第2回 作画
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第2回は、ようやく作画です。
カットフォルダの作成などの準備はすでに第1回目でしておいたので、早速作画に入って行きましょう。
(1)作画する
1.パレットの準備
筆者はいつも、こういった画面で作業をしています。Macなので、ウィンドウの背景が透けています。
基本的なウィンドウは、全部表示しておきます。 表示されていないウィンドウは[ウィンドウ]メニューから表示します。
特によく使用するのは・・・
[ファイルプレビューワー]パレット
[ファイルブラウザ]と同じように見えるのですが、作画用に機能が絞り込まれているので[ファイルブラウザ]より便利です。 これさえ開いておけば、今やっているカットの作業内容が一目瞭然です。
ここで一度設定を変更しておきます。 [ファイルプレビューワー]パレットを右クリックして、メニューから[設定]を選択します。
[ブラウザ設定]ダイアログで[レイヤーの種類]を[ベクター作画レイヤー]に設定しておきます。
詳しくは後で解説しますが、この設定で新規に作成したセルは「ベクター作画レイヤー」として作成されます。
[レイヤー]パレット
新規にセルを作成した時はレイヤーの種類が「ベクター作画レイヤー」になっているか、確認してください。 「ラスター作画レイヤー」になっていると、いくつかの機能が使えないため、後々不便な事があります(筆者の作業内容的には)。 下の「色トレース線」については、また後で詳しく語って行こうと思います。
他にも、[ライトテーブル]パレットなどを使用します。
また、[ツールオプション]パレットを表示している状態で、[ペン]ツールを選択すると、[ペン]ツールの設定を変更できます。
通常、[線の太さ]は「1px」が最小なのですが、上図赤丸の所にチェックを入れておくと、筆圧感知が適応されて かなり細い線(色が薄い線)をひく事ができます。 細い線好きな方はこのボタンにチェックをいれてみて下さい。
2.作画開始
(1)それでは、作画をします。
筆者はあまり下描きをしない派なので、レイアウトを描かずにそのまま動画用紙に描きはじめます。 [ファイルプレビューワー]パレットで、[レイアウト]でなくそのまま[動画]タブをクリックします。
(2)ダブルクリックして新規のセルを開くと、こういう画面になります。
(3)下描きはあってもなくてもいいのですが、今回は最初なので一応下描きをしようと思います。 その時に使用するのが、この[レイヤー]パレットです。
下図の通り、緑の「色トレース線プレーン」を選択します。
※「プレーン」というのは分かりにくいかもしれませんが、「レイヤー」のようなものです。 「ベクター作画レイヤー」の中で、さらに「主線プレーン」、「色トレース線プレーン」というレイヤーが分かれている…といったイメージです。
(4)すると、線の色が緑になったハズなので、そのまま下描きを描きます。 この時の線の色は赤でも青でもいいのですが、緑が一番薄いので緑にします。 (ベクター作画レイヤーの不透明度を変えると、全部の「色トレース線」プレーンの不透明度が変わってしまうので、青や赤だと、黒い線の色がみえにくい為)
(5)下書きが出来たら、[レイヤー]パレットの「主線プレーン」を選択して黒線で清書していきます。 髪や口など、動きがある部分はパーツごとにセルを分けて合成するので、この段階では、描き込みません。
(6)清書ができたら、影指定を描いて行きます。 [レイヤー]パレットで、それぞれ「赤」と「青」の「色トレース線プレーン」を選択して描画します。
影指定は、「ハイライトが赤!影が青!」のように分けて描くのが理想です。 自分以外の人に塗ってもらう場合、全部赤で描いてしまうと、どこが影でどこが光か分からなくなって相手が混乱してしまいます。きちんと普段から色トレース線の色を使い分ける癖をつけておきましょう。 とはいえ、今回は全部自分で塗るので赤だけでもなんとかなってしまいます。間違えなければ良いのです!
▼赤線だけの例
▼青線も使った例
(7)描き上がったら、緑色の線を消しておきます。
①[レイヤー]パレットで「緑の色トレース線プレーン」を選択した状態で、
②[編集]メニュー→[全てを選択]
③[編集]→[カット]
の順番で実行すると、緑色の線だけが消えます。
この作業をしておかないと、書き出しの際緑色の線まで書き出されてしまうため、彩色で手間取る事になります。
(8)間違えた時は[消しゴム]ツールで消すのですが、この[消しゴム]にも便利機能が備わっています。 例えばこの絵の場合。赤丸部分を消したいのですが……
そういう時、消しゴム[ツールオプション]の[交点まで削除]ボタンをオンにしておきます。
すると、たった一消しで綺麗に邪魔な線が消えたと思います。
この機能は、セル(レイヤー)作成の時に「ベクター作画レイヤー」を指定していなければ、使用出来ません。 また、[線つなぎ]ツールや[線幅修正]ツールなど他にもベクター作画レイヤーでしか使えないツールがあります。
(2)ライトテーブルパレットを使用する。
さて、今回は顔は動かず、髪だけ動くアニメーションを作ろうと思います。 顔は動かないのに、顔のアニメーションを何枚も描きたくないですよね? 筆者は横着者なので、描きたくないです。正直顔は一枚で良いです。 なので、今回は動く所と動かない所、それぞれパーツ分けして描きました。
顔(A)、目(B)、目玉(C)、髪(D)、口(E)、服(F)、手(G) とそれぞれセルレイヤー別になっています。 ですが、こんなに分けてどうやってパーツの位置とか把握するの?と思いますよね。 そんな時、とても便利な物があります。
ライトテーブル、またの名をトレース台とも言います。 下から光を当てて、重ねた下の絵を透けさせる、アニメ制作に必須のアイテムです。 RETAS STUDIOで、このトレース台と同じ事ができるパレットが[ライトテーブル]パレットです。
(1)使い方は、まず[ウィンドウ]メニューから[ライトテーブル]パレットを表示します。
(2)次に新しく描画するセルを作成し、[ファイルプレビューワー]パレット(または[ファイルブラウザ])から、新しいセルに透かして表示させたいセルを[ライトテーブル]パレットへ、ドラッグ&ドロップします。
(3)すると、ドラッグしたセルが、半透明で表示されたハズです。 (これは、透けて見えているだけで、新しいセルに実際に描画されているわけではありません。)
また、余談ですが、ライトテーブルは、セルをドラッグしなくても[ファイルプレビューワー]パレットの上にあるこのボタンを押したら登録できるようにもなっています。こっちの方が便利かもしれません。
ライトテーブルの表示を薄くする
あれ?表示されたけどこんなに薄くない、という方。 Stylosの初期設定では、ライトテーブルは濃く表示されるようになっています。 なので、もっと薄く表示したい場合は、[ライトテーブル]パレットの[メニュー表示]ボタン→「設定」から、
[ライトテーブル設定]ダイアログを表示し、[不透明度を自動で設定する]にチェックを入れます。 ここの値を低くしておくと、ライトテーブルにドラッグしたセルの不透明度が下がります。
ちなみに10%刻みで下げるというのは、下図のように画像を重ねた時に、下のセルが10%ずつ薄くなります。
この[ライトテーブル]パレットは、他のセルレイヤーにも適応出来るので、下図のように、別々に描いたセルを組み合わせる事も出来ます。
ちなみに、赤丸のついているA B Cは、それぞれセルレイヤーの名前を表示しています。
(4)ライトテーブルの仕組みを理解してきたら、作画して行きましょう。 髪のなびきなど、前後のセルと比較しながらすこしずつ描いていきます。
動きをチェックしてみる
それでは一度、動きをチェックしてみましょう! 現段階ではタイムシートを打っていないので、動きは、[セル]メニューの[連続表示]でチェックします。
[連続表示]を抜ける時はキーボードの[esc]キーを押します。 [連続表示]では、ライトテーブルの画像を透かしたまま動きをチェックできるので、複数のパーツに分けて描いた場合は、ライトテーブルを駆使しながら、動きを確認してみましょう。 きちんと動きましたか? もし、かくかくしている、微妙…などの場合は、まぁ描き直したり、動画枚数を増やしたりします。 作画は、精進あるのみだと思っています……。 自分でその動作をやってみるのも効果的ですよ!
必要なパーツが書き終わったら、一旦人物の作画は休憩しましょう。
(3)背景を描こう!
次に、背景を描いていきます。
1.フェンス
筆者は背景が駄目駄目なので、トレースをつかいます。 さて、とりあえず今回は先ほど描いた人物の背景にフェンスを合成しようと思うので、 写真素材のサイトなどで、フェンスを検索します。 素材を探す場合、著作権の侵害には気をつけて下さい。 人の作品や有料素材を「トレースだからいいよね」なんて思って使用してはいけません。
無料素材を使用する場合は、まず利用規約をよく読みましょう。
Googleの画像検索で引っかかった画像も、勝手に使用してはいけません。 いやまぁ、ついつい「このくらいなら……」という気持ちになってしまう事もあるのですが…駄目です。 今回は、ふにふにさんの撮影したフェンスの写真を使用させて頂きます。
(1)まず、Stylosの[ファイル]→[新規]→[セル]で、新規セルを作成します。 この場合、「大は小を兼ねる」というので、1280×720というちょっと大きいサイズで作っておきます。 フェンスの画像は、新しく「背景」フォルダを作って、その中にでも入れておきましょう。
(2)[ファイルブラウザ]で「背景」フォルダを表示したら、先ほどのフェンスの写真を選択して、[ライトテーブル]に登録します。
(3) すると半透明で表示されるはずです。 ただ、これだと、フェンスがちょっと大きいですよね。
(4)そういう場合は、ライトテーブルパレットの電球ボタン([ライトテーブル]ボタン)を押します。
(5)これで、ライトテーブルに登録した背景を、拡大縮小できるようになります。
縮小したり・・・
移動させたりして、ちょうど良い大きさにします。 今回はこのくらいの大きさにします。
(6)後はひたすら[ペン]ツールでなぞって行きます。 トレース作業は長丁場になるので、適度な所で保存して置きましょう。 また、ライトテーブルに登録した画像は、一度ウィンドウを閉じてしまうと消えてしまうので、もう一度最初から登録しなおさないといけなくなります。 (パソコンの調子が悪くなってからでは手遅れです!)
2.雲素材
さて、フェンスが描き終わりました。ついでに雲も新しくカットフォルダを使って、描いておきましょう。
筆者は、一枚のセルに雲を描いてしまうのでなく、 セルごとにいくつかの雲のパターンを描いています。
この方が、後ほど編集がしやすいからです。 Stylosの基本機能が使えるようになったら、どんどん作画して行ってみましょう。
(4)便利機能
レタスには、作画に役立つ多数の便利な機能が備わっています。
◆線つなぎ機能
[線つなぎ]ツールは、隙間の開いた線をつないでくれる素敵ツールです。 色々な選択方法があるのですが、筆者はいつも一番右の「投げ縄」を使っています。
このような隙間でも、線つなぎ機能で囲むと
このように線がつながります。
[ツール]パレットで[線つなぎ]ツールを選択しなくても、[ALT]キーを押している間は、一時的に[線つなぎ]機能が使えます。
◆拡大縮小
先ほど[ライトテーブル]の拡大縮小をしましたが、普通の(セル画像の)拡大縮小はどうでしょう? 拡大縮小をするには、まずセル全体を選択しなければなりません。
①[編集]メニュー→[全てを選択]
②[編集]メニュー→[変形]→[拡大・縮小]
の順で実行します。
ただ、普通に拡大縮小をすると、下図のようになってしまいます。これは[レイヤー]パレットで「青トレース線プレーン」しか選択していなかったからです。
絵全体を拡大縮小するには、予め[レイヤー]パレットで、「他の色トレース線」も選択します。
この状態で、改めて拡大縮小を行うと、今度は全部拡大ができました。
◆回転
回転も拡大縮小と同様に、予め[レイヤー]パレットで回転させるプレーンを全て選択しておきます。 この状態で…
①[編集]メニュー→[全てを選択]
②[編集]メニュー→[変形]→[回転]
と実行すると、選択中のプレーンを回転できます。
◆部分移動
ツールパレットに、[移動]ツールはありますが、[移動]ツールでは選択範囲があってもなくてもレイヤー全体が移動してしまいます。では、一部分だけ移動させたい場合は、どうしたらいいのか。 その場合、先ほども登場した「拡大・縮小」を使用します。 最初に、「投げ縄ツール」で部分移動したい所を囲みます。
次に「拡大・縮小」で、移動させます。
これで部分移動ができました。
◆複製
また、応用として、複製もこの「拡大・縮小」で行います。 まず最初に複製したい部分を「投げ縄ツール」で選択します。
[コピー]/[ペースト]して、[拡大・縮小]を行います。 そのままドラッグすると、先ほど複製した部分が動かせます。
フェンスなど、似たような絵の繰り返しを描く場合は、この手順を活用してみましょう。
(5)書き出し
素材が出そろったら、彩色用に書き出しをします。 今の状態は作画専用の形式なので、このままでは彩色できません。
(1)書き出しは、カットフォルダを[右クリック]して[書き出し]→[仕上げ]をクリックします。
(2)[カットフォルダ書き出し]ダイアログが表示されます。 ファイルの種類は、色々あるのですが筆者は他のソフトで素材を加工する場合にも便利なのでPNGを使用しています。 書き出し先は、最初に作っておいた彩色フォルダにしましょう。
「動画(Inbetween)」フォルダに作画したので対象選択は[動画]を選択します。 その際に、動画の[設定]ボタンをクリックして下図のように変更しておきます。
これで、[OK]ボタンをクリックすれば、書き出し完了です。
次回からは、彩色にうつります。
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