第5回 編集2 背景を動かす
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CoreRETASに慣れて来たでしょうか?
筆者も最初わけが分からず、一度開いただけですぐに閉じてしまった事があります。 見慣れない物はわからない! けれども、一度でもアニメーションを完成させたかったら、あきらめちゃだめです(笑) わからないことがあったら、マニュアルや講座を見比べて、とにかく実践してみる事です。 それでは、次は「キャラクターを配置し、背景やテクスチャを合成する」手順にうつります。 ここからどんどん難しい事をしていきます。 というか一番大変な工程です。 それでもここからが編集の楽しい所なので、頑張って行きましょう!
さて、これが編集中のステージと、
編集中のタイムシートです。
見ていて嫌になりますよね?(笑) 大丈夫、筆者も嫌になります。 ですが、一つ一つ作業をして行ったら、いつのまにかこんな事になっているのです。
このタイムシートでの完成形がこれです。 それでは、早速説明に入りましょう。
(1)タイムシートの作成と素材の登録
1.タイムシートの作成
新規タイムシートを作成します。 もうタイムシートの作成は慣れましたね? 前回のタイムシートは、カメラサイズを「960×540」という少し大きいサイズで作成していましたが、今回は、「720×480」という標準サイズで作成します。 筆者のアニメーションの作り方として、背景をパーツ別に描いて後々合成し、手前にテクスチャをかけるという手法をとっているので、レイヤー数は多めに設定しておきます。 また、台詞が長いシーンは、秒数を多めに取っておきます。 特にパーツが多いシーンは念のため余分なくらいに秒数を取っておくといいと思います。 これは、一度タイムシートを書き込んでしまうと、後で秒数を継ぎ足した際、編集するのが大変な為です。 また、レイヤー数が多いので、シートの表示サイズも[小サイズ]にしておきましょう。
2.セルバンクにセルを登録する
セルバンクには、前回通りセルを追加していきます。今回使用したのは、以下の素材です。
①人物
②背景
③光+テクスチャ+ふち
③の素材は、別の画像編集ソフトで作っておきます。 一つのレイヤーに一パーツなので、これだけで、単純に考えてもタイムシートのレイヤーが10枚は必要です。 これらのパーツを、それぞれのセルバンクに登録していきます。
背景を読み込む際には、1レイヤーにつき画像1枚ずつ登録するので[選択ファイルのみ登録]を忘れないようにチェックしておきましょう!
3.人物の読み込み
人物の読み込みは、静止画ではなく動画を読み込みます。そう、前回タイムシートから書き出した動画ファイルです。 [開く]ダイアログで前回書き出した「QuickTimeMovie」ファイルを指定すると、セルバンクは以下のようになります。
一度動画にしたものは、このようにフレームで読み込まれます。よく見ると、3フレームごとに人物のポーズが違うはずです。 タイムシートでセル番号を入力すると、入力したフレームの画像が表示されます。
(2)タイムシートを打ち込む
さて、おきまりのタイムシートです! 静止画については、もうさんざん打ち込んで来たと思うので、だいぶ慣れたかと思います。
問題は、動画。
[セルバンク]の登録数192、つまり192フレームもあるものを、いちいち手打ちで打っていくのは嫌ですよね。なので、ここでタイムシートの自動入力コマンドを使ってみましょう。
(1)まずはAセル全体を選択します。
下図の位置をダブルクリックすると、Aセルの全フレームを選択出来ます。
(2)[タイムシート]メニュー→[セルの自動配置]を選択します。
これだけです!セル番号は記入されましたか?
(3)テクスチャをかける
作例の場合、タイムシートにセル番号を全部打ち込むとこういう画面になっています。 下の絵が全然見えませんね!
これは、テクスチャなどが透過されずにそのまま配置されてしまっているからです。
でも、そもそもテクスチャってどうやってかかってるんだろう? そういう場合は、これ。レイヤー設定です。この[レイヤー設定]パレットの[合成モード]を変更します。
黒を透過したい場合は「加算」
白を透過したい場合は「乗算」
そしてコントラストを強調してテクスチャをかっこ良くかけたい場合は「オーバーレイ」「焼き込み合成」など。
レイヤー効果は色々とありますが、読み込んだテクスチャによって最適な効果は変わってきます。また、予想外の合成結果がハマることもあるので、まずは自分で一通り試してみて、気に入った効果をつけましょう!
効果によってはこういうことも・・・・・・
(4)セルのサイズを変更する
前項のレイヤー設定でテクスチャは透過されたのですが・・・、サイズがバラバラで下の絵が酷い事になっています。画像が全て原寸で表示されてしまっていますし、位置も合っていないようです。 これでは何が何だかわかりません。
1.レイヤーについて少し詳しく
修正していく前に、タイムシート上のレイヤーに関する設定を、少し説明をしましょう。 下図はタイムシートの上部です。
①親子関係
指定すると、例えば「親のタップAが動くと、連動して子供のタップBも一緒に動く」ということができます。「親の動きに連動しながら、さらに別の動きを加える」ということができるのですが、複雑なので今回は使いません。
②タップ
ステージに表示されている赤枠や青枠です。初期設定では1レイヤーに1タップが割り振られています。基本的に、移動や拡大縮小の値をこのタップ単位で操作します。 複数のレイヤーを同じタップに設定することもできます。その場合は、AレイヤーとBレイヤーが一緒に動きます。
③セルバンク
[セルバンク]ウィンドウと連携していて、そのレイヤーで使用するセルバンクを指定します。初期設定では、レイヤーごとに同名のセルバンクが割り当てられています。 この[セルバンク]の割り振りを同じにすると、いくつものレイヤーに同じ画像を表示させることができます。
④レイヤーの表示・非表示
■でレイヤー表示、□でレイヤーを非表示に出来ます。
今回は、④のレイヤーの表示・非表示と、②のタップの操作を使用して作業を進めて行きます。
2.実際の操作
(1)画面が見やすいように、不要なレイヤーを非表示にします。
(2)タイムシートで、サイズを変えたいレイヤーを選択します。
(3)[ステージ]ウィンドウで、サイズを小さくしていきます。 右から、[移動][拡大・縮小][回転]ボタンです。
これらのアイコンをクリックした状態で、ステージ上をドラッグすると、選択中のレイヤー(タップ)を移動、拡大・縮小できます。
ステージ上でドラッグする前に、中割りパレットで[自動更新]がオンになっていることを確認します。 [自動更新]がオンであれば、全フレームに移動や拡大縮小が適用されます。
[自動更新]がオフだと、選択中のフレームでのみ、レイヤーが移動・拡大縮小するため、別のフレームを選択したら調整が元通り…ということもあります。
(4)まずは、[拡大・縮小]ツールでサイズを変更します。
[拡大・縮小]ツールは左方向にドラッグすると縮小、右方向にドラッグすると拡大になります。
(5)サイズを合わせたら、[移動]に切り替え、各レイヤーをドラッグして丁度いい場所に配置しましょう。
(5)背景を移動させてみる
先ほどの調整でなんとか見られる配置になりましたね。 [ファイル]メニューから[RAMプレビュー]を行うと、一応アニメのように見えます。
ですが、「人物が歩いているのに背景が全く動いてないっておかしくない?」 という訳で、背景を動かしてみようと思います。
1.タイムシートを中割り
ステージでの操作はサイズの変更の時と同じです。 けれども今度は、タイムシートに移動の情報を書き込まなくてはいけません。
(1)タイムシートの表示を切り替え、位置情報(「T位置X」)を表示します。
※「T位置X」というのは、「タップのX軸(横軸)の位置」という意味で、セルやカメラを左右に移動させる時に入力するパラメータです。
(2)タイムシートで移動させたい範囲(フレーム)を選択します。
(3)右クリックして、メニューから[非連続キーフレーム]の設定を選択します。
(4)選択したフレームの最後を選択し、数値を打ち込みます。ここで打ちこんだ数値が移動先の位置になります。(ステージ上で移動させることも可能)
(5)タイムシート上で、もう一度同じ範囲を選択します。
(6)[中割り]パレットの[自動中割り]ボタン(黄色いアイコン)をクリックします。
(7)小刻みな数字が表示されたら成功です。
もし、徐々に動き出すなどの効果をつけたい場合は、[中割り]の種類で「加速」などを選ぶと、そのような数値に設定されます。 中割りは、[種類]の名前を頼りに何となく設定してみると、それらしい中割りが出来ます。(多分)
2.プレビューしてみる
一通り動かしてみたら、[RAMプレビュー]してみましょう。
きちんと動きましたか?
もし動きが変な所があったら、もう一度タイムシートの数値を確認してみて下さい。
(6)エフェクトをかける
次に、エフェクトをかけてみましょう。 正直筆者が一番好きな工程です。大変楽しいです。 ここでは、筆者が「これをかけといたら大丈夫!」と根拠無く思っているエフェクトを紹介します。
1.エフェクトのかけ方
エフェクトは、[エフェクト]パレットから好きなエフェクトを選んで、タイムシートにドラッグするだけです。 エフェクトをかけたいレイヤーの右隣に▼が表示された状態でマウスを離せばレイヤーにエフェクトが追加されます。
※エフェクトの種類によっては、タイムシートや[レイヤー設定]パレットで細かい設定を行う必要があります。
エフェクトを削除する時は、エフェクトレイヤーをタイムシートの外側までドラッグします。 マウスカーソルがゴミ箱の形になっていれば削除できます。
2.オススメのエフェクト
①ディフュージョン
左が、ディフュージョンなし、右がディフュージョンありです。 右の方が光が拡散していて綺麗なのがわかるでしょうか?< ただ、初期設定では、効果が強すぎるので、[レイヤー設定]パレットの[エフェクト]タブで数値を調整します。
上がデフュージョンなし、下がありです。色味や空気感の違いが分かるでしょうか? 筆者はエフェクトといえばとりあえずこれをかけとけばオッケーだと思っています。
②色パラ
一言で言うと、グラデーションツールです。 ですが、[色パラ]は画面全体ではなく、一部分にだけかけるグラデーションです。
この画像では、「人物の下側」だけにグラデーションがかかっているのが分かるでしょうか? [レイヤー設定]パレットの[位置]や[スケール]でグラデーションをかける範囲を調節できます。イメージ通りに調整するには、プレビューを見ながら調整するのが確実です。 また、通常のレイヤー同様に、グラデーションの[合成モード]を変更できます。上図の例では、[合成モード]を「加算合成」に設定しています。
③レベル補正
レベル補正は、明暗を調節したり、コントラストをあげたりするとても便利なエフェクトです。 「スペ・スペ」中盤の歩くシーンは、全部同じ絵を使っているのですが、エフェクトで明暗や色味を調整して雰囲気を変えています。
④グラデ彩色
グラデ彩色とは、色の明暗を綺麗に保ちつつ、他の色で置き換えてしまうエフェクトです。
同じ空でも、別の色に置き換えると全然雰囲気が違いますよね。 [グラデ彩色]の他にも、[カラーバランス]フィルタなどで色を調正しています。 また、これらのエフェクトはセルレイヤーでなく「CAM(カメラ)」レイヤーにも追加できます。 「CAM」レイヤーに追加されたエフェクトは、全部のレイヤーに適応されるので、全体の色調整などは「CAM」レイヤーで調整すると便利です。
(7)確認と書き出し
1.RAMプレビューしてみる
普通のプレビューではエフェクトは確認出来ないので、[RAMプレビュー]を繰り返してエフェクトをチェックします。 プレビューとはいえ、長いカットを毎回レンダリングしていると時間がかかってしまうので、タイムシート上で、プレビューしたいフレームを選択して[ファイル]メニュー→[RAMプレビュー]→[選択フレーム間を実行]すれば、必要な箇所だけプレビューします。
満足な絵づくりが出来たら、[全フレームを実行]で、プレビューしてみて下さい。
2.書き出す
プレビューに問題がなければ、[書き出し]てしまいましょう。 [書き出し]ダイアログで、ファイル形式は[QuickTimeMovie]などのムービー形式に設定し、[レンダリング設定]は、「スムージング:全てを実行する」を選択し、[エッジの二重スムージング]にもチェックを入れておきましょう。
エフェクトを追加したので、きっと前回の工程の時よりレンダリング時間が長くなっていると思います。 書き出しが終わったら、映像を確認して下さい。
次は、ついに仕上げです!
もうさんざんエフェクトかけたのに、まだかけるのかよ!とか思われそうですが、一度書き出さないとかけられないエフェクトもあるので、まだまだエフェクトは続きます(笑) 他にも、特殊撮影講座も行うので、次回もよろしくお願いします。
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