[5]ハンドガンのモデリング④

提供者 : セルシス    更新日 : 2015/06/30   
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8. ボディのモデリング③

残りのパーツであるグリップとマガジンを作成し、ハンドガンを完成させます。

・グリップのモデリング

(1)新規オブジェクトを作成し、下絵を参考にラインを作成したら面を張り、厚みを付けます。

 

ここから成形の為に少々小細工を行います。 グリップは、外側から内側に向けて緩やかに盛り上がる曲面構造になっていますが、ラインが斜めの状態ではこの成形を行うのは難しいので、グリップのラインが側面図視点で見てなるべく垂直になるように、オブジェクト全体を選択してから、[コマンド]パネル→[ローカル]の[回転]を使用して回転させて下さい。[中心基点]をクリックすると、回転の中心がオブジェクトの中心位置に合わさります。なお、[形状変形]のチェックはONにしておきましょう。

 

オブジェクトの回転は、[ローカル]ではなく[回転 C ]での回転でも良いのですが、[ローカル]で回転させておくと、元の角度に戻すときに楽になります。

(2)垂直になるように回転させたグリップに対して、全て選択状態のまま[コマンド]パネル→[格子]を選択します。 [格子]は、選択頂点を格子状の箱の変形に合わせて変形させるデフォーマー(形状を手軽に変化させるツールの呼称)です。扱いが難しいかもしれませんが、覚えておくと難しい形状も簡単に作れるようになります。[格子]を選択したら[詳細設定]を開き、[等比]のチェックを外して、Z方向の分割数のみを「6」として[OK]を選択して下さい。これで、格子がZ方向(奥行き方向)に6等分されます。

 

(3)次に、オブジェクト全てを選択して[格子]の[選択フィット]を実行し、頂点に格子をフィットさせます。その後、[格子]の[変形]を選択し、上面図視点で格子の頂点を下図のように緩やかな曲線を描くように変形させて下さい。格子の変形に合わせてポリゴンが変形すればOKです。

 

(4)グリップの曲面を格子変形で成形したら、グリップを元の角度に戻します。 [ローカル]の[詳細設定]を開き、[ローカル座標]のピッチ(Y軸の角度)に「0」を入力して[適用]します。これで、グリップが元の角度に戻ります。

 

・ネジ穴のモデリング

続いて、グリップのネジ穴を作成します。

(1)新規オブジェクトを作成し、[基本図形 P ]から円柱をU方向「24」、V方向「1」の分割数で作成して、下絵を参照しながらネジ穴部分に配置して下さい。

 

(2)ブーリアンを使って穴を開けます。 [オブジェクト]パネルで、グリップのオブジェクトを上、円柱オブジェクトを下に配置した状態で、[オブジェクト]メニュー→[ブーリアン]→[!(削除)]を選択します。

 

ダイアログで[OK]を選択すると、ブーリアン結果のオブジェクトが、新たに作成されます。この新しく作成されたオブジェクトの面の流れを、[ナイフ K ]、[ワイヤー W ]、[移動 V ]を使用して調整して下さい。

 

(3)ブーリアンで出来た穴を利用してネジ穴を作成します。 ネジ穴周りの辺を選択して、[選択部処理]メニュー→[Edge Extrude]を使用して、辺を押し出します。その後、辺を選択したままで[選択部処理]メニュー→[穴を閉じる]を使用し、ネジ穴の底面を作成します。

 

(4)最後に、マイナスネジを作成してネジ穴に配置します。 マイナスネジの作成法は、エレキギターモデリング講座で説明していますので、わからない時はもう一度読んでみて下さい。 完成したオブジェクトはX軸にミラーリングを設定し、「グリップ」とリネームして、編集不可にしておきます。

 

・マガジンのモデリング

(1)新規オブジェクトを作成し、まずはラインを作成します。 下絵からは少々判断のつきにくい箇所ですので、グリップやマガジンの穴のラインを参考にしたり、資料を見たりして作成して下さい。

 

(2)作成したライン間に面を張った後で、グリップと同じように[ローカル]でオブジェクト全体を、側面図視点で水平になるように回転させます。

 

手作業では正確な水平にはできないと思いますので、頂点を全選択後、[選択部処理]メニュー→[頂点の位置を揃える]で整頓します。 その後、[押出 E ]してパーツに厚みをつけて下さい。水平に寝かせてから面を押し出すことで、凸凹のない綺麗な面が得られます。

 

(3)さらに、下図の位置の面を[押出 E ]して、弾丸を詰める箇所を成形します。 ボディに隠れて見えない箇所なので、ざっくりとした形状で作成します。

 

(4)ここまで成形が進んだら、[ローカル]の[詳細設定]でピッチを「0」にして、オブジェクトを元の角度に戻します。

 

その後は、下絵を参照しながらマガジンの上部を少し伸ばし、頂点の成形と整頓を行います。 余裕があれば、マガジンの上部の構造を作りこんだり、ボディのマガジン用の穴ときれいに接するように頂点を調整して下さい。

 

満足の行く形状になったら、オブジェクトのミラーリングをX軸に設定します。「マガジン」とリネームして、編集不可にしておきます。

 

・全体の微調整

これで、全てのパーツのモデリングが完了しました。 半透明の材質を不透明に変更して、モデル全体を改めて確認してみて下さい。トリガーやマガジンリリースの周辺など、綺麗にポリゴンが描画されてないように見える箇所があると思います。

 

これは、モデルのスムージング角度設定に原因があり、それぞれのパーツの[オブジェクト設定]でスムージング角度の数値を小さくすれば解決します。 しかし、スムージング角度を小さくすると、滑らかな面に見せたい箇所も角張って見えるようになってしまうので、あまり良い方法とは言えません。 そこで、次のような処理を施します。 下の画像のように、[選択 S ]の[ベルト選択]を使用して、連続する面を選択します。 これを[切り取り]→[ペースト]してオブジェクトを分離し、その後、元のオブジェクトレイヤーに結合させます。

 

これは何をしているかというと、隣り合う辺、面の連続性を断つことで、スムージングが掛からないようにしているのです。 どのような効果が出ているかは、下の画像を見て頂ければ分かると思います。

 

この微調整を、角を立たせたい面に対して全て行うと、下の画像のようになります。 ささやかな調整ではありますが、仕上がりがかなり違ってくるので、ぜひ覚えておいて下さい。

 

なお、編集後のオブジェクトには、[移動 V ]と右クリックマージを使用しての頂点結合や、[オブジェクト]メニュー→[近接する頂点をくっつける]を使用するなどの、近接した頂点の結合をしてはいけません。辺や面の連続性が復活し、せっかくの処理が無意味になってしまいます。

・完成

微調整が終わったら、全てのミラーリングをフリーズします。 [オブジェクト]メニュー→[曲面・ミラーのフリーズ]を実行するときに、[Shift]キーを押しながら実行して下さい。 その後、材質の設定を下図のように変更し、材質名を「ハンドガン」として完成とします。

 

お疲れ様でした!

 

・最後に

今回はハンドガンのモデリングでしたが、少し難しかったのではないでしょうか? 下絵があるにも関わらず、モデリング時にあまり役に立たないという、今までには無かったケースが出てきた為だと思います。 これは、複雑なモデリングになってくると当たり前で、下絵はほぼサイズや位置の参考程度のものになってきます。 資料を見ながら成形したり、現物が手元にある場合はそれを参照しながらのモデリングという、造形力、モデリング力みたいなものが問われるようになって来ます。 このモデリング力ですが、一朝一夕で身に付くものではないと思います。 モデリングをするための基礎は、ここまで講座を進めてきた方はきっと身についていると思うので、色んなものを作成してモデリング力を身に付けて下さい。 これで、ハンドガンのモデリング講座を終わります。

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