第7回 おまけ-特殊っぽい編集
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さて、ここからはおまけ、というかなんというか。
今回「スペース・スペース」内で使用した、特殊っぽいとか、筆者が無駄にこだわった部分の編集について語っていこうと思います。
(1)背景の雲
実は、意外とこだわっていた背景の雲です。
背景の空は実は三重になっていて、
①手前の雲(手描き)
②奥の雲(テクスチャ)
③空(写真加工)
で成り立っています。
ちなみにポイントは、動画を見て頂いたらわかるんですが、ふよふよしている②の雲です。 テクスチャにせよなんにせよ、常に何かが動いていると、画面が飽きないのでおすすめです。 このふよふよする雲の作り方は・・・
(1)背景を配置する
画面上に背景である空を配置します。
(2)雲を配置する 次は背景の上に雲を配置します。
※雲画像
雲を配置すると、こんな事になってしまいました。(下図参照)
これは、雲の素材が「白透過」されていたからです。 そこで、[レイヤー設定]パレットの[透過指定]で「a透過」に変更します。
これは、「現在白い色を透明にしていますよ〜」というのを、「a(透明部分)を透明に表示しますよ〜」という設定に切り替えるということです。これで、雲がきちんと正常に表示されました。
(4)ランダムに動かす
次は、雲をゆらゆらと揺らしてみましょう。 これには、[中割り]パレット内の「ランダム」機能を使用します。
①まず、タイムシートで雲のレイヤーを全選択し、右クリックして「非連続キーフレームの設定」をクリックします。
②次に、全選択のまま[中割り]パレットの「ランダム」で、緑のアイコン[自動ランダム中割り]をクリックします。
どうでしょうか? 多分、このままでは小刻みに揺れすぎるかと思います。
その場合・・・
「正の幅」「負の幅」:「基準」の位置からプラス方向(x軸の場合は右)、マイナス方向(x軸の場合は左)それぞれどの位動くか、の設定です。 「間隔」:ランダムの揺らぎの間隔をどのくらいにするかです。ここでは、間隔を20にして、揺れを緩やかにしています。 コンピューターに計算しなおさせるには、その都度[ランダム中割り実行]ボタンをクリックする必要があります。
どうです、上手く作る事が出来たでしょうか?
(2)人物のふち
上の絵の右と左を見比べて、どこが違うかお気づきになられたでしょうか? 実は人物のフチがかるくぼやけています。 CoreRETASには、絵のふちをぼかすエフェクトがあります。 これを、[aぼかし]エフェクトと言います。 数ピクセルとはいえ、人物のふちをぼかして薄くするだけで、背景の光を逆光で受けているような雰囲気が出来ます。細かいけれど、筆者が大切にしている所です。
エフェクトのかけかたは簡単。 人物のレイヤーに[aぼかし]エフェクトかけ、場面に合わせて[ぼかし]の数値を調整するだけです。
(3)花火
花火にも[aぼかし]を使用しています。 このカットでは、人物のレイヤーの上にさらに影になるレイヤーを重ねて、花火の逆光を表現しています。
右が、「aぼかし」をかけた影をつけた物、左がそうでないものです。
レイヤーの構造としては・・・
エフェクトを加えた「基本」レイヤーの上に、人物をもう一枚複製し、[aぼかし]と[影]エフェクトを加え、レイヤーの合成モード[焼き込み]にして重ねています。
このシーンは夜だけど明るいイメージで作ったので、影も派手目な紫で演出しています。 今回[影]エフェクトは、人物をシルエット通りに塗りつぶす手っ取り早い方法として使用しました。 下図の通り、人物レイヤーの描画部分が指定した色で塗りつぶされます。 [方向][距離]に数値を入れて、元の位置から少しだけずらしてやります。距離を0にしたら、そのまま影として使用出来ます。 塗りつぶしは、何かと便利なので、覚えておくと便利だと思います。
また、花火の閃光を表現したかったので、この「影」レイヤーの透明度を、雲を動かす時に使った[中割り]パレットの[ランダム]でちらつかせています。
タイムシートで見るとこんな感じです。 左から、A「弟の基本」A(1)「弟影」、H「兄の基本」H(1)「兄影」となってます。 Trの数値が並んでいる所が、不透明度を表示しています。 数字がランダムに配置されているのがわかるでしょうか?
(4)水族館
多分一番苦労したのが、この水族館のカットです。 見てもらうとわかりますが、このカットは「背景」+「人物」+「水のゆらめき」+「イルカの影」で出来ています。
これを一つ一つ説明していきましょう。
(1)背景と人物
背景と人物はいつも通りなので、[ディフュージョン]やら[色パラ]やらをがんがん追加して行きます。
(2)水のゆらめき
水の揺らめきは、[フラクタルノイズ]エフェクトを使用します。 ①まず、セルバンク上で右クリックして、[平面の登録]をクリックします。
※これは、セルバンクに指定したサイズのベタ塗りの面を登録する機能です。
1色のベタ塗りであれば、わざわざ画像を作成しなくても[平面の登録]で作成できてしまいます。
[平面の設定]ダイアログでは、サイズは画面サイズにあわせ、平面色は「黒」で作成します。
②これをタイムシートに打ち込みます。 全フレームを選択して、作成した平面のセル番号を入力します。 ③次に、[エフェクト]メニュー→[ノイズ]→[フラクタルノイズ]を追加します。 下図を参考に[レイヤー設定]パレットで、設定を変更しましょう。 とりあえず「形状:輪」と「描画:明るさ変更」を押さえておけば大丈夫です。
④RAMプレビューでフラクタルノイズが生成出来ているのを確認出来たら、タイムシートを打ち込みましょう。 フラクタルノイズのタイムシートに「中央値」という項目があるので、これを打ち込みます。
⑤打ち終わったら、RAMプレビューでフラクタルが動くか確認してください。 確認できたら、[レイヤー設定]パレットで合成モードを[加算合成]に変更しておきます。
(3)イルカの影
次は、イルカですね。水族館と言えばイルカです。
①イルカの影はStylosで描いておきます。
②ここで一旦、水族館とは別に新しいタイムシートを作成しましょう。 サイズは、「1280×720」あたりの、少し大きいサイズで作成しておきます。
③セルバンクにイルカの画像を登録したら、エフェクトの[変形]→[波]を適用します。 設定は下図の通りです。
これで、少し水中らしさがでてきました。
④次はタイムシートで[波]の[方向]の数値を変化させます。 全フレームを選択し、右クリック→[非連続キーフレームの設定]を実行。 最初のフレームは「0」のままでいいので、最後のフレームに数字を書き込み、再度全フレームを選択し[中割り]を行います。
⑤上手く中割りが出来たら、[RAMプレビュー]でチェックしてみて下さい。 これで、イルカの準備も整いました。イルカ用のタイムシートから動画を書き出します。
⑥書き出しを行ったら、動画を水族館のセルバンクに読み込み、[セル番号の自動入力]でタイムシートにセル番号を入力します。
⑦今のままではイルカが透けないので、[レイヤー設定]パレットでレイヤーの合成モードを「乗算合成」に変更します。
⑧次に、タイムシートで、イルカが画面の端から端へと横切るように動かしてやります。
表示パラメータを[T位置X]に変更し、自動中割りで移動させます。
(4)マスクをかける
RAMプレビューをかけると、ここまで出来ました。 イルカのシルエットが影のままだとハッキリしすぎていて違和感があったので、少し[フォーカス]をかけてみました。イルカと人物は距離が離れているはずなので、影をすこしぼかしてやると、自然です。 けれども、まだおかしいですね・・・。 これは、イルカのシルエットも水面も、「全面にかかっている」という事が原因です。 これでは遠近感が出ず、人物が水中にいるように見えてしまいます。 イルカの影は、画面手前からの写り込みなので、手前の人物にはかかっても、背景には届きません。水面も同様です。なので今回は、水面とイルカの影を、人物のシルエット以外に表示しない、こういう状態に持って行きたい訳です。
そこで、「マスク」という物を使ってみます。 マスクとは、簡単に言うと指定の形の中に、絵を表示させるというものです。
①マスク用の画像を作成する
まず、マスク用の画像を書き出します。今回は人物のセルを流用します。 必要なのはシルエットだけなので、エフェクトもなにもいりません。
②タイムシートに記述する
書き出したマスクを、[セルバンク]に読み込み、タイムシートにセル番号を記述します。 その場合、必ずマスクより合成する素材の方が上にくるようにレイヤーを並べて下さい。 マスクは自分より一つ上のレイヤーだけに効果があります。
それからマスクにするレイヤーに[エフェクト]→[その他]→[アルファ]をかけます。 [アルファ]は画像の「αチャンネル(透明度)」を白黒に置き換えるエフェクトです。 筆者もよくわかってないんですが、とりあえずかけておきます。 その際、レイヤー設定で「結果を反転する」にチェックを入れておきます。
③レイヤーモードを設定する。 最後に、レイヤーの合成モードを「合成マスク2」、透過指定を「a透過」に設定します。
これで、マスクが出来ているはずです、…多分。
できていなかった人は、[アルファ]の[結果を反転]のチェックを外してみるか、合成モードを[合成マスク1]にしてみたり、透過指定がきちんと[a透過]になっているか、マスク用の画像を書き出す時に、[背景透過]にチェックをいれたかなどを確認してみて下さい。
(5)クロスフェード
最後の方に、兄と弟の顔が徐々にうつり変わって「クロスフェード」するシーンがあります。 これのやり方を少しだけ解説します。といっても今までやって来たことの応用で簡単にできるのですが。
(1)まず、セルバンクに兄のアップを読み込みます。
(2)次に弟のアップを読み込みます
(3)タイムシートにセル版を入力します。 兄の方は[タイムシート]→[セルの自動配置]でいいのですが、クロスフェードする弟の方は、1秒目の13フレーム目からフェードさせて行きたいので、[セルの自動配置]を行ってしまうと、37フレーム目からしか表示されない事になってしまいます。
そのため、[セルの自動配置]でなく[セル番号の自動入力]を使ってセル番号を記述します。 タイムシートで表示させたいフレーム間を選択し、[セルの自動入力]を行います。
(4)透明度
①次に、弟のセルをフェードインさせていきたいので、タイムシートで[透明度]の数値を表示します。
②次に、移動などと同じように、[非連続キーフレームの設定]を選択し、今回は1秒目の13フレーム目に0を、2秒目の18フレーム目に100を入力し、自動中割りを行いました。
③これで、ステージで確認するとクロスフェードが出来ているはずなんですが・・・
出来ていませんね……。 これは、[レイヤー設定]が[白透過]になってしまっているからです。 本来白くなるべきところが、透過されて、兄の顔が見えてしまっています。 そこで、この透過指定を[全面不透過]にかえてやります。
これで、クロスフェードの完成です。
(6)最後に
おまけの特殊っぽい編集講座、どうでしたか? 編集はアイデアです。 あのエフェクトとこのエフェクトを組み合わせたら、これが出来るんじゃないか? という化学反応のような編集には、面白さがいっぱい詰まっていると思います。 皆さんも、自分だけの手法、自分だけのお気に入りのエフェクトを見つけてみてください!
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