここで表現される青色のパラ(セロファン)を通過した光というのは原理的にどういうものかということを考えてみましょう。
青色のパラというのは要するに青以外の赤と緑の光成分をカットしているということです。
そのために青の光のみがパラを通過するために青く見えるわけです。
ですので、CoreRETAS上でも、これを再現してやればよいわけです。

「パラマルチ02」というのは、これを再現しています。
つまり「青のパラを通した映像」というのは、全体の色から「赤」と「緑」の成分を減算してやればよいのです。

 

(3)タイムシートの作成

実際に作成してみましょう。

(1)まず、[ファイル]メニュー→[開く]→[タイムシート]で、効果がかかっていないタイムシート「ノーマル02.tsf」を開きます。

これをベースに「パラマルチ」の効果を適用していきます。

 

このノーマルのシートは後で使用するので、上書きしてしまわないように、予め[別名で保存]しておきます。
ここでは、「パラマルチ02.tsf」としておきます。

 

(2)タイムシートのカメラのレイヤー(「CAM」レイヤー)を選択し[エフェクト]メニューから→[追加]→[色調補正]→[RGB]を選択します。

 

(3)カメラレイヤーにエフェクトレイヤーとしてRGBが追加されます。

 

(3)まずレイヤー名部分をダブルクリックして全てのフレームを選択します。

 

この状態で、R(赤)のパラメータを「0」→「-60」に変更します。

 

(4)次に、下図の[入力パラメータ選択メニュー]でパラメータを[G]に切り替えます。

 

「R」同様に、ダブルクリックで全フレームを選択し、G(緑)のパラメータを「0」→「-60」に変更します。

 

(5)B(青)のパラメータは「0」のままにします。

 

(6)これにより画像の光の成分から赤と緑の成分が60減らされます。

この状態で描き出されたムービーが「パラマルチ02.mov」です。

 

しかし、これでは単に画面全体に青いパラが掛かっている状態で、完成とはいえません。

 

(4)マスク合成

1.マスク合成について

 

今回の場合には完成動画「パラマルチ完」のように目線を強調するように左上と右下にパラが掛かるようにします。

 

そこで使うのが「マスク合成」という方法です。
ここではサンプルデータの中の「mask03.pct」というマスク画像を使います。

 

このマスクと作例動画の「ノーマル02」を描き出したシート「ノーマル02.tsf」と「パラマルチ02」を描き出したシート「パラマルチ02.tsf」を使って完成動画「パラマルチ完」の絵を完成させます。

[マスク合成]というのは「mask03.pct」のような白黒のマスクを使います。
マスクを挟んで下の映像はマスクの黒部分が適用。マスクの上の映像は白部分が適用されます。
簡略化した下図を参考にしてください。

 

2.タイムシートの作成

 

では実際にタイムシートを設定してみましょう。

(1)[ファイルブラウザ]で今回の作例カットフォルダ「RS講座作例-C2」を表示し、右クリック→[新規]→[タイムシート]で新規タイムシートを作成します。

 

(2)タイムシートの設定は以下の通りです。

 

(3)「-BG」レイヤーの[セルバンク]の[開く]ボタンをクリックし、「ノーマル02.tsf」を登録。
※[選択対象]は[撮影用タイムシートファイル]にしておきます。

 

同様に「A」レイヤーのセルバンクには「パラマルチ02.tsf」を登録します。

 

(4)各レイヤーには連番で数字を打ち込みます。

まずは「-BG」レイヤーをダブルクリックして全フレームを選択

 

全選択した状態で[タイムシート]→[セル番号の自動入力]で、下図の通り、1~48までの連番を自動入力します。

 

(5)同様の手順で、「A」レイヤーにも[セル番号の自動入力]で1~48までセル番号を入力します。

 

(6)タイムシートで「-BG」レイヤーを選択した状態で[タイムシート]メニュー→[レイヤー]→[挿入]を選択します。

 

(7)「レイヤーの挿入」のウインドウが開きます。

新規レイヤー名に「mask」と入力します。
また、この時に「タップを挿入する」「セルバンクを挿入する」にチェックを入れておくとタップ、セルバンクが「mask」という同名で同時に作成されます。

 

[OK]ボタンをクリックすると、シートに「mask」というレイヤーが作成されます。

 

(8)新たに作成されたセルバンク「mask」にサンプルフォルダ内の「mask」内にある「mask03.pct」を登録します。

この時、(先ほどはタイムシートを読み込んでいたため)[選択対象]を[すべての画像ファイル]に戻します。
また、[選択ファイルのみ登録]のチェックもオンにしておきます。

 

(9)タイムシートで「mask」レイヤーをダブルクリック、全フレームを選択し、「1」を入力します。

 

(10)レイヤー設定の合成モードから「合成マスク1」を選択します。

 

これで「mask03.pct」の黒い部分には「ノーマル02.tsf」の絵が適用され白い部分には「パラマルチ02.tsf」の絵が適用されます。

 

(11)このシートから描き出されるムービーが「パラマルチ完」となります。

[ファイル]メニュー→[書き出し]を選択し、[書き出し]ダイアログで以下のように設定します。
設定が完了したら[書き出し]ボタンをクリックします。
※Windowsをお使いで、QuickTimeがインストールされていない場合はファイルタイプ「avi」形式で書き出します。

 

これで、ムービーの完成です。

動画「パラマルチ完」

 

この「マスク合成」という手法は、今回のようなパラマルチ以外にも映像を合成する場合に応用できます。
また、今回は「マスク合成1」という合成方法を使いましたが、「マスク合成2」というものもあります。
こちらはCG合成などに使われる「アルファチャンネル」を合成マスクに利用する方法です。

POINT

今回用いた手法以外にも、CoreRETASの「エフェクト」メニューの中に「色パラ」というエフェクトが存在します。


これもパラマルチを表現するプラグインですがこちらを使った場合は「パラマルチ01」と同じ色味の効果になります。

 

今回 紹介したパラマルチの方法はフィルム撮影時の表現を模した方法ですが「パラマルチ01.tsf」の絵では、 青ベタの合成方法を変えることでフィルム撮影では表現できないような合成も可能です。
それにより表現方法は広がりますのでいろいろ試してみてください。

※「パラマルチ01.tsf」の合成モードを変えた例

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