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第6回「パースfollow」と「ローリング」

提供者 : セルシス    更新日 : 2015/06/30   
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(1)はじめに

今回は「パースfollowとローリング」について説明します。
followとはカメラが被写体を追いかけていく撮影を差します。
実写の場合はその通りカメラが被写体を追いかけていきますが、フィルム撮影のアニメの場合、カメラは固定されています。そこで、カメラではなくBG(背景)のほうをfollow方向とは逆にスライドさせます。

 

そのためアニメの場合はfollow方向が左であれば台方向(BGのスライド方向)は右というように指示されます。実際の撮影指示ではfollow方向と併記で台方向も指示しておくのが、間違いのない方法です。
2次元的なfollowの場合はデジタルでもフィルムと同じようにBGを指定方向にスライドさせるだけで良いです。
一方、デジタルならではの手法として「奥に走っていく被写体を追いかけるfollow」を表現できます。当然ですが奥から手前に向かってBGが広がってくように見せることもできます。これはフィルムでは不可能な方法で、フィルムで同様の効果を得るには背景動画(背景も動画として作る)などの方法ぐらいしかありませんでした。
これには決まった名前は存在せずスタジオにより呼び名が違っていたりします。
今回の講座ではこれを「パースfollow」という呼び名で扱います。

もう一つの「ローリング」とは本来は船の揺れなどの上下動を表現する手法です。
そのまま船のローリングなどに使われることもありますが足下がフレームに入っていないような構図での人の歩きや走りでは1枚のセルを上下動(ローリング)させることで歩きや走りを表現することもできます。

 

この「パースfollow」と「ローリング」を組み合わせることで「人物が奥に走っていく映像」をBG1枚とセル1枚で表現できます。

作例として、以下のデータを使用します。
・第6回作例データ

今回の作例では、タイムシートに読み込む動画データを同梱しているため、ファイルサイズが大きくなっています。

 

(2)タイリング

1.タイリング用BGの作成

まずパースfollowですが、走っている時間分BGを用意すると、とんでもなく長いBGが必要になります。
扱うデータが極端に大きくなると、後の作業が重くなったり不安定になったりします。

そこで「タイリング」という機能を使います。
これはBGを延々と自動的に繋いでいく機能です。
自動的に繰り返してはくれるのですが、単純に端と端を繋ぐだけなので、つなぎ目が分かってしまいます。

 

そのため、予めつなぎ目が分からないようにする処理が必要になります。
例えばBGを縦に引く場合は、上下を繋いで連続させるので上下の辺が繋がったときに継ぎ目が分からないようにすればよいのです。

具体的な方法としてはフォトショップなどの画像編集ソフトを使用して...
任意の位置で画像を上下に分割しその上下を入れ替えます。これにより背景の上辺と下辺は元々繋がっていた部分ですからつなぎ目は分からなくなります。

 

ただし今度は、画面の中央で「つなぎ目」が出現します。
この中央のつなぎ目を画像編集ソフトで部分的にぼかすなり描き足すなりして、つなぎ目を分からなくすればタイリング可能な背景は完成です。
つなぎ目が消しやすいように背景を描いておくことが後の作業を楽にします。

 

今回の背景は「タイル張りの床」なので、目地の部分で背景作画を切れば上記の作業は不要になります。

 

2.タイリングの設定

ではまずBGを繰り返してスライドさせるようにコアレタスのシートを組んでみましょう。

(1)新規にタイムシートを作成します。今回は72フレームのシートを作成しました。
また、コアレタスの「シートの設定」のカメラサイズはBGのサイズと同じにしておきます。

 

(2)作成したタイムシートのセルバンク「BG」にBG画像を登録します。

 

(3)「BG」レイヤーを選択し、[レイヤー設定]パレットの[タイリング]の[垂直]にチェックを入れます。
これで、垂直(縦)方向にBG画像がタイリングされ、繰り返されるようになりました。

 

(4)次は、[中割り]パレットを利用して、BGをスライドさせていきます。
タイムシートで「BG」レイヤーを選択しパラメータを「T位置Y」に切り替えます。
[中割り]パレットの「値」でスタートフレームとラストフレームに「非連続キーフレーム」を設定します。

 

(5)次に、[中割り]パレット内の[中割り]→[種類]のプルダウンメニューから「フォロー」を選択します。

 

(6)続けて、[角度設定]ボタンをクリックし[角度指定]ダイアログを開きます。
「軸周り角度指定」→「Z軸周り」に90を入力します。
これで、フォロー(BGのスライド)の方向が下方向に設定されます。

 

(7)後は1コマにおける移動距離を設定します。
単位は初期状態で「pixel」となっていますが「mm」や「inch」にも変更可能です。
今回は「pixel」のままで作業します。

ここでは移動距離に「300」を入力してみましょう。
入力後[自動中割り]ボタンをクリックするとBGのフォローが設定され、シートには数値が入力されます。

完成したタイムシートを「タイリングシート.tsf」として保存します。

 

このシートをレンダリングして描き出したものが動画「タイリングシート」です。

動画「タイリングシート」

 

これを見ると、背景が連続して下に流れているのが分かると思います。
ただこれでは床を真上から見た構図にしかなりません。

奥に向かう画面を作るには、この動画をさらに加工して、パースをつける必要があります。

 

(3)BGにパースをつける

先ほどのBG動画にパースを付けるために新しいシートにネスティングして、加工します。

(1)タイムシートを新規作成し、設定で「3Dモード」を選択します。
このシートではカメラサイズは背景サイズに合わせる必要はなく完成サイズで構いません。

 

(2)BGレイヤーのセルバンクに先ほど作成したタイムシート「タイリングシート.tsf」を登録(ネスティング)します。

 

「BG」レイヤーに[タイムシート]メニュー→[セル番号の自動入力]で1~72までの連番を入力します。

 

(3)タイムシートのパラメータ表示で「T回転X」を選択します。

 

「BG」レイヤーのすべてのフレームを選択して「T回転X」に60を入力します。

 

この「T回転X」の項目はタイムシートを「3Dモード」に設定した時のみの項目です。
ここで入力した「60」はステージ上のX軸を軸に60度回転させた状態です。
そのためY軸(縦)方向にBGが圧縮されたように表示されています。
ただこれではまだパースはついていません。

 

※カメラレイヤーの投影方法を変更すると、この段階でパースに沿った変形がされますが、今回は別の方法をとります。

(4)そこで「レイヤー設定」の「コーナーピン」にチェックを入れます。

 

続けて[ステージ]上の[タップ編集/レイヤー編集]ボタンをクリックして「レイヤー編集」モードに切り替えます。
レイヤー編集モードになると、ステージウィンドウのタイトルに「レイヤー編集」と表示されます。

「レイヤー編集」モードでは、ステージの「コーナーピン」のアイコンがアクティブになるので、[コーナーピン]ボタンをクリックします。

 

(5)[コーナーピン]ボタンをクリックすると、ステージのBGファイルのコーナーに四角いマークが出現します。

 

この四角いマーク(コーナーピン)にマウスカーソルを合わせると「手のマーク」に変わるので、ドラッグして移動できます。
ステージ上でコーナーピンを動かす事でBGを台形状に変形させ、カメラフレームに対して中央になるように調整します。

 

これをレンダリングしたムービーが、動画「パースシート」です。

動画「パースシート」

 

これで床が流れて行く絵が完成しました。

POINT

手順(3)で[T回転X]を設定した際、BGにパースが付きませんでしたが、これはカメラの投影方法が「平行投影」に設定されているためです。
カメラの投影方法を「透視投影」に変更すると、Z軸方向の距離に応じて縮小され、パースがつきます。


ただし、この場合[T回転X]を「-60」と入力しないと、床の上下が逆になってしまいます。
他にも、「CAM」(または「BG」)レイヤーの位置X/Y/Zをそれぞれ調整して、カメラフレーム内にパースのかかった床が正しく表示される設定にしなくてはなりません。


今回のように単純なパースの場合は、「コーナーピン」を使って、正面からの見た目のみ考慮した状態で変形してしまった方が、調整の手間が少ない場合もあります。

 

 

(4)ローリングの設定

次にローリングを説明します。

先ほど作成したシートをネスティングしてキャラのローリングを加えてもよいのですが、絵を変形させる計算はPCに負荷が掛かるので、先ほどのシートをレンダリングした「パースシート.mov」をBGとして登録して作業を進めます。

(1)新規にタイムシートを作成します。今回のシートは「2Dモード」で構いません。

 

(2)タイムシートを作成したら、セルバンク「-BG」に、「パースシート.mov」を読み込み、[セル番号の自動入力]で、「-BG」レイヤーのセル番号をすべて入力します。

 

(3)BGを登録したひとつ上のレイヤー「A」にキャラのセルを登録、タイムシートにセル番号「1」を入力します。

 

(4)このキャラに上下動を付けます。
まず作業がわかりやすいようにステージの[中心]ボタンをクリックし、中心点を移動します。
セル(黄緑枠)の左上にある「+」マークをキャラクターの頭の上に持ってきます。

 

(5)ステージで[移動]ボタンをクリックします。

 

1コマ目のセルのこの位置をローリングのスタートとします。
まず、シートの表示を「T位置Y」としAレイヤーの1コマ目を選択した状態で「中割り」の「非連続キーフレーム設定」をクリックします。するとAレイヤーの1コマ目に▼マークが付きます。

 

19コマ目にも同じようにキーフレームを設定します。

 

(6)さらにタイムシートの10コマ目を選択し、ステージ上でキャラクターを任意の位置まで下げてみましょう。
すると、10コマ目にもキーフレームが付き、その間が中割りされたのが分かると思います。

 

ただ、この状態ではローリングはまだ1往復しかしていません。
また、中割りも単純に等速で割られているだけです。実際こういったローリングの動きを自然に見せる為には、等速では中割りをしません。
移動方向が反転する前は徐々に減速していき、反転した後は加速していくように設定します。

(7)これを再現するために、タイムシートで1コマ目から10コマ目を選択します。
この状態で「中割り設定」の種類から「グラフ」を選択しグラフで加速、減速を付けます。
グラフの設定は下図を参考にしてください。

 

10コマ~19コマ間も同様に中割りの種類「グラフ」で加減速を設定します。
これで「スムーズな上下動」が1回付いたことになります。

(8)ところで、アニメの作画の場合動きというのは2~3コマ打ちで表現することが多いです。
現在このローリングは1コマ打になっています。これを3コマ打に変更します。

「中割り」の設定の一番下に「同セルは同一値」と書かれたチェックボックスがあります。
これは、同じセル番号が連続している場合は中割りの値を変更しない(=スライドをしない)という設定です。
つまり、セルが3コマ打であればチェックを入れるだけでスライドも3コマ打にすることができます。

 

ところが、今回の場合「A」レイヤーのセルは1枚だけですので単純にこのチェックを入れるだけではスライドが止まってしまいます。

(9)このような場合には、同一セルの判定を「A」以外のレイヤーに設定することで対応できます。
空いている任意のレイヤーに数字を3コマ打ちで入力します。今回は「B」レイヤーに入力します。

 

3コマ打ちのレイヤーを作成したら、[中割り]パレットで、[同セルは同一値]のチェックボックスをオンにし、リストで「B」を選択するとAレイヤーのローリングが3コマ打になったことが分かると思います。

 

(10)最後に、タイムシートの1コマ目から18コマ目をコピーし、それを19コマ目以降に繰り返しペーストします。

 

これで上下動の繰り返し、すなわち「ローリング」が完成しました。
これをレンダリングしたものが動画「ローリングシート」です。

動画「ローリングシート」

 

床のBGと人物のセルの2枚の素材だけでこの程度のものまで作る事ができるわけです。
また、先の作例ではローリングが上下動のみでしたが、それにこだわる必要はありません。
例えば動画「ローリングシートA」を見てみてください。

動画「ローリングシートA」

 

これはローリングに横の振りも加えた軌道になっています。
軌道を変える事で表現の幅も広がりますのでいろいろ試してみてください。
サンプルデータ内にこの動画のタイムシートファイル「ローリングシートA.tsf」があります。
参考にしてみてください。

基本の講座は今回の回で終了ですが次回は番外編として「流れ星」を作ってみます。

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