塗りつぶし(ベタ塗り・下塗り)をマスターする
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IllustStudioには、イラストの線画を塗りつぶすために、[塗りつぶし]ツールはもちろん、他にもいろいろな方法が用意されています。
「塗りつぶし」は、着色前の下準備として行うことが多いため、できるだけ手間をかけずに進めたい作業ではないでしょうか。
塗りつぶしで使える便利なツールや機能を知ることで、はみ出し、塗り残しなどのトラブルを未然に回避し、効率的に作業を進められるようになります。IllustStudioでの塗りつぶしをマスターしましょう!
[1]IllustStudioの基本的な塗りつぶし作業
IllustStudioには、イラストの線画を短時間で効率的に塗りつぶすためのツールや機能が用意されています。まず始めに、それらを活用した基本的な塗りつぶし作業を紹介します。
このような髪の毛を[塗りつぶし]ツールで塗りつぶしてみましょう。
1.塗り漏れは、[隙間を閉じる]で解決!
塗りたい領域の線と線との間に隙間がある場合、[塗りつぶし]ツールを使うと、色が塗り漏れてしまうことがあります。
※[塗りつぶし]ツールの使い方や設定について詳しくは、IllustStudio機能解説!トラの巻「塗りつぶしツールを使いこなす」を参照してください。
このような場合は、[ツールオプション]の[隙間を閉じる]にチェックを入れて「on」の状態にします。
[隙間を閉じる]は、指定したピクセル分の隙間を閉じているものとして塗りつぶせる機能です。
[隙間を閉じる]にチェックを入れ、数値を調整してから塗りつぶすと、髪以外の部分に色が塗り漏れることなく塗りつぶせました。
※それでも塗り漏れてしまう場合は、閉じる範囲を指定する数値(ピクセル数)を上げて対処します。
2.塗り残しは、[細い領域にしみこむ]で解決!
しかし、今度は線と線の間が狭い部分を「隙間」と認識してしまい、塗り残しが発生してしまいました。
このような場合は、[ツールオプション]にある[細い領域にしみこむ]を「on」にしておくと、塗り残した部分にも色が塗られるようになります。
隙間と認識された狭い領域に色がしみこみ、きれいに塗りつぶせました。
それでもまだ塗り残されている領域は、線で区切られていたり、ドットで領域が閉じられている部分なので、別のツールで対応します。
3.細かい塗り残しは、[閉領域フィル]ツールで解決!
[塗りつぶし]ツールで塗り残された細かい領域には、[閉領域フィル]ツールを使います。
[閉領域フィル]ツールは、塗り残した部分を下図の赤枠のように大雑把に囲んで範囲指定するだけで、線画の内部の閉じられた領域だけをはみ出さずに塗りつぶしてくれる便利なツールです。
※[閉領域フィル]ツールの詳しい使い方は、機能解説!トラの巻「塗りつぶしツールを使いこなす」を参照してください。
[塗りつぶし]ツールで細かい塗り残しを塗ろうとすると、塗り残した部分を一か所ずつ塗らなければなりませんが、このツールを使えば、塗り残しを一気に塗りつぶせます。
髪の毛がきれいに塗りつぶせました。
[2]アンチエイリアスのかかった線の塗りつぶし
1.アンチエイリアスとは
『アンチエイリアス』は、輪郭線をわずかにぼかし、滑らかに表示する機能です。
アンチエイリアスかかっていない線画は、拡大表示するとジャギーと呼ばれるドットの四角形がハッキリと表示されます。アンチエイリアスのかかった線画は、拡大表示すると、エッジがわずかにぼかされています。
実寸で見たときに、アンチエイリアスの「わずかなぼかし」が画像を滑らかに表示してくれます。
※アンチエイリアスは、描画ツールの[ツールオプション]パレットなどで設定できます。
あとからアンチエイリアスをかける
アンチエイリアスを「off」の状態で作画すると、完成したイラストは下図のようにジャギーが目立ってしまうことがあります。
そこで、仕上げとして最後にまとめてアンチエイリアスをかける方法を使います。
(1)[レイヤー]メニューから[表示レイヤーのコピーを結合]を選びます。
(2)これで、作業していたレイヤーが複数に分かれていても、まとめて1枚のレイヤーにコピーされます。このコピーしたレイヤーに、アンチエイリアスをかけていきます。
(3)コピーしたレイヤーをアクティブにした状態で、[フィルタ]メニュー→[ぼかし]→[スムージング]を選択します。
(4)[スムージング]を実行すると、ジャギーの目立たない画像に変換されます。
2.アンチエイリアスのかかった線の塗りつぶし
[1]の作例では、アンチエイリアスのない状態で作業しましたが、IllustStudioの初期設定ではアンチエイリアスが「on」の状態になっていますし、多くの場合は、アンチエイリアスのかかった状態で作業します。
アンチエイリアスは、線画を滑らかに表示してくれる便利な機能ですが、塗りつぶすときにコツが必要です。
アンチエイリアス処理を施した線画で[塗りつぶし]ツールを利用すると、線の周囲にあるぼやけた部分に色が塗られず、線の周囲に色の塗り残しが発生することがあります。
[塗りつぶし]ツールは、基本的にクリックした部分と同じ色の領域を塗りつぶすようになっています。
塗り残しに見える部分には、線の色を非常に薄くした色があるために、[塗りつぶし]ツールで色が塗られず、塗り残しのような状態になってしまいます。
そこで、アンチエイリアスのかかった線画でもきれいに塗りつぶせる機能を紹介します。
[領域を拡縮]+[最も濃いピクセルまで拡張]で解決!
アンチエイリアスのある線画で[塗りつぶし]ツールを使う場合は、線画で閉じられた領域を広げて塗りつぶすことによって、線の周囲の塗り残しを回避できます。
[塗りつぶし]ツールの[ツールオプション]にある[領域を拡張]にチェックを入れ、任意の値(ピクセル数)を設定します。
このように、設定した数値に合わせて、[塗りつぶし]ツールで塗られる領域が拡縮します。
しかし、領域を拡張するだけでは、上図のように、線の太さによっては色塗りの範囲が線画をはみ出してしまうことがあります。
そこで、[領域を拡縮]に加えて、すぐ下にある[最も濃いピクセルまで拡張]も「on」にします。
[領域を拡縮]と[最も濃いピクセルまで拡張]を両方ともチェックを入れた状態で塗りつぶすと、領域を広げながらも線の最も濃い部分まででストップするため、線からはみ出さずに塗られます。
これで、適切に線画を参照しながら、塗り残しやはみ出しを最小限に抑えることができます。
また、[領域を拡縮]、[最も濃いピクセルまで拡張]は、塗りつぶし作業で使われることの多い、[マジックワンド]ツール、[閉領域フィル]ツールでも設定できます。
[1]で紹介した[隙間を閉じる]、[細い領域にしみこむ]に加えて、この[領域を拡縮]、[最も濃いピクセルまで拡張]を使えば、塗り漏れ、塗り残し、はみ出しを最小限に抑えて、塗りつぶし作業の時間を大幅に短縮できます。
[3]ベクター線を参照した塗りつぶし
1.[ベクター中心線まで含める]にチェックを入れる
ベクターレイヤーで描かれた線には、必ず「ベクターの中心線」があります。ベクター線は、この中心線に線の太さが設定されています。
[塗りつぶし]ツールなどの[ツールオプション]にある[ベクター中心線まで含める]の項目は、このベクターの中心線を参照して、作業を行う機能です。
ベクターレイヤーに描かれた線を参照してラスターレイヤー上で塗りつぶしを行うと、ベクターの中心線まで塗りつぶされるので、アンチエイリアスに影響されずに塗りつぶせます。
ただし、ベクター線は、「見た目」がつながっていても、ベクターの中心線がつながっていないことがあります。
このような場合、[ベクター中心線まで含める]を「on」にして塗りつぶしても、線のつながっていない部分から色が漏れてしまいます。
2.[ベクターの中心線まで含める]+[隙間を閉じる]で解決!
塗り漏れを防ぐためには、ラスターレイヤーで描いた線を塗りつぶすときと同様に、[隙間を閉じる]機能を活用します。
[隙間を閉じる]を設定してから塗りつぶすと、つながっているように見えてつながっていないベクター線の塗り漏れを防げます。
ベクターレイヤーで描いた線画を参照して塗りつぶすときは、[ベクター中心線まで含める]と[隙間を閉じる]を、同時に設定しておくとよいでしょう。
※ベクターレイヤーについて詳しくは、IllustStudio機能解説!トラの巻「ベクターレイヤーを使いこなす」を参照してください。
ベクターレイヤーでの表示設定は、[表示]メニューから[ベクターのアンチエイリアス表示]や[ベクター中心線の表示]を選択して設定します。作業しやすい設定にしておきましょう。
[4][エアブラシ]ツールで塗りつぶし
線画を塗りつぶすには、[塗りつぶし]ツール以外にも描画ツールのストロークで「描くように塗る」という方法がありますが、ここでは描画ツールの中でも[エアブラシ]ツールを使った塗りつぶし方法を紹介します。
[エアブラシ]ツールには、[ペン]ツールや[水彩]ツールと同じように塗る方法以外に、[参照レイヤーの線をはみ出さない]という面白い機能があります。
1.[参照レイヤー]を活用した塗りつぶし
参照レイヤーに設定していない線画レイヤーに[エアブラシ]ツールで描画すると、線に関係なくストロークがそのまま描画されます。
ここで、[レイヤー]メニュー→[参照レイヤーに設定]で、線画が描かれているレイヤーを[参照レイヤー]に設定します。
[レイヤー]パレットで、線画レイヤーが参照レイヤーに設定されていることを確認しておきましょう。
参照レイヤーに設定されると、レイヤーアイコンが「S」に変化します。
[エアブラシ]ツールの[ツールオプション]で、[参照レイヤーの線からはみ出さない]を「on」にします(初期状態で「on」に設定されています)。
この状態で、もう一度先ほどと同じようにストロークしてみます。
線画を参照レイヤーに設定し、[参照レイヤーの線からはみ出さない]が「on」の状態でストロークすると、ブラシの中心点が参照レイヤーの線を越えない限り、線からはみ出さずに描画されます。
細くすぼまるような細かい領域も、大きなブラシサイズのまま塗りつぶせるため、作業時間を短縮できます。
また、[エアブラシ]ツールの[ツールオプション]には、[塗りつぶし]ツールと同じ[色の許容誤差]・[領域を拡縮]・[最も濃いピクセルまで拡張]の設定項目があるため、[塗りつぶし]ツールと描画ツールのメリットを両方活用できます。
2.[エアブラシ]ツールの活用例
下図のように、[塗りつぶし]ツールが使いにくい線画を塗りつぶすときは、[エアブラシ]ツールを使ってみましょう。
(1)まず、[水彩]ツールなどで線画からはみ出すように色を塗ります。
(2)はみ出した部分を、[透明]に設定した[エアブラシ]ツールで描くように消します。
線画レイヤーを[参照レイヤー]に設定し、[エアブラシ]ツールの[ツールオプション]パレットで[参照レイヤーの線からはみ出さない]を「on」にしてから、はみ出した部分を消します。
[参照レイヤーの線からはみ出さない]を「on」にしているため、線からはみ出した部分だけを簡単に消せます。
(3)線の外側にはみ出している部分をすべて消します。
(4)残った部分は、エアブラシツールの[参照レイヤーの線からはみ出さない]のオプションを「off」にするか、または[消しゴム]ツールなどを使い、透明色で形を整えながら消します。
このように、[塗りつぶし]ツールだけでなく、他のツールや機能を線画の状態に合わせて使いこなすと、効率的に作業できます。
いろいろな方法を試してみて、塗りつぶし作業を快適に進められるようになりましょう!
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