第1回 プリプロダクション
閲覧数 : 28537回 総合評価 : 11件
「自主制作」であれば、もちろん好きなソフトを使って(あるいは描きで)アニメを作って良いのですが、今回の作例は主にRETAS STUDIOを使用しました。RETAS STUDIOを使用するメリットは...
・作画から仕上げまで全部できる!
・作画の線が綺麗
・タイムシート機能があるので、作画しながら動きのチェックができる。
・PaintManでは彩色が本当に便利。はやい!
・撮影用のCoreRETASにはアニメの演出に特化したエフェクトが多数入っている。
などなど。実際の作業を通して見ていきましょう!
(1)どういうものをつくろうか
まずはじめに決めるのは、「時間」と「どういうものか」です。
最初から「凄い30分のアニメを作ってやろう!」と思うのもいいですが、何分長いアニメは作るのに本当に時間と労力と精神力がいるので(多分)、最初はソフトに慣れる為にも、10秒から30秒程度の短いアニメーションを作ってみるといいかもしれません。
とりあえず今回は・・・
時間:「30秒から1分のアニメを作る」
どういうもの:「声がついてるやつ」
を作ろうと思いました。
正直これで完成系は半分見えたと思います!
「どういうもの」というのは自分なりの方向性のようなもので、例えば「アートアニメーション」や「普通のアニメ」から、「絵本みたいな」「白黒で」「手描きMAD」「超アクション」など自分なりに作りたい物やジャンルなどをはっきりさせておくと良いです。
(2)中身を決める
形が決まったら、今度は中身を考えて行きます。
筆者の場合は「夏休み」「学校」「ループもの」「セカイ系」など、まず単語を頭の中で思い浮かべて、
「夏休み、主人公が5人のクラスメイトと一緒に学校に閉じ込められ、 ループする世界に巻き込まれる」
という風に、ストーリーにして行きます。
また逆に、キャラクターからストーリーを発想する事もあります。
と、何を作ろうかと考えていた所ちょうど良く
↑こんな夢を見ました。
筆者はたまに見た夢を携帯にメモしてるのですが、『兄貴と弟でパーティでラジオノイズ、惑星』
と訳のわからないメモが書かれていました。
ですが、アイデアはどこから生まれるか分かりません(本当に)。
とりあえずこの中から「ラジオ」「兄弟」「宇宙人」「宇宙」の要素だけをピックアップしてお話を作って行きます。
(3)シナリオを作る
1.シナリオ(プロトタイプ)
シナリオは、先ほどのキーワードを手がかりにして、思いつくまま書いて行きます。
今回は「声がついてるやつ」を作るので、必然的にシナリオも会話ばかりになります。
これが今回のシナリオです。
弟「兄貴、俺が宇宙人だとしたらどうする?」
兄「・・・別に?」
【スペース・スペース】
(歩きながら、弟聞く)
弟「ねぇ兄貴、」
弟「じゃぁ俺が火星人だったら?」
弟「未来人だったら?」
弟「地帝人だったら?」
弟「半魚人だったら?」
弟「いやまぁ、宇宙人なんだけど」
(兄貴振り返り、)
兄「(息を吸い)お前が、」
兄「異星人だろうが、だろうが、海底人だろうが
アンドロイドだろうが妖怪だろうが怪人だろうが」
兄「お前は俺の弟だよ。
馬鹿な事聞くな」
(弟、ちょっと涙目になって)
弟「兄貴、きっと俺たち宇宙一の兄弟だよ」
兄「馬鹿いえ、銀河一だ」
[END]
文章で見ると凄く短いのですが、試しに自分で書いたシナリオのセリフを全部喋ってみて下さい。
時間を計りながら喋ってみると、意外と時間がかかります。声付きのアニメを作る場合はこういった確認も重要です。そのあたりも考えつつ、あまり長くならないものを作ります。
2.キャラクターデザイン
シナリオが出来たら、ざっくりとキャラクターデザインをします。
弟/19歳
宇宙人。
この度最愛の兄に、自分が人間でない事を告げようと決意。
血が緑。ブラコン。
兄貴/24歳
無表情で何事にも動じない人間。やっぱりブラコン。
包容力はきっと抜群。
幼い頃から忙しい両親に変わって、ずっと弟の面倒をみてきた。
どんなに短いアニメーションでも、キャラクター設定は必要です。
でないと後で作画する時に「髪型が分からない」「横顔が同じ人物に見えない」
「服が後ろから見たらどうなってるのかがわからない」など多々困る事があります(筆者だけかもしれませんが)。
3.シナリオの修正
しかしこのシナリオ、これだけ見ると「どういう場所で、どういう構図で、どういうキャラクターが、どういう表情で会話をしている」のかが全くわかりません。
その場合に便利なのが「絵コンテ」という、いわゆるアニメの設計図みたいなものです。
これが筆者の絵コンテです。
本当は絵コンテ用紙など使った方が良いと思うのですが、筆者の場合大体白い紙にざっかざっかと書いて行きます。オールフリーハンドです。
絵コンテがあれば、完成系をイメージできるし、作業の途中で構図に悩む事ないので良い事づくしなのです。
また、複数人で作業する場合はイメージの共有に役立ちます。
が、まぁ今回はアニメが短いし、いっかなぁ、ということで絵コンテはさぼって描きませんでした・・・。
そういうこともあります!
自主制作アニメは自由なので、「これをしないといけない」という決まりはありません。
作業しながら演出を思いつくこともあるので、絵コンテが最重要ということもありません。
(でもやっぱり絵コンテは描いた方が良い)
絵コンテを描かないかわりに、シナリオに情報を書き加えてゆきます。
[SE]蝉の声
:夏、蝉が鳴いている。
フェンスの前
(弟が心配げに兄の方を向く)
弟01「兄貴、俺が宇宙人だとしたらどうする?」
兄01「・・・別に?」(無表情で)
【スペース・スペース】
[BGM] BGMが入る
(歩きながら、弟聞く)
:セリフごとに背景が変わる。
[SE] 足音
弟02「ねぇ兄貴、」
弟03「じゃぁ俺が火星人だったら?」
弟04「未来人だったら?」
弟05「地帝人だったら?」
弟06「半魚人だったら?」
弟07「いやまぁ、宇宙人なんだけど」
(うつむく弟)
(兄貴振り返り、)
兄02「(息を吸い)お前が、」
:文字でばぁーっと枠が削れて行く。背景、次第に青空に
兄03「異星人だろうが、だろうが、海底人だろうが
アンドロイドだろうが妖怪だろうが怪人だろうが」
(最後になるにつれノンブレスで)
兄04「お前は俺の弟だよ。(優しく)
馬鹿な事聞くな」
(弟、ちょっと涙目になって)
弟08「兄貴、きっと俺たち宇宙一の兄弟だよ」(兄に駆け寄る)
兄05「馬鹿いえ、銀河一だ」
(後ろ姿で歩いて行く二人)
:スタッフロール
[END]
人物の横に数字がついているのは、声優さんに収録してもらう場合のファイル名です。
上から順番に数えて行きます。
また、[SE]は効果音、[BGM]は音楽です。
今回の演出のポイントは、「前半と後半のメリハリを付ける」事と、「似たような言葉の繰り返しの部分の演出をどうするか」ですが、この辺りはまた後で語っていこうと思います。
(4)作画に入る準備をしよう
それでは、シナリオもキャラクターも出来たので、作画に入ろうと思います。
ですが、その前にやっておくと良い事がいくつかあります。
1.今回制作するアニメのフォルダを作る
作業を始めると分かるのですが、アニメは基本の「作画」「彩色」から、「背景」「効果音」「BGM」「声」など、必要なファイル数がとても多くなります。
ここでファイルを整理しておかないと、「背景をどこに保存したかわからない」など、後で混乱することになるので、最初にデータをまとめられるような作品フォルダを作っておきます。
ファイルには、わかりやすく作品名をつけておきましょう。
基本は「作画」と「彩色」フォルダがあれば十分です。後で素材が増えてくるにつれ、フォルダも増やして行きます。シナリオと、今回使用するBGMも一緒に入れておきます。
2.Stylosでもフォルダの管理をしておく
アニメはただでさえ画像の枚数が多いのに、毎回毎回メニューから[開く]→[セル]→「作品フォルダ」→「作画」を選択するのは面倒くさい!というあなた。
予め「作品フォルダ」を[ファイルブラウザ]の参照先に設定しておくと便利です。
(1)[Stylos」を起動します。
最初に[ウィンドウ]メニュー→[ファイルブラウザ]を起動します。
ファイルブラウザが表示されたら、左上にある[ブラウザフォルダの編集]アイコンをクリックします。
(2)[ブラウザフォルダの編集]ダイアログが表示されます。
[追加]ボタンをクリックして、さっき作った作品フォルダ(今回は「スペース・スペース」)を追加します。
白い枠内に文字が表示されたら[OK]をクリックします。
(3)するとファイルブラウザの左の枠に下図のように作品フォルダが表示されるはずです。
これで「作品フォルダ」に簡単にアクセス出来るようになりました。
毎回「開く」を押さなくても、ここからファイルが開けます。
また「ファイルブラウザ」ではフォルダの作成などもできるのでここで作品ファイルを管理する事も出来ます。
作るアニメが増えれば増えるほど、左枠にもフォルダが増えて行きます。
3.声優さんに声を頼む
さて、ここで一旦作画から離れます。
今回作るアニメーションは、「声がついてるやつ」なので、声優さんがいないと話になりません。
(自分で全部声優をするという手もありますが、筆者の場合それだとクォリティが 大分怪しくなってしまうので)
といっても早々声優の知り合いなんていないので、筆者はいつもインターネット上の募集サイトでアマチュアの声優さんに頼んだり、声をやってくれる人を募集したりしています。
自主制作アニメでは、作画やシナリオ以外にも、こういったマネジメントも自分で行わなくてはなりません。
収録には時間がかかる場合もあるので、頼む場合も、募集する場合もお早めに!
間違っても筆者のように〆切の数日前に「お願い!」なんて頼んでは駄目です(実話です)。
4.作画フォルダの準備
それでは、[Stylos]に戻って、作画用カットフォルダを作りましょう。
(1)先ほどの[ファイルブラウザ]を開き、ツリーから「作画」フォルダを選択して、右クリックメニューから[新規]→[カットフォルダ]を選択します。
(2)すると、[作画カットフォルダ]ダイアログが表示されます。
ここでは、今から作画するシーンの詳しい設定を決めます。
作品名:「スペース・スペース」を略してスペスペ
話数:何話も無いので1話で。
シーン:今回は、前半と後半に分けるので、前半のシーン01。
(ここで番号でなく「前半」と打ち込んでしまってもオッケーです。)
カット番号:最初のコマなのでカット01
サイズは、カスタムで960*540(16対9)と打ち込んでおきます。
アニメ自体は基本の720*480で制作するのですが、今回はちょっと大きめサイズで作画しておきます。
[タイムシートを作成する]は、一応チェックを入れておきます。
すべて設定できたら、[OK]ボタンをクリックします。
(3)[ファイルブラウザ]の左側に、今制作したカットフォルダが表示されます。
(4)カットフォルダの[画像]タブをクリックし、さらに[画像]タブの左下の[動画]タブをクリックします。
「Inbetween」フォルダ内に画像があると、ここにサムネイルが表示されます。
これで作画準備完了です。
さて、今回は作画の準備でおしまいなので、RETAS STUDIOの出番がほとんどありませんでしたが、次回からはいよいよ作画、彩色、と実作業に入っていきます!
コメント