提供者 : セルシス    更新日 : 2015/06/30    作家 : ふぉ~ど
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1.レイヤーの合成モードについて

合成モードとは、下にあるレイヤーとの『色の重ね方』と考えてください。
[通常]モードであれば、そのまま塗ってある色が表示され、[乗算]モードであれば、半透明のフィルムを重ねたような感じで、下レイヤーの色よりも暗くなります(ただし、彩度も高くなるので注意)。

合成モードを[乗算]にして色を塗ると、下にあるレイヤーに描いた質感表現を残したまま色を暗くできるので、これを利用して影を入れます。

※レイヤーの合成モードについて詳しくは、機能解説!トラの巻「レイヤーの合成モードの使い方」「レイヤーの合成モードの使い方・光の表現」をご覧ください。

2.クリッピングについて

クリッピングしたレイヤーは、クリッピング元のレイヤー上に描画された部分にだけ、色が表示されます。
例えば、黒い線画に『全体を赤で塗りつぶしたレイヤー』をクリッピングさせると、線画と同じ形に切り取られ、結果として赤い線画が表示されます(表示されなくなるだけなので、クリッピングを解除すると元に戻ります)。

■「赤地」レイヤーを[下のレイヤーでクリッピング]機能で、「線画」レイヤーにクリッピングした例

このクリッピング機能を利用して、影を付けたいレイヤーから、乗算レイヤーに塗った色がはみ出さないようにします。

3.陰影を入れる

(1)質感を描き込んだレイヤーの上に、新規ラスターレイヤーを作成し、レイヤー名を「陰影」にします。
このレイヤーの合成モードを初期状態の[通常]から[乗算]に変更します。

(2)[レイヤー]メニュー→[下のレイヤーでクリッピング]を選択し、[乗算]レイヤーを質感のレイヤーにクリッピングします。レイヤー名の左側に、赤い縦棒が表示されます。
基本的に、ひとつの質感レイヤーにつきひとつの[乗算]レイヤーが必要になりますが、レイヤーをひとつひとつ作成するのは手間がかかるため、[レイヤー]パレット上で[Alt]キーを押しながら陰影レイヤーをコピーしたい場所までドラッグ(※)して、各パーツのレイヤー上に複製します。
※[Alt]キーを押しながらレイヤーをドラッグ&ドロップすると、ドロップした場所にレイヤーが複製されます。

(3)オリジナル[軟らかいエアブラシ]で陰影を大まかに塗った後、[消しゴム]ツールの[軟らかめ]やオリジナル[薄い]で削って整えます。
※ここで使用するオリジナル[軟らかいエアブラシ]は、[ツールオプション]の[不透明度]を上げて濃く塗れるように変更しています。

上図では、陰影をどのように塗ったかわかりやすいように、「線画」レイヤーと「陰影」レイヤーのみ表示しています(実際は質感のレイヤーを表示させながら塗っています)。

光源になる太陽は、真上にあってやや逆光気味という設定です。太陽が上の方にあるなら一番暗くなるのは下側のはずですが、極端にした方が迫力が出るので逆光(手前)側の陰影も濃くしています。

POINT

例えば、晴れているときにその辺に生えている草の緑色を観察してみると、同じ緑色でも陽が当たっている部分はやや黄色っぽく、陰になっている部分は青みがかって見えます。
絵の中でも、明るい部分は少しだけ黄色を足した色に、暗い部分は少しだけ青を足した色にすると自然です。
そこで、陰影レイヤーには、ただの灰色ではなく、ほんの少し青みがかった灰色を塗ると、陰影の色が絵になじみやすくなります。
ただ、彩度が高い色を塗ってしまうと、かえって不自然になるので気をつけます。

また、[スポイト]ツールで[乗算]レイヤーに塗った影の色を拾いたい場合、ツールセットを[表示上の色]から[編集レイヤー上の色]に切り替えることで、[乗算]レイヤーに塗った影色そのものを拾えます。
初期設定では、選択されているツールセットが[表示上の色]になっているため、質感レイヤーと合成された影色が拾われます。

4.陰影に反射光を加える

例え話ですが、青いボールが青く見えるのは、光の中に含まれている青い波長がボールの表面から反射して目に入るので青く見えます。
つまり、青いボールは周りに青い光をいくらか振りまいているということなので、ボールを人の顔に近づけたら肌も多少青みがかるはずです。このような光を「反射光」といいます。

実際には、光源の向きや物の形、質感などによって光を反射する方向は様々ですし、反射された光がさらに反射を繰り返したりもします。その場にあるものがすべて影響し合っているので、その現象をリアルに描くのは大変です。

しかし、一種の演出として、簡略化して表現することはできます。
ここでは踊り場の水たまり(まだ描いていませんが…)に映る空の青が、コンクリートや手すりに反射しているということにして、水たまりの色(水色)で反射光を塗ります。
影の印象もやわらかくなりますし、遠景が青っぽい色なので、そこになじませて統一感を出す狙いもあります。

各[乗算]レイヤーを、塗り分けをしたときのようにまとめて選択し、[透明部分をロック]を設定してから、薄い水色を影の下側などに塗ります。

これで陰影を付け終わりました。

作者プロフィール:ふぉ~ど  (サイトURL:http://nostalgia.kokage.cc/

風景を描きたいという思いで頭がいっぱいの絵かき。岩手在住。

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