第9回 デジタル作画の優位性~前編~
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(1)講座概要
第9回、10回の講座では短期スケジュールの中でのデジタル作画の優位性を解説していきたいと思います。
その中でも、キャラクターデザインから最終納品までの過程を2回に分けて説明していきます。
今回の前編はデジタル作画を選択するまでの流れから、中間チェックまでとなります。
(2)受注までの経緯
ある日、会社に1件の問い合わせがありました。実写ドラマの中のアニメーションを1カット制作してほしいということでした。
内容は以下の表となります。
受注内容と現状
スケジュール | オンエアが2週間後 |
内容 | 平将門が馬に乗って向かってくる(10秒のカット) |
納品形態 | HD-CAM |
その他 | キャラクターデザイン、色設定も新規で起こす シチュエーションの情報をメールで伝達 コンテは存在しない 前後に入る実写の内容は未確認 |
すべての作業を事実上並行して進めながらも、要望に対して柔軟に対応するためにはデジタル作画が有効と考えました。
作業の流れを「止める」要素(プリントアウト、コピー、チェックするためのスキャン、データ化)をデジタル作画だと最小限にできるので、作業時間を確保するには最適です。
(3)作業ワークフロー
※青ベース:クライアントのチェックが必要な箇所
スケジュールから逆算して構成したワークフローを作成します。
デザインや色設定に、ある程度方向性が見えれば仮色やラフ原画でアニメーションを作成しクライアントにチェックしてもらう、といった流れです。
(4)キャラクターデザイン
いわゆる「イケメン」のキャラクターにしてほしいといったオーダーから「美系」のキャラクターを作成しました。
イメージ先行の服装を、鎧のデザインで形成。表情をはっきり見せたいので兜はかぶらせていません。
この段階でクライアントチェックへ進めます。
(5)[Stylos]での作業
キャラクターデザインのクライアントチェック中に[Stylos]でラフのレイアウトを作成します。その上で髪や鎧や服の動くところを確認していきます。
今回はキャラクターデザインに1回でクライアントのOKが出ましたので、より細かいデザインの書き込みを加えたレイアウトと色彩設定の作業に入ります。
(6)色彩設定とペイント
キャラクターデザインのOKが出た後にキャラクターの色彩設定を作成します。今回は膝から下はレイアウト段階では見えないので省略しました。
色彩設定を元にペイントされたセル
(7)背景と合成してムービー作成
作画修正後、ブラシワークによる質感を加えて撮影します。
ラストカット時、画面に対してUPになるため解像度を144dpi以上で作画します。問題がなければクライアントにチェックとして提出します。
ここまでのトータル作業期間は4日間でした。予想以上のスピードでチェック提出まで完了しました。
次回予告
クライアントからの追加の要望に対してもスピーディーに対応できるか。次回の後編ではその流れを解説していきます。
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